略歴 ▶ 1956年1月、京都市生まれ。市立日吉ケ丘高等学校卒。神戸大学中退。本家は大阪交野の造り酒屋。元東京土建本部書記長・全建総連中央執行委員。現在参院議員5期目。他党も認める経済論戦の第一人者。歴代首相、財務相を相手にした論戦には定評がある。家族は妻と二男
役職 ▶ 党参議院国会対策委員会副委員長。予算委員、国土交通委員、消費者問題に関する特別委員会委員。党建設国保対策委員会事務局長。
著書 ▶ 『属国ニッポン・経済版』『やさしく強い経済学』『カジノミクス』他(いずれも新日本出版社)
座右の銘 ▶ 「意気に感じる心」
趣味 ▶ 絵本の収集。インスタグラムで紹介している。
エッセイスト ▶ フェイスブックなどの投稿は温かい人柄がにじみ出て大人気。
Q. 大門さんは京都の少年時代、相当の問題児だったと聞きましたが、本当ですか。
大門みきし 中学生のはじめの頃は学校も行かず、毎日、京都の新京極(繁華街)あたりをぶらついて悪さをしていました。担任の先生も見放すなかで、「ワシにまかせてくれ」と買って出てくれたのが、一生の恩師になった植山忠次郎先生でした。口はやかましいが心のとても温かい先生で、毎日、私の家へ来て「うどん食いにいこか」と連れ出し、きつねうどんを食べさせながら、コンコンと説教しました。私も先生の熱心さにコン負けして、何とか立ち直り、高校へも進学できました。植山先生はいつも「男はなあ、意気に感じる心を忘れたらあかんで」といっていました。その時は言葉の意味はわかりませんでしたが、それ以来、私の座右の銘は「意気に感じる心」になりました。
Q. 大学を中退し、東京で演劇をやっていたというのは本当ですか。
大門みきし 高校生のころから小説家か劇作家になりたかった。大学に入学したものの、ほとんど授業にも出ず、学生演劇に没頭し、21歳のとき、劇作家をめざして大学を中退し上京しました。何年か劇団を転々としましたが、時代が私の才能を理解できなかったんでしょう。劇作家になるのは潔くあきらめました。
Q. なんか。あぶない人ですね。そんな大門さんが、なぜ日本共産党のようなまじめな政党に入ったんですか?
大門みきし うちは両親が離婚し、母が4人の男の子を女手一つで育て上げました。母が昼も夜も苦労して働く姿をみて、もっと社会が助けてほしい。幼心にも冷たい社会というものを感じていたんだと思います。
23歳のとき、たまたまアルバイトをしていた生活協同組合で食堂のおばちゃんから「しんぶん赤旗」をすすめられました。政治に無関心の青年でしたが、モノを読むのは好きだったので、毎日読んでいるうち、「世の中こうなっていたのか」と目からウロコが落ちる思いでした。3ヵ月ほどたった頃、どうしても共産党に入りたくなり、中央委員会に電話して地区委員会の住所を聞き訪問して入党しました。
Q. ノンポリの演劇青年をいっぺんに変えてしまった「しんぶん赤旗」って、やっぱりすごいですね。
大門みきし 真実を知ることは人生にとって最も大事なことです。孔子も「朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」といっています。まだ死ねませんが。
Q. 大門さんの国会質疑は与党議員や歴代の大臣も評価していますね。思い出に残る論戦はどういうものがありますか?
大門みきし やはり弱肉強食の新自由主義を日本で実行にうつした竹中平蔵さんとの論戦は忘れられませんね。当時、竹中さんは経済政策の担当大臣として、企業が儲かればやがてその利益が国民に回る(「ダムの水があふれるように=ダム論」)と主張していました。
2001年11月の参院予算委員会で、私は非正規雇用を増やし低賃金構造を固定化し、回る回路を閉めておきながらデタラメを言うなと厳しく追及しました。「あなたは経済学者ですよね。理論的に説明してください」というと、かれは「先生は国会議員ですよね。国全体の経済がどうなるかトータルで示す必要があるでしょう」と言い返すというヒートアップを繰り広げ、その論戦は長いこと参議院の語り草になりました。ただ、竹中さんと嫌でも論戦しなければならない立場になって、経済書を片っ端から読むなど、人生で一番勉強しました。そういう意味で今の私があるのは竹中さんのおかげです。
Q. 麻生さんは暴言、失言の確信犯でとんでもない人でしたが、大門さんにだけは真摯な姿勢で、しかもよくいい答弁をしていましたね。麻生さんに好かれていたんですか。
大門みきし むこうの片思いです。経済政策の根本では大対決してきましたが、確かに個々の問題では、私の意見を取り入れてくれたこともあります。
16年5月の参院決算委員会で私は、「タックスヘイブン」を使った企業の課税逃れの仕組みを解説し、国税庁の対応を迫りました。それにたいし麻生さんは、「難しい話を簡単にしゃべるというのはなかなか頭がいる。大門先生って頭がいい人だと感心しながら聞いていました」と答え、そのあと国税当局にタックスヘイブン問題を厳しく追及するよう指示しました。また中小企業問題では私の提案をよく聞いてくれました。
Q. 国会中継を見ていても、大門さんが出てくると議場の雰囲気がやわらぐように感じます。「党を憎んで人を憎まず」とフェイスブックでも書かれたことがありますね。そのことと関係するのでしょうか。
大門みきし 自民党議員などの質問を聞いていると、私たちと立場がちがうと思うときがたびたびあります。しかし私の勝手な解釈かもしれないけれど、その議員も、それまでの人生の経過と事情があってそういう世界観になったのだろう、自民党に入ったんだろうと。また有権者に選ばれて国会に来ている。自分の考えと違うからといって、相手を罵倒したり憎悪してはならないと思います。そうはいっても、人々を苦しめる政治に憎悪を抱くのは無理もない。ならば、せめて、党を憎んでも、人は憎まないようにしたい、そう思うだけです。