国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2013年3月26日 財政金融委員会 アベノミクスによるバブルと生活物価高騰の危険を指摘。2013年度税改正による雇用・賃金拡大策の問題点を批判。金融所得一体化促進の税改正を批判。
<赤旗記事>
論戦ハイライト
賃金上がらず物価だけ上昇
アベノミクス 格差拡大も
参院委 大門議員追及


 「株主は大もうけ、庶民は苦しくなるばかりだ」―。日本共産党の大門実紀史議員は26日の参院財政金融委員会で、アベノミクスが経済の格差をますます広げかねないとただしました。

大門氏 実体経済改善せねばバブルに
財務相 まったくその通り


写真
質問する大門実紀史
議員=26日、参院
財政金融委
 大門氏は、デフレがパソコンや家電などわずか19品目によって引き起こされている一方、アベノミクスによる急激な円安などで灯油、穀物などが急上昇しているとして、「賃金は上がらないまま生活物価だけが上昇する最悪の事態にもなりかねない」と追及しました。
 大門 実体経済がよくならなければ、バブルになりかねない。
 麻生太郎財務相 まったくその通り。確実に実物経済を上げるために、税制でも減税等をやっている。
 大門氏は、雇用者数を増やした企業への減税実績が当初見込み139億円の15%(21億円)しかなく、賃上げ企業への減税見通し(1050億円)も全企業の2割で10%の賃上げ(総額3兆5000億円)を想定するなど「楽観的な推計だ」と指摘しました。
 大門 賃上げのために、政府が関与しやすいのは最低賃金の引き上げだ。内閣主導で省庁の枠を超えて賃上げ策を研究してほしい。
 財務相 まとめて政府として一体としてやれという指摘は正しい。
 大門氏は、賃上げ策が乏しい一方で、株式投資に優遇税制を設けるやり方は逆立ちしていると指摘。株式配当・譲渡益を非課税とする少額投資非課税制度(日本版ISA)についてただしました。
 大門 個人貯金や高齢者の預金を株式などのリスクマネーに誘導するものだ。
 財務相 あまりにも預金に偏りすぎている。
 大門氏は、超低金利政策で失われた家計の利子所得がこの20年間で320兆円にのぼることをあげ、「預貯金のわずかな利子に20%の税率をかけて、投資・投機をやる場合は非課税というのはおかしい」と指摘。株式の譲渡損を利益と相殺できる範囲を拡大するのも「諸外国と比べかなりの優遇策になる」と批判したのに対し、田中一穂主税局長は適用実態の調査を約束しました。

≪議事録≫
○大門実紀史君 大門でございます。お疲れさまです。
 午前中、エール大学の浜田先生と麻生大臣とは考え方が大分違うという指摘がありましたけれども、違って当然だと思いますし、私は、余り学者先生の話を聞くのも程々にしておいた方がいいと。本当にこの十年来、何かそういう、誰かが言ったことばかりのめり込んで、かなり政治を混乱させてきたんじゃないかと思います。やはり国会議員は、もちろん学者、研究者の意見を参考にしながらですけれども、生活感覚とか現場感覚で国会議員独自の、自分の頭でちゃんと判断すべきだというふうに思います。
 その点で、まず物価の話をしたいと思うんですけれども、現場で主婦の方と話していると、デフレ、デフレと言われても、そんな物価が安くなった気が全然しないのよというのをずうっと聞いておりまして、この前の予算委員会でちょっと資料を出して取り上げさせてもらいましたけれども、日本銀行に協力を得て、じゃ、今物価全体は確かに下がっているけれども、何が下がって何が下がっていないんだという資料を予算委員会のときに少し御紹介いたしました。
 結論から申し上げますと、パソコンとか電気製品とかテレビとか、こういうものががばっと下がって、生活物価はむしろこの間輸入物価が上がっておりますので上がってきていると。ですから、普通の方は毎月テレビ買い換えるわけではありませんから、そんなに物価が下がったという気がしないのは当たり前のことだったわけですね。ここでアベノミクスで急激な円安になっておりますので、輸入の物価が上がってきて、更に小麦なんか今度また上がりますけれども、生活物価が上がってきているということでございます。
 政府は二%の物価上昇目標を掲げておられますけれども、二%上昇するということは、この生活物価がどれぐらい上昇することになるんだろうと、今のCPIの構成でいきますとですね。これはやっぱりよく見ておく必要があると思います。
 この二十年ぐらい、二十年たってない、十何年で、物価が二%を超えたのは二回だけでございまして、九七年の消費税増税のときと、あとは二〇〇八年の七月、八月だけですね。消費税のときはちょっとおいておいて、二〇〇八年の七月、八月のときに二・四%上がっているんですけれども、このときは大変話題になりましたけれども、麻生大臣、なぜあのとき上がったか御存じですかね、覚えていらっしゃいますか。
○国務大臣(麻生太郎君) あのときはリーマン・ブラザーズが二〇〇八年のちょっと前に倒産というか、倒れておりますので、それで一挙に影響が、あおられた部分が大きかったかな、ちょっと正確な記憶じゃございませんけれども、そんな感じがいたします。
○大門実紀史君 リーマン・ショックの前でございますけれども、要するに、投機マネーが世界中のマネーゲームで穀物市場とか原油市場に、暴落の前ですけれども、大量に入って二〇〇八年に上がったわけです。
 ちなみに、若干ちょっとせっかくですから御紹介しますと、あのとき物価全体は二・四%ですけれども、食料品全体は三・五%で、エネルギー関係が一七・四%。食料も、これ全体ですので、例えば食パンは二割上がっているんですね、前年比ですね。小麦粉も一九%で、灯油が五四%上がって、ガソリンが二六%上がっていると。それで全体で二・四やっと上がったということなんですね。
 今、どうしても日本のいろいろな構成からいきますと、物価というのはそういう構成をしているわけですね。これで二年後に二%上げるとなると、結果的に言えば、相当生活物価が上がることにならざるを得ないというか、その部分上がらないと上がらないという、現実的に言えばそういうことになるわけでございます。これは、そういうことをよく認識されて、あさって黒田さん来られるというんで聞こうと思っていますけれど、非常に怖いことでありまして、庶民感覚としては大変なことなわけですね。
 若干言いましたが、あしたと日銀のときに議論はしたいと思いますけれど、今このアベノミクスで円安、株高になっておりますけれど、まだアナウンスメントですよね。そんなに何か動いたわけじゃありませんよね。みんな、期待値といいますか、特に海外のヘッジファンドが先に買って、それに投資家がくっついていって、円安になって株が上がっているという形ですよね。これはいずれ、そういう海外のヘッジファンドは大量なマネーを動かしておりますけれど、いずれ利ざやを稼ぐために逆のことをやりますよね、必ずですね。そのときに、一般投資家が付いていったのが、売り抜け遅れて大損をするというようなこと。いずれにしても、この反動が来るのは間違いないわけですね。実体経済が良くならないと、このままでいくと要するにバブルに入りかねないと。長期化すれば長期化するほどバブルが膨らむという関係になりますので、怖いことになるわけですね。
 ですから、言ってしまえば、一部の株主が大もうけをして更に豊かになるけれど、庶民の方はひょっとしたら賃金も上がらない中で生活物価だけ上がるという、経済格差が広がるだけという結果になりかねない、そういう危険性を、まだ今のところちょっと見えませんけれど、アベノミクスははらんでいるということは認識しておくべきだと思いますが、麻生さんのお考え、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 御指摘、全くそのとおりでして、これは期待値で上がっておりますので、特殊用語かもしれませんけど、期待値だけでヘッジファンド等々が日本の株等々にかなりな買いが入っておりますので、上がっております部分のかなりな部分は短期で買って、しかも外資が多いというのが実態という点に関しては、私も全くそうだと思っております。
 したがいまして、この三本目の矢が一番大切なところであって、そこがきちっとした経済成長をして実物経済、実体経済が上がってこないと大門先生言われたことになりかねぬというのは確かなところであります。
 加えて、先ほど言われましたように、デフレ不況といってもこれは通じない言葉で、霞が関とか永田町周辺とか、一部の人たちは通じるのかもしれませんけど、一般的には不況ですよ、僕はそう思っています。だから、不況対策というのが一番なんであって、デフレ不況とかいうところまできちっと分析している人はいないんですけど、ただ、我々としては、今までの不況と違って、インフレ不況とは全然違う不況だということをつかまえてやるということが、残念ながらデフレ不況というのをやったことがないものですから、過去六十八年間、そういった意味では、その対応策を間違えてきたというのは、これは全部、全員が全員、世界中でデフレ不況やったとかデフレーションによる不況というのをやったことがある人は戦後おりません、戦後って六十七年間おりませんものですから、その点なんで、我々としては、対策が遅れた、若しくはやり間違えたという点は後世歴史家が多分非難するところだと思っております。
 したがいまして、我々としてはもう今回はという形で三本の矢をやらせていただいておりますけど、これを現実問題として、成功する、しないは、一番、二番より三本目が一番大事でございますので、その点は、言われましたように、そこのところが確実に実物経済が上がってくるという形にしないと、変な形でまた、またぞろ余った金は株と土地だけに動いてみたりしかねないんで、実物経済をいかにするかというので、税制としても今、国内でということを促進していただくために減税等々をやらせていただいているというのが背景でございます。
○大門実紀史君 本当、おっしゃるとおりだと思います。
 その成長戦略も、実はいわゆる小泉、竹中さんがやったときに、二〇〇五年から二〇〇七年ぐらいまでですかね、成長率としては伸びて、一部の大企業の社員のボーナスも上げる、給料も上げるという事態はあのときもあったんですよね。ところが、総賃金は上がらなかったわけですね、報酬は下がったわけですね。結局、不況が回復できなかった後、内需は良くなりませんので、だから今回の重要なことはやっぱりちゃんと本当に賃金まで波及させるということで、今やもう自民党も共産党も一緒になって賃金上げろと言う珍しい時代になって、今までないことですよね。それは、やっぱりそこは前進だと思うんです、前に比べたら。前はそういう答弁なかったですからね。
 そこで、今日は法案のあれなんで、この雇用促進税制が、私はこういう税制の趣旨、意図は何も否定いたしませんけど、本当に役に立つ政策を出してほしいという意味でちょっと取り上げたいんですけれど、まずこの雇用促進税制ですね。二〇一一年度分の実績がもう出てきておりますけれど、どういう結果になったのか、簡潔にちょっと説明してください。
○政府参考人(田中一穂君) 雇用促進税制につきましては、平成二十三年度におきまして約二十一億円の税額控除の適用があったというふうに把握をしております。
○大門実紀史君 見込みは百三十九億円だったんですよね。それでよろしいですね。けち付けたいわけじゃないんです。百三十九億円見込んでおいて二十一億円というのは、僅か一五%ですかね。これは、なぜこの見込みよりも大幅に実績が下回る結果になったのか、把握されておりますか。
○国務大臣(麻生太郎君) この平成二十三年度の税制改正のときにおいて、これは厚生労働省に押し付けるわけじゃありませんけど、厚生労働省によります平成二十一年度の雇用動向調査の特別集計というのがございまして、それに基づいて措置の適用対象となる増加雇用者数を財務省としては見込んだということでございますけれども、これが過大であったということは今になってみればはっきりしてきたんだと、あのときの推計を数字を調べてみればそういうことになるんだと存じます。
 他方、適用額は確かに見込み件数を大幅に下回ったことは確かですが、適用を受けた企業の数は一千三百十三企業に上っておりますので、そういった意味におきましては一定の効果はあったんだと考えております。
 また、今回の改正において、雇用拡大の一層の刺激を与えるというためにおいて、緊急経済対策の一環として、税額控除額を増加雇用者一人当たり二十万円から四十万円ということに引き上げることにさせていただいております。
 また、別途創設いたします所得拡大促進税制と併せて、これは雇用の一層の確保と個人所得の拡大を図って、先ほどおっしゃっておられましたように、消費需要の回復というものにつなげていかないと経済成長にはつながっていかぬというように考えております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
 この制度をどうのこうのというよりも、よくよく分析しなきゃいけないと思っているんです。厚生労働省の何とか調整助成金とかいろんな制度がこの雇用促進とかであるんですけれど、本当に現場の感覚からいって、こういうものが、使ってもらって促進してもらいたいんですけれど、なぜ今まで、どうしても大きな政策にならないというか、ヒットしないかということなんですけれど、私は、まずやっぱりまだまだ知られていないというのはもちろんあるんですよ。ただ、知られても、この制度があるから雇用を増やそうと、中小企業のおやじさんが本当にそういう気になるのかと。雇用、人を増やすというのは非常にシビアな経営判断でございまして、この制度あるから、じゃやろうというふうになるのかということは、よくよく分析して考えておかないと、かえって国のお金の無駄遣いになりかねないんですね。
 具体的に言いますと、今どうなっているかというと、たまたまハローワークに人が欲しいと求人に申込みに来た中小企業なり企業の社長さんなり人事担当者が、ハローワークの人に、こういう制度がありますよ、計画出したらどうですかと勧められて、ああそうなんですか、じゃ出しておきましょうといって計画を出して、実際やってみて、達成したところが何割かですね。さらに、達成しても、赤字になったら税額控除ですから受けられないと。こうなって、結局あの二十一億というか、なっているわけですよね。
 つまり、これは、何かこの制度があるからやろうというよりも、頑張って人を増やそうと思ってくれた人たちの、そういう企業に対する、何といいますか、事後的な奨励金といいますか激励金みたいな、これが悪いという意味じゃないですよ、それはそれでそういう効果はあると思うんですけど、そこに収まっているというか、そういう収まりがちな性格を持った制度ではないかなと。ずっと、この雇用調整何とか金もこういう減税措置も、見ていて思うのは、そういうところなんですね。やっぱり、もうちょっと経営者が本当に雇用を増やそうとするには、先ほど広野さんからありましたけれども、もっとマクロ的なものがやっぱり必要なのかなというふうに思っております。
 もう話が出ましたので、次の所得拡大促進税制も似たようなところがありますのでちょっと聞きたいんですけれど、これは減税効果一千五十億円と見込んでいるんですかね。この一千五十億円の根拠は一体どういうことなんでしょうか。
○政府参考人(田中一穂君) 今回の税制は、今先生御指摘のように、少しマクロ的な観点から金額だけに着目した制度ですので、そういう前提での推計を行っております。
 基本的には、まず、従業員の給与の支払見込額の、これは日本全体の従業員の給与の支払見込額を前提にいたしまして、これ百六十兆円ぐらいあるんですけれども、今回この制度の適用要件というのがございます。例えば、五%以上伸ばすとか、あるいは一人当たりの給料が落ちないとか、幾つかの要件がありますが、これに該当するものがどのくらいあるだろうかという調査を、有価証券報告書の調査から抽出しまして、その中から取ってきまして、そこで大体分母幾らぐらいに対してどのくらいの企業がこの要件を満たすだろうかという計算をしまして、これを使って絞り込みを行っております。
 それから、その中でさらに、税額控除の割合と、税額控除をするものですから税額控除の割合がそこに掛かるわけですけれども、その場合に、法人が赤字法人ですと、今お話ございましたように、効果がございません。それから、税額控除には限度枠があって、この制度の場合は法人税額の一〇%、中小企業は二〇%という限度枠を設けています。
 そういう意味で、赤字法人だったり限度枠にぶつかったりするような割合というものもこのサンプルの中から引っ張り出しまして全体の調査を行って計算を行っているところでございます。
○大門実紀史君 田中さんね、ちょっといかにも何か科学的にやっていらっしゃるように言われたけれど、そんなものじゃないでしょう、大ざっぱな話でしょう、これ。
 そもそも上場企業二千五百社のうち、人件費を一〇%上げた企業が二割ちょっとだと。それが基にあって、それで企業全体が今おっしゃったように百六十兆円だから、掛け合わせたら三・五兆と。あとはもうその制度をくぐり抜けたらということで、一千五十億ほどになるということなんですよね。
 言いたいことは、この頭の話なんですけれど、上場企業二千五百社が一〇%上げた企業、確かにありましたですね。これが二割ぐらいあったというのは事実ですよね。ところが、今度は、中小企業を含めて全部の企業の二割が一〇%上げると、こういう前提を置くのは余りにも楽天的過ぎるんじゃないかと思いますけれど、どうなんですか。
○政府参考人(田中一穂君) 本当は、先生おっしゃるように、中小企業のデータまで全部私どもが入手できていれば、それを使って計算するのが一番いいと思うんですが、御案内のように、上場していない企業は一定の公開しかしていないものですから、それが使えないということで、上場企業のデータを使っていると。この問題点といいますか、御指摘はそのとおりだと思います。
 ただ、そこの中から取った企業のうち、先ほど言いましたように、本当に五%以上給料を伸ばして、それから前年よりも支給総額が下回っていないとか、あるいは一人一人の給料が下回っていないとかいう、この制度の要件に合致するやつを引っ張り出してきて、その引っ張り出した企業がどのくらい伸ばしているかというのを計算しておりますので、与えられたデータの中では最大限詳しく計算をさせていただいているというふうに思っております。
○大門実紀史君 恐らく、そんな一千億ということにならない。また来年になれば議論したいと思いますけれど、何もけちを付けているわけではなくて、やっぱりきちっと現場のニーズに合った制度を考え抜いてほしいなということに尽きるんです。
 これもやっぱり雇用促進税制、促進税制と一緒のように、雇用を増やすのも賃金を上げるのも、中小企業のおやじさんにとっては、経営者にとってはやっぱり相当のシビアな判断なんですよね。それを、この制度があるから進むだろうというふうに余り過度、過大に思うと違うし、一千五十億というのを予算組みましたという、何か見せ金的に、そういう悪意はないと思いますけれども、何かそういうふうになってもいけないし、やっぱりもっとシビアに、リアルに見るべきだと思いますし、私は、これはやっぱり企業の頑張って上げた、賃金を上げた、頑張って雇用を増やした企業に対する奨励金と言ってはなんですけれども、そういう意味合いなら何も否定はしないし分かるんですけれども、これで増やせると思って待っていると、そういう結果にはならないのではないかと思います。
 政治がやれる、賃金とか雇用問題というのは難しくて、民間の問題ですから、政治がやれるのはやっぱりマクロ政策ですよね、一つは。二つ目は、やっぱり賃金、雇用の制度をどうするかと。例えば、非正規雇用をこれ以上増やさないような形を取るとかですね。三つ目に、私、この前予算委員会で申し上げましたけれども、比較的政府が関与しやすい賃金制度というと、やっぱり最低賃金制度しかないんですよね、割と関与しやすいというのはですね。
 これ、ですから、アメリカとかフランスは、消費拡大のために賃金を上げなきゃというときに最低賃金制度に働きかけるという政策を取って、この前御紹介いたしましたけれども、アメリカは八千八百億円、中小企業支援をやって一気に最低賃金を二百円上げて、日本より超しちゃったわけですね。フランスも、フランスは二兆円以上使って上げましたけれども、そうなっているわけでございます。
 お金をばらまけという意味ではないんですけれども、やっぱり経済対策としてどうしても賃金上げないと、せっかく一生懸命やっていらっしゃることが全部水の泡みたいになって、後で、もう今でこそマスコミはみんな持ち上げていますけれども、これで格差広がっただけとなったら、また自民党、政権失うんじゃないかと、私は思いますよ、本当に。今度は本当に賃金上げなきゃいけないと思うんですね。そういう点では、もうちょっと、これでいいということにしないで、もっともっと研究していただいてやる必要があるかと思います。
 それで、厚生労働省は、言うとそのとおりだと思うんですよね。ところが、厚生労働省は、中小企業支援という予算を持っていないんですよ。ですから、いつもちまちまちまちました助成金制度で何十億しか組まないんですよね。むしろ、伝統的に持っているのは中小企業庁なんですよね、中小企業に使える枠というのを。だから、もう内閣主導で、何々省に任せないで、縦割りに任せないで一気に省庁関係なくわっとやるような、そういう発想を持った賃金引上げ策をやらないと、このままいくと大変なことになるんじゃないかと思いますが、麻生大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) ちょっと他省庁にちまちまとはなかなか言いにくいところなので、私ども言葉選ばぬと、また先ほどの辻先生の餌食になりかねぬと思って、言葉を選ばないかぬなと思いながら今お答えしておりますけれども。
 確かに、こういったようなものはまとめてやらないと効果が、また広報的な意味を考えると、えっという感じで、政府というのであれば厚生省で中小企業庁で財務省で皆同じ認識ですから、そういった意味では、今言われたようにまとめてやった方が効果がでかい。したがって、内閣として政府として一体的にやれという御指摘は、私は正しいと思っております。
 それから、先ほど言われましたように、こういうのがあるから人を雇うかといったら、それはなかなかそうじゃないんであって、雇おうかな雇うまいかなと思ったときにこれがあったら、おっ、これならもう一人やれるかなという程度の意識が多分普通の経営者の方々の感性なんだと、私はそう思っておりますので、これがあるから一人増やそうとかいうのは最後の判断であって、最初からこれというのを期待するのは間違いと、私もそう思います。
○大門実紀史君 是非、ちょっと抜本的な、大規模なものを考えて研究してもらいたいと思います。
 もう一つ、今回の税制改正で変だなと思うのは、この日本版ISAですね。この目的が、個人の、これは大体ISAというのは個人貯蓄口座というのが直訳らしいんですけれどもね。毎年百万まで、最大五年間五百万までということで非課税にするということですけれども、その目的が私ちょっと気に食わないんですよ。巨額の家計金融資産を成長マネーに供給すると。よくまあこんなことを政府がはっきりと言うなと。家計の資産を形成を支援する、これもちょっと眉唾じゃないかと、私、この目的そのものは、こんなこと掲げるの不誠実じゃないかと、私思うんです。
 要するに、これ財務省の大変正直な若手の役人さんと議論するとはっきり言うんですけれど、やっぱり家計資産千五百兆、あるいは高齢者の預金、これをもっとリスクマネーに回してほしいと、株や証券にですね。誘導したいというようなことをもうはっきり言うならば、これは、しかも、資産形成といいますけれど、素人のそういう投資家という名前も付けられないような人たちが株でどれだけもうけられるのかと。大抵、さっき言ったけど、後で売り逃げ、売り抜け遅れて損させられる方なんですよね、巻き込まれて。それを、これやれば資産形成になるとか、ちょっとひどいんじゃないかと思うんですよね。
 例えば、この委員会で私ずっと取り上げたことがあるんですけれど、日本郵政が投資信託をお年寄りに過度の営業戦略でばんばん売ったんですよ。それがもう大下落して、大損が広がってかなり問題になったことがあるんですよね。そういうことだってあったわけですよね。それ忘れちゃって、それはほとんどお年寄りだったんですよ。お年寄りに対して長い目で見てくれと。どうやってお年寄りに長い目で見ろというんだと当時思いましたけれど、そんなことを平気で答弁していたんですよね。そういう話なんですよ。それを今度、堂々とこういうことを目的に書くというのはどうなっちゃっているのかと、ちょっと本当に思います。
 もちろん、自分の責任で、自己責任で自分の意思で自由に投資するのはこれはもう勝手でございますけど、政府が証券会社の何か客引きみたいにこんな言葉で制度をつくると。しかも、これ、今恐らくこれだけ株が上がると思っていなかったときに考えたんじゃないかと思うんですよね。株が上がると言ったら、ほっておいてもみんな買いますよね、損するかも分かりませんけどね。
 そういうものでございまして、こういう何か、自分でリスク取ってもらって判断してもらえばいいものを、政府がこうやってわざわざ誘導するようなものはいかがなものかと思うんですけれど、常識的に考えてですよ。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 私どもは、少なくともリスクの、先ほど言われましたように個人金融資産約一千五百兆、現預金八百何十兆、そのうちの半分以上が約六十五歳以上の方が持っておられるという実態を、少なくともほとんど今金利が付かないものに現金で持っておられる、若しくはたんす預金でも何十兆あるだろうかと言われているものがあるわけなので、そういったようなものがそこにじっと寝ていることは確かだと思うんです。これが、お金というのは置いておくものじゃなくて、これは回すものであって、これはそこにじっと置いておいても余り意味がないんだと思ってはおりますけれども。
 少なくとも、こういった今度の日本版ISAというのをつくらせていただく背景というのは、少なくともリスクの高い金融商品へ投資を誘導するということを目的としているわけではありませんので、少なくとも日本の場合は個人が貯蓄しておられる部分の現預金の比率が世界の先進国の中では最も高い比率になっているというのは実態であります。そういった意味では、少なくとも安定的な資産形成というのを行うことを考えていかないといかぬのではないかと。余りにも現預金に偏り過ぎているのではないかということでありまして、それがこれを考えられた一番の背景なんだと思っておりますが。
 少なくとも、制度の目的というものが効果的に果たされていくかどうかというのはこれは極めて大事なところなのであって、したがって、私どもとしては、これを一口に限ってみたり百万円と申し上げてみたり、いろいろ、ちょっと少なくともそういった点に関しては、もうあおってどんどんどんどんという感じではないというように御理解いただければと存じます。
○大門実紀史君 ですから、本筋は、景気が良くなって、じっと寝ているのではなくて、そのお金が銀行にあるわけですから、銀行が投資をして、景気が良くなって投資すれば、金利も上がれば、利息も上がれば寝ているわけじゃないんですよね。全てデフレ、この不況に原因があるわけで、それを無理やり、リスク取らない連中がおかしいんだみたいな、これは話がもうあべこべだというふうに思いますので、ここは本当に、政府ですからやっぱり節度を持ってほしいなと思います。
 今申し上げたとおり、これは、ISAというのは、イギリスのやつの日本版といいますけれど、イギリスと違うんですよね。何が違うか、田中局長、ちょっと一言で。
○政府参考人(田中一穂君) 御指摘のとおり、今回お願いをしております日本版のISAにおきましては、非課税口座の中の上場株式等を一回売却いたしますと、その売却部分の枠は再利用できないということにしてございます。こうした制度設計については、比較的短期な売買ではなくて長期な投資を促すという意味で日本版のISAの目的を踏まえて決定をしたというものでございます。
○大門実紀史君 違うんですよ。そんな難しい話じゃないんですよ。イギリスは、個人貯蓄口座なんですね。これに対する非課税制度なんですよ。つまり、イギリスの場合は預貯金も非課税にしているんですよ、預貯金の利子も。日本の場合はこの投資関係だけなんですよね。これが大きな違いなんで、さっき言った利息が付かない、今大体もう貯金ができない人が増えて、なおかつ低額しか貯金できない人がいて、その方々の僅かな利子ですよ、これには二割掛けっ放しなんですよね。今度は、ちょっと余裕があって、投資をする余裕のある人には非課税にしてあげようと。普通に考えたらやっぱり変な話なんですよ。
 それは、やっぱりさっき言った、置いておかないで誘導したいからではないかなと思うわけですね。本来ならば、この僅かな貯金に二割も掛けっ放しじゃなくて、ISAという名前を付けるならば、イギリスと同じように個人の利息にももう非課税にするということが本来あるべきなのに、やっぱり誘導策であるというのはここにも表れるわけでございます。
 ちなみに、この二十年でこのゼロ金利政策、最初低金利、ゼロ金利政策で、この二十年で受取利子から支払利子を引いた純受取利子というのは三百二十兆円マイナスなんですね。それだけ国民が利子所得奪われているわけでございます。やっぱり、この問題をきちっと考えないでこういう変な制度を打ち出されるのはおかしいなというふうに申し上げておきたいと思います。
 もう一つ、ちょっとまやかしだなと思うので指摘したいのは、資料もお配りいたしましたけれど、この国際比較なんですよ。時間がないんで、ちょっと申し上げておきますけれど、ちょっとお願いだけしておきますけれど、要するに、日本は今回の措置で諸外国に比べてかなりの優遇策になるんではないかという疑問が、私どもだけではなくて、いろんなところから意見が出ております。
 それに対して証券業界がどう反論しているかというと、一番下のところなんですけど、通算する内容はそれぞれほかの国が厳しくて日本はちょっと緩めましたけれど、三年間しか通算が繰り越せない、ほかの国は無期限が多いと、だから日本はまだ厳しいんだということを証券業界も言ったりするわけなんですけれど、これがほんまかいなと、本当かいなと私は思うわけでございます。
 本当だと言うならば、といいますのは、一般的にぱっとイメージ、印象で考えますと、三年間しか繰越しができないと、通算できないのに比べて無期限にやれるわけだから最後まで引けるねと、だからそれは絶対無期限の方が優遇でしょうと思いがちですけれど、配当と相殺をやるようなことになってきますと、本当に三年を超えて繰り越す例がそんなにあるのかということと、それを理由に、中身を優遇するということの理由に三年というのが使われるとしたら、もうちょっと三年について、三年本当に繰越ししても引き切れないようなことなのかと、配当まで含めてですよ。
 これはちょっと議論を実は財務省としているんですけど、サンプルがないので、結局はこれ分からない話なんですね。これは今後これ更に、ここは緩和するという話もあるわけですから、その三年で繰越しが引き切らないというふうな、何といいますかね、サンプル調査でも結構ですから、ちょっと調べていただけませんか。そうしないと次の議論に入れないと思うんですよね、この三年があるからということばっかり言っていると。ちょっと幾つかサンプル調査をお願いしたいんですけど、どうですか。
○政府参考人(田中一穂君) できる範囲で対応したいと思います。
○大門実紀史君 もう時間が参りましたので、こういう税制一つ一つが何かいいことのように宣伝されておりますけれど、様々な問題点があるということも是非御承知をしていただきながら、まず賃金を上げるために全力を尽くしてもらいたいということを重ねて申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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