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○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。 今も議論がありましたが、消費税と景気の関係について質問をしたいと思います。本来であれば与謝野大臣にお聞きした方がよかったかも分かりませんが、諸般の事情で中川大臣にお聞きしたいというふうに思います。 消費税の増税時期については自民党内でも激論があったというふうにお聞きしておりますけれども、結局、政府が今国会に提出した来年度の税制関連法案の附則では、増税の時期とかタイミングについて、要するに、税制抜本改革を行うために一一年度までに必要な法制上の措置を講ずるということと、実施の時期については景気回復過程の状況を見て法制上定めるというふうなことになったんだというふうに思います。 総理も中川大臣も与謝野大臣も、消費税は景気が良くなってからということを繰り返し御答弁されてまいりました。この景気が良くなったらという場合の景気というのは具体的には指標としては何を物差しにされるのか、まず教えていただきたいと思います。 ○国務大臣(中川昭一君) 中期プログラムでは景気、経済状況の好転の判断基準の一つとして潜在成長率の発揮が見込まれるかどうかということを挙げておりますけれども、やはり各種指標、一般的に生産、輸出、消費、雇用等の数字が好転ということに判断できる状況だと思います。 ただ、数字だけではなくてやっぱり国民の実感とか、あるいは今回の消費税を含めた、減税もあるんでしょうけれども、税制の抜本改正というものが社会保障制度の安定等に資するということを国民の皆さんが御理解いただくということも一つの、これは政治ですから、国民の皆さんの実感や期待というものも考量していかなければいけないと思っております。 ○大門実紀史君 経済財政諮問会議では、一つの物差し、指標ですけれども、現在一・五%から二%とされる潜在成長率、これを実際の成長率、実質成長率がそれを上回った辺りと、つまり二、三%になるんでしょうか、そういうふうに言っておりますが、私は、大臣言われたように、それだけで判断すると危ないなというふうに思っております。 例えば、今金融危機でございますけれども、その前の景気が回復したと言われていた時期は、大企業主導の景気回復で成長率もそれなりに高まったわけですけれども、実際には一人当たり賃金は減少すると。雇用者所得という点でいきますと〇一年から数年で比べると二・三兆円減少しておりますし、予算委員会で私取り上げましたけれども、いろいろ負担増の関係でいくと累計で五十兆円ぐらい負担増が増えているというふうな関係でございますので、私も、大臣おっしゃるとおり、潜在成長率を実質成長率が上回ったら景気が良くなったんだと、上げていいんだというふうにはならないというふうに思います。 その辺は大臣としては、経済財政諮問会議は一応潜在成長率を上回るというようなことを中心に言っておりますが、大臣としてはもっと総合的に指標を判断するということをもう一度確認のためにお聞きしたいと思いますが、いかがですか。 ○国務大臣(中川昭一君) 諮問会議でも一つとしてというふうなことになっておりますけれども、私は、やはりこれはもう政治そのものですから、この税制改正というのは、ですから単なる指標だけではこれはとてもできないと。経済が良くなるということについての総合的な判断というのは、まさに政府あるいは与党の政治判断ということになるんだろうと思っております。 ○大門実紀史君 私、我が党は、御存じのとおり、消費税じゃない方法で、増税じゃない方法で財源をつくるべきだというふうな立場でございますけれども、景気に与える影響で、何といいますか、危うい判断をされないようにすべきだと、それを前提にした増税方針というのは違うんじゃないかという点で申し上げました。 例えば、九七年に五%に増税したときの成長率でございますけれども、当時は、例えばその前の年、前の年で見ると、九五年度は二・五%の成長率がありました。九六年は二・九%に達していましたし、雇用者所得も、年間四、五兆円増えていたという時期でございます。そのときでさえ、消費税増税で一気にマイナス成長になったということもありますんで、今出されている景気が良くなったら論というのは気を付けて考えるべきことだと、なったらいいんじゃないかというふうには単純にならないというふうに思います。 ただ、経済財政諮問会議ではもう少し中身に踏み込んだ議論がされております。それと二〇一一年度との関係でかなりコンクリートされた方向で、しかもこれは諮問会議で皆さんが合意したというふうになっていますんで、そう簡単にあれこれの一つとして見るわけにはいかないと思いますので、質問したいと思いますけれども。 諮問会議では、消費税引上げ時期を、実際の成長率が潜在成長率を上回る成長率加速局面で実施すべきと、これはもう大筋、民間議員が提言された、お手元に資料を配りましたけれども、これを一つの参考にしながら民間議員が提言して大筋合意しているということでございますし、与謝野大臣ははっきりと、上昇局面のときに、景気循環のサイクルの上昇局面のところで上げるべきだということを具体的におっしゃっております。 ちょっと内閣府に聞きたいんですけれども、民間議員がまた提出した資料でございますが、この資料に基づいて、どの辺がその潜在成長率を実質成長率が上回るということを想定しているのかと、何のためにこの資料が出されたのかということも含めて説明してくれますか。 ○政府参考人(西川正郎君) お答えさせていただきます。 経済状況の好転後に行う消費税を含む税制の抜本改革、この実施時期に関しましては、昨年十二月の経済財政諮問会議において有識者議員から資料の提出があり、御議論をされております。その資料におきましては、まず経済状況の好転については、経済社会の動向を総合的に見て判断する必要があると、こうした上で、経済成長率を一つの目安として考えた場合が取り上げられております。景気循環局面から見て最も適切な時期に消費税を含む税制の抜本改革に着手する必要があるとの観点からの議論がなされたと承知しております。 〔理事大塚耕平君退席、委員長着席〕 お手元の資料でございますが、その際の資料の一部を配付いただいておると思います。この実は資料の前に概念図の絵がございまして、配付されたものは、その概念図を一九九〇年代の例に単純に当てはめたものでございます。 この図の横軸は時系列、時間でございます。縦軸がGDPの水準を表しておりまして、左下から右上への直線は潜在GDPの動きを表しております。この傾きが潜在成長率になります。また、太線で示しておりますこの曲線でございますが、こちらが景気循環により変動する実際の経済の動きを示しております。その傾きが実際のGDPの成長率となるわけでございます。この図では、この曲線は実際の成長率をならして見るため、三期移動平均を取って示しております。 この図の中央下の方の部分に景気の谷という時点がございます。この例では九三年の第四・四半期となっております。景気循環に沿ってこの時点から経済状況が持ち直し改善していくと成長率が高まっていきます。この傾き方が大きくなっていくということでございます。そして、実際の成長率が高まり、潜在成長率に達し等しくなる点が潜在成長率到達点でございます。この九〇年代の例では九五年の第一・四半期、実質GDPが一・六%という点を示しております。この点ではGDPギャップが残りますが、その後更に成長率が加速し、潜在成長率を上回るような成長が展望できる局面に移っていくと見込まれます。 つまり、この潜在成長率到達点から右の方では、成長率の上昇に弾み、勢いが付き、GDPギャップも縮小、解消に転じていくことが見込まれる局面でございます。この成長率加速局面において速やかに税制抜本改革を実施できるように準備しておくことが望ましいのではないかという指摘があったというふうに理解しております。 いずれにしましても、税制の抜本改革の実施時期につきましては、その時々の景気回復の状況や国際経済の動向など見極め、最終的には総合的な判断を行うものと考えております。 ○大門実紀史君 私が聞いているのは、そのおっしゃっています潜在成長率を実質成長率が上回ると、そのときに上げるタイミングだと与謝野大臣はおっしゃっているわけですけれども、これはもう過去のラインですけど、これでいえばどのころになるのかということを聞いたわけです。 今おっしゃったように、その前に言っておくと、九七年のときに、先ほど申し上げたようにマイナス成長に陥ってしまったと、増税をして。これは、景気の循環のピークのときにやってしまったから、後で加速度的におっこっちゃったと。今度、多分おっしゃりたいのは、上がっていくときに、上がっていくときに増税をしたら大丈夫だと、単純に言うとそんな話をされているんだと思いますが、その成長率到達点、つまりこの真っすぐのラインと角度が一緒になるところ以上になってきたと、角度が、そういうことをおっしゃっていると思うんですけれども。 つまり、こういうことでよろしいですか。九五年の一・四半期から九六年の第三・四半期、このころがこのカーブが潜在成長率を上回っていると。こういうラインのところ、これ一年半ありますけれども、こういうラインのところが上げどきだというふうにおっしゃっているんでしょうか。 ○政府参考人(西川正郎君) お答え申し上げます。 具体的にどの四半期がということでございませんが、御質問にありましたように、この九五年第一・四半期より後、景気が加速していく局面であって、景気の山に近くならない段階において実施すべきであったのではないかという御議論がございました。 ○大門実紀史君 これは、このラインは過去の話ですから分かるわけですよ。いつから上がって、どうなって下がったと。これからはどうやって判断するんですか。分からないでしょう、先のことは。今上がっていくと、こういうふうに見えないじゃないですか、先のこと。どうやって判断するんですか。 ○政府参考人(西川正郎君) 諮問会議の議論も、経済状況の好転は経済社会の動向を総合的に見て判断するべきものであるということが前提でございます。その際、景気循環局面から見て最も適切な時期にそういう税制の抜本改革に着手する、その観点からどうしたらいいかということから議論を行ったということでございます。 いずれにしましても、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を総合的に見て判断するということは変わりございません。 ○大門実紀史君 いずれにしても、余りこれが関係ないなら、もうこういうことを言われないで、与謝野さんはそういう答弁をされるべきじゃないと。これはあれこれの一つで、これは別にこだわっておりませんと。先ほど中川大臣が言われたように、雇用の問題とか国民の実感とか、それで判断するんだということだったら、この諮問会議で合意されて、これを委員会の場でも本会議の場でも与謝野大臣は潜在成長率を超えた場合とおっしゃっているんだから、そういうことを言われない方がいいというふうに申し上げておきたいと思います。 ただ、何でこんな議論がされているのかと。これ民間議員がまたこういう資料を出してきたわけですけれども、民間議員が出してくる資料というのはろくなものを出さないんですよね。前、私、この委員会で言いましたけど、一兆円消費税を増税して社会保障に回したら所得再分配効果が高まると、でたらめな高まるというような言い方をするような、本当子供でも分かるようなでたらめな資料を出されたりするわけですけれども、これもそうなんです。 これ、今日は資料は用意しませんでしたけど、先ほど頭にちょっと言われましたけど、先に二〇一一年度ありきなんですよ、ありきなんですよ。 なぜかといいますと、この配付された資料の、当日の諮問会議で配付された資料の最後にあるんですけれども、要するに何を言っているかというと、八〇年代以降の景気変動期の後退、景気変動における景気の後退期間というのは平均二年程度だと、景気の谷から潜在成長率達成までは一年程度だと。二年と一年、三年になるわけですね。この山を、二〇〇七年十―十二月期が山とすると、今の平均値を当てはめると二〇一一年には上昇に転じると、だから二〇一一年と。何のことはないんですよ。二〇一一年に勝手に今までの逆算して当てはめているだけのことなんです。 申し上げたいのは、景気が良くなったらとかいうのは後から付けた理屈で、二〇〇一年度にということを、総理が三年とおっしゃったこともあるんでしょうけれども、二〇一一年度ということが先にあって、景気の谷を、今までの平均値を勝手に当てはめていると。百年の一遍の危機で先が見えないときに、そんなものは何の根拠もないというふうに思うわけでございます。 実は、この景気が良くなったら論というのは、何のことはなくて、先に二〇一一年ありきで、どうでも取れるような今までの平均値を無理やり当てはめただけというふうに思いますが、内閣府はその辺よく分かっているんでしょうか。 ○政府参考人(西川正郎君) お答えします。 当日御議論された際に、確かに、議員御指摘のように、概念図、この御配付の資料の前の概念図におきまして、八〇年代以降の平均的な景気の後退期間が二年程度、景気の谷から先ほどの潜在成長率達成時点までの間は一年程度というふうに平均はなっておりますが、同時にそのとき、最後に表の、もう一枚資料ございまして、その中で、バブル崩壊後の後退期、九一年からの例あるいはオイルショック後の後退期と並べて今回の景気後退期を比較のために並べておりまして、バブル崩壊後の後退期あるいは第二次オイルショック後の後退期においては、やはり景気後退期の期間がそれぞれ二年八か月、三年と長かった。大変厳しい景気後退の時期には景気後退が三年掛かって、そこから更に、景気の谷から一年後ぐらい、GDPギャップが、マイナス幅が最大になる時期まで掛かるということも併せてお示しし、議論をしているところでございます。 ○大門実紀史君 もう細かいことを言いませんけれども、そのときでも潜在成長率を上回って二%、三%ということにはなっておりませんので、余り取って付けたような数字を持ってきて先に結論ありきみたいなことを、さも何か信憑性のあるような言い方で打ち出されるべきではないということを申し上げて、今日の質問は終わります。 |
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