国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■156-参-財政金融委員会-12号 平成15年05月27日
○大門実紀史君 今日はどうも御苦労さまでございます。
 りそながこういう事態になりましたので、ちょっとりそなの関係で奥山参考人に幾つか先に伺いたいと思うんですけれども、この委員会でも議論がありましたが、竹中大臣は、五月の七日の日に金融庁の事務方に対して、りそなと監査法人のことに構うな、介入するなということを発言されたようなんですけれども、それ、はっきり言われておりますが、奥山参考人は、新聞報道ですけれども、金融庁とりそなと監査法人でこういう見解を一致するための協議をしてほしかった、あるいはすべきだったというふうにおっしゃっていますが、その辺の真意はどういうことなんでしょうか。

○参考人(奥山章雄君) 今の金融庁の銀行行政は、事前指導、行政指導ということから事後チェック、監督型行政ということへ数年前に変わったというのは私は承知しております。したがって、銀行の決算問題につきましても、事前にいろいろと銀行と相談してチェックしてそれを決めるということではなくて、あくまでも銀行の自主的な動きに任せ、そしてそれを監査人がチェックをしてオーソライズされたものとして、それを決算が終わってから事後的に繰延税金資産の妥当性とかそういうことをチェックしていく、検査でチェックしていくと、このような仕組みになっていると思います。
 私はそれは重々承知しておりまして、それは今回もそのように私は動いたと思いますけれども、その中でりそな銀行が四%を割って公的資本を注入するというふうな事態に至ったというときに、監査人がその社会的な影響ということを全く考慮しないで監査意見を述べるということは、これは実際問題としてあり得ないと思います。やはりそれの監査意見を出すときの重さというものは重々承知して、それを言わば大変苦悩しながら検討した結果として、しかしやはりここで適正な意見を出すということが最も重要だという公認会計士の監査の社会性に対して言わば忠実だったというふうに思うわけですね。
 それは結果としてすぐそこで資本注入だと、こういう関係になっちゃうわけですけれども、ここは今後、やはり監査人の意見についてそれなりの、もっと多くの方々が理解してもらう、そういう時間があってもいいのではないかと。そういう意味で、必ずしも監査人の意見を変えるという意味ではなく、金融庁と一致させるという意味ではなくて、金融庁は金融庁サイドのもし見方があればそれはある、監査人は監査人として当然あると。そういうことがうまく何らかの形で理解、相互理解を生んでいけば、これは監査人の意見というのは大変なものだということの中で、言わば公的資本の投入等の仕組みがもっと多くの方に知られる中で動いていくのではないかと。そういう意味で、ある日突然にというふうな言い方ではなくなるのではないかということで申し上げたわけです。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 そうすると、竹中大臣はこの委員会でも、判断は監査法人がやったと、金融庁はその結果を受けて公的資金の判断をしただけだと、ですから判断のところには全く加わっていないと、だという言い方を今されておりますけれども、今後これから、昨日も決算出ましたけれども、幾つまた自己資本不足というのがないとは言えないような状況ですが、そういうときに同じように金融庁が、監査法人が出した結果で、その後の対応をやっているだけだということには、やっぱりこれから協会としては不満をお持ちだということになりますか。

○参考人(奥山章雄君) 不満を持っているというよりも、今の仕組みでいけば、今の経済環境がそのまま推移すれば、繰延税金資産の重みというのは変わらないわけです。この繰延税金資産が妥当かどうかということについては、相変わらず監査人側の方に判断を迫られることもあるだろう。これはやはり大変、この中間期、来年の三月期、重い判断だというふうに思います。重い判断を監査人がしろと言うならば私どもは当然役割ですから受けて立ちますし、そういう意味で、変わらなければ頑張ります。
 しかし、言わば多くの方が、最近聞くところによると、監査人が判断する、しかもそれは幅があるじゃないかと。その中で直ちに銀行がおかしくなるというふうな仕組みがいいのかどうかということについて、もうちょっと何らかの、監査人の一法人の判断だけではなくて、社会的に認知できるような仕組みがあってもいいのではないかということを若干聞いております。そこについては、したがって、やはりもしそういうことであるならば検討することを考えてもいいのではないかということで申し上げているわけです。

○大門実紀史君 もう一点、奥山参考人にお聞きしたいんですけれども、会長が二月二十四日に、会長通牒というんですか、通知ですね、出されました。私が金融庁に聞いたところによりますと、去年の十月の末にいわゆる金融再生プログラム、竹中プランが出て、十一月の十二日に協会に対して、あのプランに基づいて厳正な適用をやってほしいという依頼をしたというのを聞いておるんですけれども、その依頼を受けてあの会長通知を出されたという関係というふうに理解してよろしいんですか。

○参考人(奥山章雄君) 二つあると思います。
 一つは、今お話しのように十月に金融再生プログラムができまして、その中で外部監査人に対しての要請も幾つか入っているということがありまして、それは当然、金融システム安定化という大前提を考えていく中で迫られている要件だというふうに思います。それは公認会計士監査の立場としてももとよりやらなきゃいけないことでありますのでそれは受けたということと、それから、その後に、十月以降にやはり経済環境がますます悪くなっているということは否めないと思います。それで、繰延税金資産等の、あるいは不良債権の償却・引き当てもそうなんですけれども、経済環境が悪くなっていけばいくほど非常にその内容についての判断が厳しくなっていくという性格のものなんですね。
 したがって、元々私どもが出している監査委員会報告六十六号という、繰延税金資産の取扱いについて定めているものなんですけれども、それはそういうことを想定したわけじゃないんですけれども、厳しくなったときには厳しくしろというところが随所にあるわけですね。それを、やはりそういう金融再生プログラムのことと、それから経済環境が悪くなったということを受けて、これは監査人にこの際厳しく改めて見直してもらおうじゃないかということを私考えまして、協会の役員会を通して会長通牒ということを出して、改めて監査人の対応を促したものだというふうに思います。

○大門実紀史君 そうしたら、時間少なくなりましたけれども、法案関係でお三方にお聞きしたいんですけれども、今回の法改正が中小の監査法人に与える影響について、一言ずつ御感想あればお聞きしたいと思います。

○参考人(奥山章雄君) このたびは、特に監査人の交代ルールですね、これについて大変影響が、与えるものが多く掛かって、大変、中小監査法人にとってはこのことは受け入れることが大変厳しいと思います。
 しかし、私どもは、厳しいといってもやはり監査法人ですから、最低五人以上の公認会計士がいるわけですから、何とかそこは乗り切って、交代ルールを受け入れるべきじゃないかという本来の目的に沿って私どもは踏み切りました。大変厳しいと思います。

○参考人(関哲夫君) 率直に言って、中小の監査法人にどういう影響があるのか、私の見識からはちょっと分かりません、率直に言って。

○参考人(八田進二君) そもそも昭和四十一年の公認会計士法の改正で導入されたこの組織的監査を支援するための制度としての監査法人制度、これは当初五人の公認会計士を踏まえて組織するということで、合名会社、組合のような形の無限連帯責任で作ったわけですが、今日のようにビッグフォーといいますか、巨大、四つないし五つぐらいの監査法人に集約されて、ほとんどそこで法定監査業務が行われているという実態を見ますと、やはり法の趣旨と大分違ってきたんではないかということがあります。これが第一点あると思います。今回もやはりその辺を突っ込んで、我が国の公認会計士制度の在り方の中で監査法人はどうあるべきかという、本来は時間を詰めた議論が必要ではなかろうかと思います。
 それと、どういう影響かといいますと、やはりこのりそなの例を見ましても、もしもこれが中小の事務所でされていたならばどうであっただろうか。つまり、来年度から断ち切られる監査報酬、事務所に占める監査報酬の割合が多分大きいような中小の監査法人にとっては非常に厳しいものがあるということで、次第次第に制度的に大監査法人に集中していく方向を国が進めているのではないかという気がしています。

○大門実紀史君 そうしたら、関参考人にだけお伺いしますけれども、今の国際会計基準ということで、先ほどお話もございましたが、減損会計とかいろいろなことが進んでおりますけれども、それを何か早く日本も適用しないと、何か保護主義だとか乗り遅れるだとか、グローバル化の波に乗り遅れるとか、すぐそういう短絡な議論が私、出がちだというふうに思うんです。
 例えば、それじゃアメリカのスタンダードをほかの、アメリカ以外の国がみんなそのままやっているかといったら実はそうではなくて、いろんな、言ってみれば都合のいいような、取り入れ方も含めていろいろやっているわけですよね。そういう点でいくと、日本もそのグローバルスタンダードを見ながらも、独自の頭で、日本に合ったような適用の仕方といいますか、受入れ方をすべきだと思いますが、関参考人の御意見ございましたら。

○参考人(関哲夫君) 私は、日本の今の会計基準は、相当程度国際化が進んでおって、それほど、一部言われているような後れた状況であるとは思っておりません。これは、国際水準から見て、ほとんど遜色のない会計基準まで来ていると、こういうことだと思います。したがって、そういう認識をきちっとすべきであると。
 それから、その次に、新しく国際会計基準の場で議論しなきゃいけない問題が幾つも出てきているわけですね。これについては、やはり先生おっしゃるように、本当にこれからの議論ですから、日本の経済実態あるいは企業経営の実態に即して本当にどう考えなきゃいけないのかということを十分踏まえて発信していく必要があるわけで、そこのところで、とにかく彼らの言うことを聞かないとどうにもならないんだと、いや、そういう側面が全くないわけじゃ現実問題としてはないわけですけれども、やはりよくそこは議論をして、日本としてこういうふうに考えるということを発信していくということが私は大変重要な、そういう局面に来ているんじゃないかと思っております。
 特に、もう少し具体的に言えば、これからのこれは問題なんですが、どうしても証券資本主義的な考え方が非常に強くて、いわゆる企業会計というものをストックを中心に、言わば会社の清算価値ですね、そういうものを中心に考えて、会社の商品としての評価、これにウエートを置いていこうという会計が我々にとって本当にいいのかどうか。我が国というのは、やっぱり額に汗して一つのいろんな生産要素を調達して新しい付加価値を生んでいくという、そういうフローといいますか、そういう生産活動そのものに我々は価値を置いて仕事を今までしてきて、そしてそれが日本を強くしてきているわけですね。
 ですから、会計といえども、必ずそういう経済システムというのは背景にあるわけでありまして、その辺を踏まえて、よくやっぱり議論していくということが非常に大事じゃないか。そのことが、そして先ほど八田先生もおっしゃいましたけれども、必ずしも国際的に孤立するということではないわけでありまして、よく理論武装した上で、十分、要するに話をしていくということで、最終的に結論が違っても、そこで信頼を得られるということは私は十分あると思っておりまして、そういう努力を、これを関係する皆さんはこれからしていかなきゃいけないと、こういうふうに私は思っております。

○大門実紀史君 貴重な御意見ありがとうございました。もう大賛成です。
 これで終わります。
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