■156-参-財政金融委員会-4号 平成15年03月25日 |
○大門実紀史君 大門でございます。 私の方は、税制の基本問題と企業再生、二つの柱でお伺いしたいと思います。 昨年の六月、税制改正の議論がありましたときに、いわゆる広く薄く課税論について質問いたしました。要するに、今納税者が少なくなっているのは景気が悪いからだという点を御指摘して、余り広く薄く論には根拠がないというようなことを質問したわけですが、その上で今日は、そのときも取り上げましたけれども、課税最低限の問題について伺いたいというふうに思います。 あらかじめ申し上げますと、課税最低限を引き下げていく、つまり庶民にとっては増税の方向にしていくということと、その一方で企業、特に大きな企業には減税していくということが決して社会の活力を生むということにはならないと。これはそんな根拠もなければ、そんな実例も世界のどこにもないわけですから、むしろこの需要低迷の中で課税最低限を引き下げていったり、一部の黒字の企業だけ減税しても景気は全然良くなりません。消費がかえって落ち込んで悪循環に落ち込みます。そういう立場で一番大事な庶民増税の基本部分の質問をさせていただきたいと思いますが、課税最低限です。 最初にお伺いいたしますけれども、そもそもこの所得税の課税最低限というのは何のためにあるのかという点をお聞かせいただきたいと思います。 ○政府参考人(大武健一郎君) 御説明させていただきます。 課税最低限は、納税者の大半を占めます給与所得者につきまして、ここまでは税負担が生じない、所得税負担が生じないという給与収入の水準として実は定まる。その意味では、具体的には、いろんな控除の中で、給与所得控除あるいは基本的な人的な控除、基礎控除ですとか配偶者控除、扶養控除、それに社会保険料控除といった各種控除を合計した額が課税最低限ということになります。このように課税最低限自体、その水準自体が幾らだということではなくて、今申し上げたような基本的な控除の額を積み上げた結果定まってくると、こういう性格のものであるということであります。 ○大門実紀史君 政府税調の中期答申、ここにございますけれども、二〇〇〇年七月に出ました中期答申ではこのように書いてありますけれども、「課税最低限は、経済生活を通じて所得を得た国民が個人所得課税の負担を分かち合う際に、ここまでは税負担を求めない」と、「ここまでは税負担を求めないという給与収入の水準を示すこと」というふうに書かれています。 その、ここまで負担を求めないという給与収入の水準というのは、大体何が基準に今まで考えられてきたか、教えてもらいたいと思います。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 今、先生が言われた同じ中期答申の中で、政府税調では次のように書かれているかと思います。「かつてわが国の国民の生活水準が国際的に低かった時期には、生計費からの観点が重視される傾向にありました。その後、高度成長期から安定成長を経て、国民の所得水準は大幅に上昇するとともに、国民の保有資産も相当程度増加してきています。このような経済社会の構造変化などに鑑みると、課税最低限については、生計費の観点からのみではなく、個人所得課税を通じて公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて総合的に検討していく必要があります。」という御指摘をいただいているところであります。 ○大門実紀史君 そう書いてあるのは私も読んでいますが、私聞いていますのは、そもそも課税最低限がどういう歴史で設けられて、ここまでは負担を求めないという意味ですね。今のは、いろいろ総合的に考えようという、ちょっと別な話だと思うんですが、ここまでは負担を求めないという意味はどういうことですかと伺っているです。 ○政府参考人(大武健一郎君) 先ほど申し上げましたとおり、いわゆる課税最低限が幾らかという基準で議論しているわけではありません。正に今申し上げた意味でいえば、人的控除あるいは給与所得控除、社会保険料控除、それぞれの言わば水準を議論し、結果として課税最低限というのが決まってくる。そのときに、それぞれの社会状況の中で、先ほど政府税調の御答申にもありましたとおり、生計費という観点を重視した時代から、むしろみんなで分かち合うというようなことを念頭に置いた時代へと移ってきている、結果としてその言わば課税最低限という数字が決まってくる、そういうものなのかと存じている次第であります。 ○大門実紀史君 そうしますと、一定の所得以下には税金を掛けないという考え方が、どちらかというともう古いとわきに置かれて、国民生活も豊かになったんだから、ほかのことを総合して決めていこうという考え方に変わったということですか。 ○政府参考人(大武健一郎君) 変わったといいますか、そもそも控除の考え方というのはそのようにできているわけであります。例えば、ほかの国の例で申し上げても恐縮ですが、例えばアメリカですとかそういうところでは、確かに人的控除、これはアメリカの場合には一人当たり三十六万六千円ぐらいになるかと存じますけれども、こういうところについては確かに最低生活費の配慮への性格を有するという説明が一部なされています。ただ、実際はアメリカの場合もそれだけじゃなくて、政策的な配慮から例えば医療費控除、あるいは慈善寄附金控除等、概算控除みたいなものを足して、言わばよく言われる課税最低限みたいな議論になっているわけであります。 したがいまして、一義的に課税最低限が何かの目的だけでできているというものではむしろないんだろうと存じている次第であります。 ○大門実紀史君 確認のために伺いますけれども、政府もかつてはマーケットバスケット方式ということで、食料費、生計費をいろいろ試算して課税最低限を考える物差しといいますか、一つの基準にされてきましたけれども、もうそういう考えは日本の場合はないということですか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 全くないわけじゃありません。先ほどの政府税調答申でも述べていますように、「生計費の観点からのみではなく、」と書いてありますのも、もちろんそれも一つのメルクマールとして入っているということかとは存じます。 ○大門実紀史君 具体的に今、そうしたらマーケットバスケット方式のような何か物差しを調査とか計算されておりますか。 ○政府参考人(大武健一郎君) 具体的には、当方の国税というよりは住民税の方が常に議論になるわけですが、一つの生活保護基準みたいなものも念頭に置いているということかと存じます。 ただ、所得税の場合には必ずしも、従来からもそうでございますが、必ずしもそれだけではない、いろんな要素を勘案しながら、結果として特にいわゆる標準世帯というような形の世帯は必ずしも多くない、いろんな形の世帯になっておりますし、個々人によって医療費控除を受けるとか、あるいはいろんな、老年者控除の問題ですとか公的年金等控除ですとか、いろんな諸控除がばらばらと入っているわけでございまして、そういうものを全体としてとらえていく。 そのときに、以前も先生からの御質問でお答えさせていただいたかと存じますが、諸外国に比べて日本は国民所得比で見ても所得税負担が非常に低いということだけははっきりしていて、これは、負担全体として、やはり基幹税としての所得税というものの言わば在り方を見直さなければならないという一環として、そうした諸控除の在り方も見直させていただいてきているということかと存じます。 ○大門実紀史君 国民所得比に比べて云々は前回申し上げましたが、これはもう景気要因、所得が、そのものが下がっている、この要因が非常に大きいということを指摘したわけですので、今日は同じことを議論いたしませんけれども。 アメリカ、ドイツで、今先ほどアメリカと言われましたけれども、例えばドイツではどういうふうな形でこの課税最低限は決められておりますか。 ○政府参考人(大武健一郎君) ドイツの場合には特にそうなんですが、税制と歳出とが非常に言ってみますと入れ食っている要因がございます。ですから一概にかなり言いにくいんですが、例えばドイツの場合、課税最低限は、例えば生活保障的意味合いから、一人当たり七千二百三十六ユーロという数字でございますが、約九十二万円、これ以下の所得に対してはゼロ税率が適用するということになっているようであります。約九十二万円ぐらい、今の換算レートだとなるかと思います。 ただ、同時に、言わば必要経費的性格を有する概算控除とか世帯構成による税負担能力の減殺を調整する控除というものも含まれるということであります。 それからさらにドイツの場合には、実はそれ以外に児童手当の制度がありまして、これは給付でございまして、ある一定額の児童手当の言わば水準と有利な方を選べるというようなこともございまして、歳出面の措置も勘案されている点がちょっとなかなか難しくて、一概な比較が非常に難しいのかと存じております。 ○大門実紀史君 私の方で調べた話を幾つか簡潔に申し上げますと、例えばアメリカも貧困水準の公式がちゃんと定められておりまして、あのレーガン税制、八六年のレーガン税制のときでさえ、貧困水準未満の低所得者には非課税ということを掲げて、実際に課税最低限をあのレーガンのときでさえ引き上げているんですよね。逆にもう税金を掛けないと、レーガンの時代でさえそういうふうにやっているわけです。いわゆる大金持ち減税と言われたレーガン税制のときでさえ、課税最低限の部分についてはむしろ引き上げているんですね。これは、今申し上げた貧困水準というのが非常にきちっと守られているし、それはもう基本的な考え方になっていると、アメリカでさえと。 ドイツでも、これは九二年に裁判がありまして判決が出ておりますけれども、簡単に言いますと、社会扶助法に基づいて、日本で言う、どう言いますかね、生活保護水準の方々に税金を掛けるというのは違法だというふうな裁判所のきつい判決も出ているんです。 今お聞きしますと、日本の場合はそれよりも全体を見てというようなふうに何か課税最低限に対する考え方が変化しているように思いますけれども、我が国にも生活保護基準というのがあるわけでして、そこのところとの兼ね合いといいますか、どう考えるかというふうなことは基本には置くべきだと思いますが、その辺の配慮はなされておりますか。 ○政府参考人(大武健一郎君) 当然念頭には置かせていただいていまして、先生がお配りいただきましたあの資料の、ここにありますような生活扶助基準という数字もそれなりに頭には置いているということではあります。 ただ、先ほど来何度も申し上げましたように、こうした標準世帯的な発想で税制というのは必ずしもできないものですから、いろんな言わば状況があって、特に高齢化社会にあって、お年寄りに対する税というのは老年者控除を始め上乗せ控除もありますしいろいろあるものですから、こうしたものだけで決めていくということではない、むしろ諸控除の在り方をどう考えるか。これからの自由な選択で、これから人間の生活設計をしていく中にあって、阻害しないような諸控除をどうやって作っていくかということを考えながら、今模索しているということかと存じます。 ○大門実紀史君 私が指摘していることがどうもお分かりじゃないようなんですけれども、私が申し上げているのは、例えばアメリカにおける公的貧困水準とかドイツにおける社会扶助法に基づくとか、日本でいえば生活保護基準と。それ以外の、それ以上いろいろ収入、所得があって、いろんな控除があると、いろんなものがあると、医療費控除もあれば住宅の取得控除もあると、こんな話をしているわけじゃないんです。コアの部分の話を今はしているので、余りあれこれ言わないでいただきたいと思います。 資料をお配りした一枚目、私の方で作りましたけれども、そのコアの部分でどうなっているかというところを、平成十四年度と十五年度でどういう変化になるかを計算して作ってみました。左の方が生活保護基準による年間支給額です。右の方が課税最低限を構成する諸控除ということで、下の方に上段合計、下段合計とありますが、上段合計の数字が平成十四年度水準、下段合計の数字が今回の税制改正を含めて平成十五年度ベースで計算するとこうなるという数字です。 例えば生活保護でいきますと、一番左の欄、生活扶助一級地の一というのは、これは例えば東京です。この場合、四人家族で生活保護の水準というのは、下段の方ですね、今度ですと二百七十一万三千四百四十円というのが、これは今度の予算ベースですけれども、出ております。それに対して課税最低限は、右の方を見ていっていただきますと、今度の改正による改正後ですけれども、計算してみますと、標準世帯で、これは社会保険料控除、給与所得控除を入れたものですが、三百二十五万というふうになります。 ただ、先ほどから申し上げているコアの部分の話でいきますと、いわゆる社会保険料控除、これは税的な要素もあるわけですから、そういうものとか、あるいはサラリーマンの経費であります給与所得控除と、こういうものを除いたいわゆる人的控除だけ積み上げますと、百七十七万というふうに去年に比べて下がります。 ですから、私は、いろいろあれこれではなくて、このコアの部分を最低守っていくと。本当に今この不況でリストラに遭ったり職を失ったり、本当にぎりぎりの生活をされている方がどんどん増えているわけですね、ホームレスの方が増えているのに分かるようにですね。そういう点でいくと、あれこれ税制の議論、考え方が違っても、絶対守らなきゃいけない、アメリカでさえドイツでさえ守っているこの部分の数字は動かしちゃいけないと。ここに税金を掛けるようなことをやってはいけないと、こういう不況だからこそと思うわけですけれども、人的控除でいきますと、百七十七万のところにもうまた下がっていると。 こういうことは、これはもう政治の基本的な役割としてこういうふうになるべきではないというふうに私思うんですが、これは是非、政治の基本問題ですから、塩川大臣に、この数字を見てどう思われますか、御所見を伺えればと思います。 ○政府参考人(大武健一郎君) ちょっと技術的に…… ○大門実紀史君 いいです。後でいいです。そうしたら、塩川大臣にちょっと所見を伺ってからでいいです。是非ちょっと塩川大臣。 ○政府参考人(大武健一郎君) 申し訳ございません。今、先生が言われました生活保護基準による年間支給額、確かにこの額であることは十分存じておりますが、これはミーンズテストを経て、言い換えれば他の資産等のない方でございます。こちらにありますような一般の課税最低限の方というのは資産等もおありになります。もしない場合は、正に生活保護を申請されれば差額は当然非課税になるわけでございまして、そういう意味では、今のように資産とか所得は少なくても大変財産をお持ちの方もいらっしゃるわけで、そういうものを一律所得税という世界で非課税にするのが適当かどうかと、そういうところが議論されているのかと思います。そこだけちょっと補足。 生活保護基準以下であってミーンズテストをクリアすれば、所得があってもそこは言わば非課税になるわけであります。 ○大門実紀史君 そんなことは聞いていないからいいですよ。 ○国務大臣(塩川正十郎君) 課税最低限の問題と生活保護者の問題ございますが、今問題になっておりますのは、失業保険で給付を受けている人と課税最低限の適用あるいは生活保護の問題等総合的に研究しようということで現在検討しておりまして、その結果によってまた御意見申し上げたいというふうに思っております。 ○大門実紀史君 是非、こういう時代ですので、この人的控除の本当に最低限のところについては、税金を掛けないということは守っていただきたいと思います。 次に、企業再生、不良債権処理との関係で企業再生の方の質問をさせていただきます。 今、産業再生機構が国会で大議論になっておりまして、議論の中心は、恣意的な運用にならないこととか、あるいはどの企業を再生するかという点で、どうやって選ぶかと、恣意的にならないということと、透明性を確保するとか、あるいは国民負担につながるんじゃないかというようなところが産業再生機構のところでは大変議論になっております。 ところが、今日取り上げたいのは、もう一つの企業再生の枠組みで、余り知られていないといいますか議論されていないことなんですが、政策投資銀行が企業再生ファンドへの出資というのを昨年からやっております。一昨年ですかね、改革先行プログラム、また昨年の改革加速のための総合対応策ですか、この辺で補正予算も付いて、政策投資銀行が再生ファンドに出資をして、その半分は国民の税金、公的資金を使って国策としてファンドに出資して、ファンドが企業を再生していくというこの枠組みですけれども、これは去年の十二月、カーライルの問題で私質問いたしましたけれども、その後予算も増えたと思いますが、その枠組みと仕組み、簡単に説明をお願いできますか。 ○参考人(小村武君) 私どもは、再生ファンドとして運用している中身は、一つは個別の企業を再生させるためのファンド、それからもう一つは、数多くの企業を救済するためにあらかじめ資金、リスクマネーを集めて専門家が再生を図る、これはマザーファンドと言っておりますが、この二種類が大きく分けてございます。 現在までのところ、十一件のファンドに投資を決定いたしまして、個別のファンドは、申し上げますと、ダックビブレという仙台を中心、あるいは青森にもございますが、今、さくら野百貨店として再生をしている企業とか等々がございまして、四社五件であります。 それから、マザーファンドは六件でございます。 ○大門実紀史君 先に全体の、この前の補正でも付いた予算の枠組みといいますか、全体の出資の枠組み、ちょっと教えてもらえますか。 ○参考人(小村武君) 十三年度予算で産投会計から五百億円の出資をいただき、私どもの自己資金を合わせまして一千億のファンド資金を確保いたしました。十四年度においても同様、産投特会から五百億円、私どもの自己資金五百億円、現在二千億円の資金を用意をいたしております。 ○大門実紀史君 その上で、正確にマザーファンド、つまり一つのファンドが幾つかの会社の企業の再生をやるというそのマザーファンドですね、それと個別ファンドというのは、もうその企業を対象にして再生をやるという区別ですよね。マザーファンドはどれなのか、具体的にちょっと、皆さん、資料の二枚目ですけれども、具体的に教えてもらえますか。 ○参考人(小村武君) あらかじめ先生の方からお配りいただいております「再生ファンドの設立状況」というものがございますが、この中で申し上げますと、最初の日本みらいキャピタル、これは運営会社でありまして、この下の方にNMC2002L.P.とありますが、これと一体のものと考えていただきたいと思います。これがマザーファンドでありまして、これは旧興銀の方が、部長をされた方が設立されたものであります。 その次のジャパン・リカバリー・ファンド、これは東京三菱銀行等とともに設立をしたファンドでございます。 それから、ダックビブレは個別でございます。 それから、エーシークリードファンド、これは主として中堅・中小企業の再生を目的としたファンドでございまして、商社に勤めておられた方と公認会計士の方、大学の同級生が設立をしたファンドであります。これもマザーファンドでございます。 それから、ルネッサンスファンド、これにつきましてはBNPパリバ・ジャパンの子会社を運営する再建ファンドでございますが、これも中堅・中小企業を中心にした再生を目的としたファンドでございます。マネージャーは日本の方でございまして、銀行出身の方でございます。 それから、MKSファンドTとございますが、これは英国のシュローダー・グループから独立をした投資チームでございまして、これは日本のメーカー、自動車メーカーに勤めておられた方が今代表を務めておられます。これも事業再生を行うマザーファンドでございます。 それから、カーライル・ジャパン、これは先生おっしゃったものでございまして、カーライル・グループが組成をするファンドでございます。日本の投資チームは日本人がヘッドを構成をいたしております。これにつきましては、先般も御指摘いただいたハゲタカにならないように、保守的運営をするということで、私ども契約上はっきりさせております。 それから、ダイエーは個別ファンドでございまして、NMCは先ほど申し上げました。 あとは個別ファンドでございます。 以上でございます。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。 これは、マザーファンドは今どんな案件を手掛けているというのは、これは公表できないわけですか。 ○参考人(小村武君) これは、基本的にはファンド自身の判断によるものと思いますが、一つは、これをリスクマネーを集めるものですから、どういう投資家がそこに札を入れているのか、あるいはその出口としてどういうところに投資をするのか、これは私ども、投資家との協議は綿密に行いまして、私どものマニュアルに沿った運営をしておりますが、先ほど申し上げたように、先生御存じもないような小さな中小企業の再生を行う場合があります。こういったところであらかじめそういう企業の名前が出るということは、その企業活動に大変影響を及ぼすのではないか、あるいはリスクマネーが集まりにくくなるのではないか、こういうところがありまして、多くのマザーファンドはこの投資の内容については明らかにしておらないところであります。 ○大門実紀史君 政策投資銀行は、今どの案件を手掛けていてどういう進行状況であるかというのは常に把握されているということですか。 ○参考人(小村武君) もちろんそういうことを怠りなくやっております。 ○大門実紀史君 これは、国民の公的なお金が半分入っているわけですよね。そうなりますと、損失が出た場合、出資をして再生がうまくいかない、あるいはそのファンドが損失を出した場合、これはどこの負担になりますか。 ○参考人(小村武君) このファンドに損失が出た場合には、当然その投資家がその分配当がなくなる、資金が毀損するということになります。 ○大門実紀史君 いやいや、だから、政策投資銀行が出資されて、その半分は国民のお金だと。私は、企業再生そのものは何も悪いことという意味で言っているわけではありませんよ。失敗することもありますからね。その場合、政策投資銀行を通じて半分国民のお金が入ったと、それがうまくいかなかったり、あるいはファンドが破綻したという場合、それはだれの負担になりますか、国民の分というのは。 ○参考人(小村武君) このファンドの、私どもが銀行内に設けておりますこの再生ファンド用の資金は、おっしゃるように半分は産投特会からの出資であります。あとの半分は私どもの収益を積み上げた自己資金であります。当然、半々でそのリスクを負担をしているということでありまして、私どもは政府が御決定になった改革プログラムに沿って、政府が、こういう形でリスクマネーを負担をしてしっかりやれということでありますから、毀損をしないように、その審査能力を信用していただいて出資をいただいたものというふうに了解をしております。 ○大門実紀史君 いや、私も信用していますけれども、うまくいかなかった場合のことを聞いているんです。 うまくいかなかった場合、これ全体で今、あれでしょう、二千億の枠ですね。国民の公的税金の部分で一千億ですね。かなり大きな話だと思うんですね。全部は返ってこないなんて言いませんけれども、その中でロスが出た部分、これは産業の特会でロスが出るということになりますか。 ○参考人(小村武君) 私どもの銀行に出資をしていただいたものですから、私どもの資本がそれだけ減るということでございます。 ○大門実紀史君 そうすると、要するに半分は補正で組まれて、五百億、五百億と。これは産業特会に入るわけですね。それで出資すると。じゃ、もしその中でロスが出ると、産業特会のロスにならないで、政策投資銀行が負担するという、そういうことですか。 ○参考人(小村武君) はい。 ○大門実紀史君 分かりました。 もう一つは、そうは言っても国民の税金が半分入っているわけですから、透明性の確保といいますか、どうも、初めてじゃないかと思うんですね、公的資金がどこにどう使われているかよく分からないというのは。非常に心配といいますか、しているわけですけれども、どういうふうに透明性の確保をしていくというか、後での説明責任も含めて、その辺はどういうふうに報告されるんですか、国民には。 ○参考人(小村武君) 今、事業再生ファンドというのは我が国の金融市場においては非常に未成熟であります。人材もおりません。リスクマネーも不足しております。我が国の投資家は大半が低リスク低リターンであります。こういう世界でなかなかこの事業再生に対する投資家というのは現れてきません。 そういう意味におきまして、私どもは、こういうマーケットにおいて、事業再生ファンドなりあるいはDIP融資、事業再生融資、こういったマーケットをまず作っていかなきゃならない。これは私ども政策投資銀行の役割、重要な役割として、今、先駆者的な役割をさしていただいております。 いずれこのマーケットが成熟してくれば、恐らくいろんな形でその活動状況もまた明らかになると思いますが、少なくとも、私どもが出資をした分につきましては、最終の段階におきまして、イグジットの段階におきまして、これは、この企業が上場をした、そのときの配当は幾らというようなものが、最終的にこのファンドの資金拠出を行った段階におきまして明らかにしてまいりたいと思っております。 ○大門実紀史君 私思うんですけれども、政策投資銀行が日本のファンドを育てるために乗り出しているという話ですけれども、そんなことで育つのかなと。本当に、何といいますか、そういうのはもうそれこそ民間に、民でできることは民間に任して、政策投資銀行が一生懸命やったってそんなふうに育つようなことではないと思いますし、やっぱり公的資金が入るわけですから、結果だけ報告するというのでいいのかどうかという疑問をちょっと申し上げておきたいと思いますが。 この一覧表の中の一番下にあります新潟原動機、新潟トラシス、これは新潟鉄工所破綻の関係のところだと思うんですが、この二つは企業再生ファンドではなくて個別の企業だと思いますが、個別の企業に出資をしていいということにはなっていなかったと思うんですが、いかがですか。この三枚目に、「「企業再建ファンド」への出資に関する基本的な考え方」とありますけれども、これはファンドに対する出資で、あくまで、個別の企業に出資していいとはどこにも書いていないんですが、これはどういう基準でこの二つに出資されたんでしょうか。 ○参考人(小村武君) 事業再生ファンドを形成するときの最大の目標は、一つはリスクマネーを集めること、もう一つは、事業を再生するときに、既存の株主に退却をしてもらい、新たな株主を集めることでありますが、その際、てんでばらばらに株主が意見を申し述べ、その企業が再生をできなくなる、緊急性に間に合わないというときに、あらかじめファンドを作って株主間で意思の統一をし一体的行動を取ると、これが事業再生ファンドの最大の目標だと思います。 新潟鉄工の場合には、私ども子供のころ、新潟鉄工が会社更生法を受けるというのは夢にも思いませんでした。しかし実態は、そういう状態になったときに、まずDIP融資、事業再生融資を行い、その次に新たなスポンサーを探しました。幸い石川島播磨重工というところが、新潟鉄工そのもの、会社全体ではないんですが、原動機だとか車両とか除雪、こういった面において技術が優れているということで、スポンサーとして名を挙げてきたわけです。たまたま、この新潟鉄工がスポンサーでありリスクマネーの一部を供給してくれる、この、私どもと二社しかございませんでした。 その際に、改めてファンドを作るというよりも、ファンドと同じ効果の株主間協定というのを結びまして株主として一体的な行動を取り、私どもがこの企業の再生を果たした段階においては株主から離脱をしていくと、こういう約束をいたしまして、実質、私どもはこれを、ファンドと同じような機能を持たし、たまたまファンドの手続、信託銀行に資金を拠託するとか、そういう手続的なコストの掛かる部分を省略をし、実質的にこれを私どもがファンド形成をいたしたということでございます。 ○大門実紀史君 私、申し上げたいのは、新潟鉄工所、私も下請関連調べに行きましたので、大変な技術力のあるところですから、いい技術を残して再生してほしいと思うんですが、ちょうど冒頭申し上げましたとおり、産業再生機構の問題で、どこの企業を再生するのかとか、どこの企業を、選ぶわけですよね、閻魔大王と言われていますけれどもね、非常にそれがシビアになっているときに、政策投資銀行だけぽこっと、この企業再生ファンドに対する考え方にも書いていない形で、今言われたように株主間協定ですか、あれこれ言ったって、要するにこれに書いていない形ですぱっと一つの会社に、これ三十億と十億ですよね、出資されているのはね、すぽっとお金入れてしまうと。片やどこの企業を再生するかで大議論になっているときに、この枠組みでいったらすぱっとお金入れてしまうと。それがいかがなものかというふうに御指摘をしているわけなんですね。 ですから、どうやって新潟、この二つがどうのこうのという意味じゃないんです、どうやって具体的にこの二つが、だれが決めたのか、どこに説明して決めたのか、国民の税金が三十億、十億でしたら十五億と五億入っているわけですから、そういう説明責任といいますか、この部分に関しては、先ほどのマザーファンドの場合は、今、手掛けているのを言えないというのはありましたけれども、少なくともこの個別企業はっきりしているわけですからね。 しかも、この今までの枠組みにない形での出資ですから、これはきちっと説明されるべきだし、今後こういう個別企業への出資の場合は、大事な再生の場合もあると思いますので、きちっと説明責任あるいは基準を設けるということをやらないと、ぽんぽんぽんぽん、政策投資銀行だけ一千億の枠があるからってあっちこっちやっていったら、これでもう話がぐちゃぐちゃになっちゃいますので、そういう基準なり判断なり説明責任を果たすということを何か検討される必要があると思いますが、いかがですか。 ○参考人(小村武君) 新潟鉄工の場合は、皆さん御存じのように一企業ではありません。これで新潟経済の本当に三分の一ぐらい破壊されるぐらいの大きな社会的インパクトがありまして、私どもは、この一企業に対して着目するんではなしに、新潟経済がどうなるかということ。それから、私どもは、これ、ごらんのように、新潟鉄工を救済しているんではないんです。新潟鉄工と違う形で事業を再生しているんです。そして、雇用を守り地域経済を守ると、そういうことでありまして、企業再生という言葉を使っておりません。 したがいまして、私どもは絶えずそういうことを御説明申し上げておりますが、なかなか御理解いただけない面がありますが、これからそのPR等についてはきちっとしていきたいと思いますし、こういう機会を与えていただいて大変有り難いと思っております。 ○大門実紀史君 そんなことを説明するために来てもらったんじゃないんですよ。基準をどうするんですかと。これから個別企業に出資していく場合の基準とか説明責任どうするんですかと聞いているんだから。何も言えないんですか。大事だからやったというだけなんですか。後からそれを言うだけで済むんですか、国民の税金半分使っておいて。済みませんよ、そんなことで。ちゃんと答えなさいよ、あなた。何を言っているんだ。 ○参考人(小村武君) 私どもの活動については、ITのいろんな技術を駆使しながらPRに努めております。 個別ファンドにつきましては、責任を持って、考えられるあらゆる手段を通じてPRをしていきたい、説明をしていきたい、こう考えております。 ○大門実紀史君 またやります。 終わります。 |
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