■2001年10月18日 財政金融委員会質問 |
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。 今もお話がありましたけれども、この二月から八月にかけての量的緩和の効果といいますか、評価について最初にお尋ねしたいと思いますが、今の山本議員に対する御答弁にもありましたが、とにかくマネタリーベースは一四%以上伸びているけれども、サプライは四%ぐらいですかね、銀行の貸し出しはマイナスが続いているということで、要するに、じゃぶじゃぶと言われましたけれども、資金がだぶついて金利も下がっているんだけれども貸し出しが減るというふうな異常な事態だと私は思うんですよね。要するに実体経済に全然波及していないと。 この点で言いますと、私、速水総裁のいろんな記者会見を読ませていただきましたけれども、既に六月とか八月の時点で、日銀が幾ら資金を供給しても実体経済に今は回らないんだというような発言をずっとされてきたと思うんです。そういう点でいきますと、この十月の十二日にも量的緩和は維持するというふうに出されておりますが、要するに余り効果がないということですね。総裁自身も前から知りつつといいますか、わかりつつやってこられたような気がするんですが、それでもなおまだ量的緩和を維持しようというその理由といいますか、効果がないと思いつつやる理由をお聞かせいただきたいというふうに思います。 ○参考人(速水優君) 先ほども山本先生に対してお答えを申し上げましたけれども、効果がないというわけではございませんので。それはやはり企業やそれから政府もそうだと思いますけれども、国債金利というのは、かなりたくさん発行しておりますだけに国債の金利だけでも大変な金額になっているわけで、そういう全体の金利コストが非常に低いということは、これは企業が新しい仕事を始めたり投資をしたりするのにはプラスになります。 しかし反面、先ほど申し上げた、一般庶民が、金利が低くて、貯蓄をたくさん持っていてもわずかな利回りしかないというようなことも、お金を持っている方から、貸している方からは、債権者からはそういう文句は出てくるわけですけれども。 そういう低い中で、とにかく財政の効果が出、そして民間の需要が動き出さないと経済の成長というものは期待できないわけなんで、ケインズなんかが言っている流動性のわなといったような言葉がありますが、そういう状態に近い状態に今なっていることは私どもも認めざるを得ないと思うんですね。お金は随分出しているけれども、それが金融システム以外のところへ浸透していって物やサービスの産業といったようなものがなかなかふえていかないし、動き方も非常にスローである。そういうものに刺激を与えていくために金融だけは十分出して、政府の方の国債の負担も減るだろうし、企業の設備投資や新しい産業を始めようというときにはプラスになっていくに違いないと、そういうことを期待して金を出しているわけでございますから、その辺は、うまく完成されて私どもの出していく金がそういう新しい構造改革へのプラスになって初めて金を出した意味が、効果が満たされていくというふうに思っております。 これをこのまま続けるのかということですけれども、今の状態をさらに締めていくといったようなことは現状では難しいと思います。ただ、構造改革というものでもこれが実っていくためには、先ほど申し上げましたように、競争で強い者が伸びていくというようなことをやっぱりやっていかない限り経済の成長というものはできていかないと。そこのところはよく考えていかなきゃいけないことだと思います。 ただ、一般の庶民の先行きに対する安定感というものがこれまた非常に大事なものであって、先行きに不安を持っている限り、なかなか構造改革なんというものは進むものでないと思います。その点は、私も諮問会議には出席させていただいておりますけれども、総理も非常によく気を使って、市民の先行きに対する不安感をなくすということが構造改革にとっては非常に重要なファクターの一つであるということを言っておられます。 そういうことが動き始めているということが私は大きな前進だと思っておりますので、これを何としても実現していただきたいというふうに思っている次第でございます。 ○大門実紀史君 その議論はまた財務大臣等とやりたいと思うんですが、何が今の需要不足の原因で、どうすればいいかと。ただ、一つ言えるのは、先ほどもありましたけれども、今その資金をじゃぶじゃぶ供給しても、不良債権処理ということで銀行がかなり審査を厳しくして、先ほどありましたけれども、黒字の中小企業にもなかなか貸さない、ベンチャー企業にも貸さないという状況がありますので、構造改革をやればと言いますが、その中心の課題である不良債権の処理によっても今資金がとめられているということもありますので、それだけではないということを御指摘したいと思います。 もう一つは、そうしたらそのお金はどこに回っているかということで、先ほど、国債に回っていると。これも調べてみましたら、相当この間銀行が国債を買っていると。貸し出しに回さないで一生懸命国債を買っているわけですよね。これは異常な数字になっていまして、細かい数字はちょっと時間の関係で全部言いませんが、要するにこの二、三年で二、三倍国債の購入量がふえているということが言えるというふうに思います。 大体、このこと自体、実体経済をよくしようと思って量的緩和をやって資金を供給すると。ところが、銀行は貸し出しに回さないで一生懸命国債買っていると。このこと自体、何といいますか、銀行の本来果たすべき役割といいますか、社会的責任も含めて異常な事態だというふうに私は思いますが、この点、簡潔に、どう思われるかお答えいただきたいと思います。 ○参考人(藤原作彌君) 先生御指摘のように、企業の資金需要が弱くて銀行の貸し出しが減って、その銀行が国債の保有ということで運用しているというのは事実でございまして、それはどういうふうな数字をたどってきたかということも、かなり大きな数字であるという御指摘も事実でございます。 ただ、私どもとして、そういうことの銀行のビヘービアがいいか悪いかとかというような価値判断はここでは避けたいと思いますけれども、この現象がどういうことを将来もたらすかというリスクについては十二分にウオッチしておる次第です。 ○大門実紀史君 今言われたリスクの問題でいくと、要するに、一生懸命量的緩和をやっても資金が回らないで、銀行が買ってそこに、副作用と言ったらなんですけれども、非常に危険性といいますかリスクが今増大しているというふうに、全体でいくとそうなると思うんです。その点で、量的緩和をこのまま続けますかという意味では、副作用を生んでいますよという意味で、銀行が抱える国債保有のリスクについて御質問したわけですけれども。 これもちょっと時間の関係で結論だけ申し上げますと、格付の問題で、国債の格付が下がると言われておりますね、イタリア並みになるということを言われておりますし、二〇〇五年からですか、新BIS基準でいきますと、シングルA以下になると二〇%をリスクとして考えなきゃいけないというようなことになってきますと、今、一生懸命銀行が国債を買っていますけれども、そのまま持ち続けますと、当然、外国の投資家がそれを売るだとか、あるいは銀行自身の自己資本比率が下がるとか、あるいは銀行自身も不良債権処理やいろいろなことで耐え切れなくなって国債を売るとかいうことで、国債が急落していくというふうな可能性の方が高いわけですよね。こういう危険性もあるようなことが今この量的緩和の中で、もちろんきょうは時間の関係で触れませんが、インフレターゲット論というのは私はもうとんでもないと思っていますけれども、今、日銀がやられております量的緩和でさえ大変な副作用、危険性を生んでいるというふうに私は思いますが、その点いかがでしょうか。 ○参考人(増渕稔君) ただいまの御指摘は、主として民間の金融機関に国債保有の増加ということで大きなリスクがたまっているだろうと、こういう御指摘だったと思います。 御指摘のとおり、国債の保有額を中心に金融機関の債券保有額が大きくなっている。その結果として、仮に将来長期金利が上昇する、債券価格が下がるというようなことがあれば、それが損失となって表面化する可能性がある、そのリスクがあるというのはそのとおりでございます。 しかしながら、私どもが金融機関の経営について調査、ヒアリング等しているところによりますれば、それぞれの金融機関はそれなりに国債保有の満期構成を短期化する等々のリスク管理を相当行っております。そういう意味での管理を行っているということに加えまして、将来どういう場合に長期金利が上昇するのか、そういう可能性があるのかといいますと、それは格付引き下げというようなことをきっかけにして債券価格が下がるというような、そういうことがあればそれは大きな問題ではございますが、一般的には、景況、経済情勢が好転しまして、そういう中で長期金利が上昇する、これが一般的であろうと思います。そういう場合には当然、金融機関の業務としてはほかの面、貸し出し等で収益が上がる、あるいはそういう場合には株価も上昇する、そういうプラス要因もありますので、必ずしもマイナス要因だけを考える必要はないと思います。 もとより、私がちょっと触れましたように、国債の格付が下がるというようなことでの長期金利の上昇ということになれば、それはマイナスの方が大きく出てくるということになりますので、そういう国債の格付が下がるというようなことのないようなしっかりした財政のあり方ということも当然必要でありますし、そのように財政の方はされているというふうに認識をいたしております。 ○大門実紀史君 少し市場の評価に比べて甘いのではないかというふうに思いますが、日銀自身の国債保有もこの間かなりふえておりますよね。このことをどう考えるかというのは難しい面あると思いますけれども、どういうんですか、日銀自身のバランスシートといいますか、日銀自身の自己資本といいますか、信頼性といいますか、財政の健全性といいますか、そういう面からいくと、日銀がどんどん国債を保有していくということはやはりいい方向ではないというふうに私は思いますが、これも簡潔に考え方だけ教えてもらいたいと思います。 ○参考人(藤原作彌君) お答えいたします。 日本銀行は、先ほどもお答えしましたけれども、長期国債の買い入れをおおむね銀行券の伸びに対応させるという方針をとっております。これは、長期国債という資産を銀行券という負債に対応させてバランスを保つという考え方からです。 したがいまして、現在、日本銀行は、円滑な資金供給を図る上では、必要な場合にのみ国債買い入れを増額するということにしております。これも先ほど御説明したとおりです。ですから、それは、銀行券発行残高を長期国債保有額の上限とするという歯どめを設定しているわけです。それから、中央銀行の資産の健全性の確保という観点からは、金利の上昇に伴う国債の価格変動に対応できるよう、日本銀行としましても引き当てを十分に行っております。 日本銀行としましては、今後とも、中央銀行というのは信頼、信用が一番大切ですので、バランスシートの管理というものには十二分に気をつけてまいりたいと思います。 ○大門実紀史君 国債の問題はまた別の機会に引き続き、いろいろ疑問もありますので、議論させてもらいたいと思います。 インフレターゲット論のことで議論がございましたけれども、我が党としては非常に問題のある考え方だというふうに思っております。そもそも、何といいますか、この導入論の動機が不純じゃないかと。大体、ポール・クルーグマンさんですか、実質金利が下がれば需要も喚起するというのが言われていますけれども、それはどうなるかわからない話で、はっきりしているのは、国の長期債務残高とか企業が抱える過剰債務とか、これはインフレになったら減ると。それを目指しているような、非常に問題だなというふうに思っているところです。国民生活にとっては大変な被害をもたらすと。 これについては、かなりまた自民党中心に強硬に、日銀法を改正してでもそういう方向にさせようという動きがあるようですが、私は日銀に頑張ってもらいたいなと、断固抵抗してもらいたいなと思いますが、ただ、流れから見ますと、どうも日銀はそういう流れにこたえて量的緩和や、金利から量にしたり、だんだん引きずられているような気がして心配もしているわけです。 日銀法改正が出てくるという話もありますが、そのターゲット論についてもう一度総裁の決意、考え方をお聞きしたいと思います。 ○参考人(速水優君) 御心配いただいて大変感謝いたしますが、私は、先ほどからも申しておりますとおり、インフレターゲット論というのは、今の時点でこの日本で採用しようというのは、中央銀行の人だったらだれに聞いても、そんなむちゃなことと言うと思うんですね。それは現にグリーンスパンもそうでしたし、この間会ってきたヨーロッパ中央銀行のデュイゼンベルグも、それは今の状態でやることとは違うじゃないかということを言っております。 それは一つの例でございますけれども、今のようなデフレ現象の中でインフレターゲットをつくって、そのターゲット自体もどういう数字をお出しになるのか、私ちょっと今では非常に疑問に思いますけれども、そういうものに合わせるように金を出していけというのは、これは非常にむちゃな、難しいことだと思うんですね。 それから、そのことによって必ずしも、私どもに課されている物価の安定を通じて経済の安定的な成長を図るという日本銀行の目的、理念というものを達成する方法ではないと思います。そういう意味でも、今の時点でこのインフレターゲットをおつくりになっても、私どもは非常にそれをうまく運用して操作していくという自信もございません。どういう数字が出せるかということ自体も非常に難しいと思うんですね。したがいまして、私どもは、この時点でインフレターゲットを採用することには反対である。ただ、今の準備預金のターゲットをつくって、それを見ながら金融の流動性の供給を調整していくと。 ただし、今の消費者物価が前年比ゼロを超えて安定していったときには今のこの制度はやめますよと、そのときまでは今の制度を続けていくつもりですということをステートメントで言っておるわけで、それがいつ来るかというのは、内外でいろんな事態が起こっておりますだけに、それともう一つ、今の構造改革その他の政策の効果がどのような形で効果をあらわしてくるかといったようなことも関連しますし、そういう事態に早くなってほしいという気持ちは非常に強いわけで、それまではがまんをしてこの今の金融調整のやり方を続けていくしかないというふうに思っています。 もちろん、そのときそのときの状況に応じて政策の小手先をいろいろ変えていくことは、十分私どもの責任だと思ってやってまいりますけれども、基本的に、そういったターゲットが出てきても、非常にこれは難しいことだというふうに思っております。 私は反対でございます。 |
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