■2001年4月10日 財政金融委員会質問 |
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。 私は、税理士法並びに緊急経済対策について質問したいと思いますが、最初に税理士法について質問をいたします。 今回の改正は、税理士会の自主性の確立あるいは税理士の立場を尊重するという点では幾つかの改善点が含まれているということはそのとおりだと思います。ただ、第三十五条関係の書面添付に係る改正というのは重大な問題点を含んでいるんではないかと私は思います。ほかの改善点を御破算にしてしまうような問題が含まれているんではないかということを前回指摘させてもらったわけです。 そもそもこの書類添付制度といいますのは、二十年前にも大議論があったわけですが、二つの問題点があると。一つは、税理士さんが事実上税務署のかわりに納税者を審査といいますか監査をして、書面といいますのは要するに監査証明書みたいなものですね、保証書みたいなものをつけると。ですから、本来、税務署がやるべきことを税理士さんに代行させるというふうな趣旨があるという点で一つ問題だと思いますし、もう一つは、経済的な理由で税理士さんに頼めない方々がたくさんいらっしゃるわけですが、そういう方は書面添付ができないと。 そこで、もしも税務行政上の差別が生まれた場合、やはりこれは納税者の権利といいますか、不公平、不平等を生むものだという点で二つの問題点がそもそもこの書類添付制度にはあるということを申し上げたいと思いますが、今回の改正点の中の、調査の通知前に書面添付をした税理士さんの意見を聞くと。これは、文面だけ表面的に見ますと、意見を聞くわけですから、地位の向上といいますか、今までよりは尊重しようということに見えるわけで、我が党もそういうふうに最初は承知をしていたわけですが、四月五日の私の質問に対して国税庁の方は、ただ意見を聞いて疑義がなければ調査終了といいますか、すなわち実地調査は省略するというようなことを答弁されたわけです。 私、変だなと思いまして、その後幾つかの税理士会の方々あるいは関係団体の方々にお聞きいたしましたら、実は今回の改正の目玉というのはこの調査省略なんですよということをざっくばらんにたくさんの方が教えてくださいました。つまり、今回の書面添付制度に係る税理士さんの意見を聞くという部分には、その次に調査の省略というのが実は想定されているんだということをお聞きしましたし、やはり前回の先週の質問で大変疑問を感じたところが実態としてそういうことだというのを確認しました。 まず、この改正の背景と目的について質問したいと思いますけれども、大武次長は、TKCの書面添付実践研修会の中で講演をされておりますけれども、その中でも、国税庁の職員はこれからふやせない、ところが申告者数はどんどんふえている、したがって国税庁としては重点的な調査をするしかない、ついては、はっきり言ってこの書面添付制度を通じて税理士の皆さんに協力してもらいたい、皆さんが事前にチェックをして審査をしてもらいたいというふうなことを述べておられるわけです。 ただ、前回の大武さんの答弁の中で、現行の制度というのは〇・六%程度しか実施されていない、つまりほとんど書類添付はされていないと。ですから、ただお願いしても進まないというところで、先ほど言いましたけれども、今回の改正で、意見を聞いて疑義がなければ調査を省略することもにおわせるといいますか、あり得るということをメリットとして、国税庁として書面添付制度を広げたいと。 ずばり聞きますけれども、今回の改正の目的はここにあるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 そこにメリットがあるというわけでは全くありません。 この今回の改正制度自体は、やはり帳簿書類の調査を前提に、日時、場所の通知に先立って行われるもので、税務に関する専門家としての立場を尊重して付与された税理士の権利の一つと考えているわけでございまして、意見を聞いたことによって直ちに帳簿書類の調査を行わないということではございません。 ただ、先回も申しましたとおり、税理士から意見を聞いたことによって疑問が解決し、必要がないと認められたときにはあえて帳簿書類の調査には至らないこともあり得ると、そう申し上げたわけでございます。 ○大門実紀史君 それは前回お聞きしたんですが、要するに、疑義がなければ調査省略しますということなわけです。 個別のお名前を出すわけにいきませんけれども、幾つかの税理士会の幹部の方にお聞きしますと、今回の改正によってこの書面添付制度というのは、飛躍的にかどうかわかりませんが、普及が進むというふうな認識を持っておられます。既に税理士さんの間では、本当に国会の議論だけがおくれているようなところがありますが、税理士さんの間には、この書面添付制度の中の調査省略ということが想定されているということが一番の今回の目玉なんだ、そういうことなんだというふうにかなり広まっているわけですね、実態として。 その中で、今申し上げたように、書面添付制度は、今回そういう調査省略というメリットをつけることによって普及する、あるいは今回の改正によって、つける書面の内容を今幾つかの税理士会で検討をされていると。これは、改めてなぜ検討するのかといいますと、調査省略してもらえるような、調査省略にたえ得るようなものを、ですから、今までより相当内容の詳細なものを今準備しているんだということまで、既に実態として税理士会の方々はそういうふうに今とらえられているわけなんですね。 こういう点でいきますと、もう調査省略を前提に現場は動き始めているというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 先ほども申しましたとおり、今回の制度自体、やはり税務に関する専門家としての立場を尊重して付与された税理士の権利の一つと考えているわけでございます。 今回の制度で、税理士の申述というのは、申告書作成に関する計算事項、審査事項等について税務に関する専門家としての立場で行うものでございます。したがいまして、税理士に対しては意見を申述する機会が与えられるだけで、その後において帳簿書類を調査するか否か、あくまでも税務当局が判断するということでございます。 ○大門実紀史君 全然かみ合った答弁を先週もされていませんけれども、もう少し聞いていることにすぱっと自信を持って、何か隠そうとしないではっきりと答えてもらいたいんですね。 そうやって、税理士会等がもうその気になって、調査省略があるということで、それにたえる書面までつくろう、これでオーケーしてもらえるようなものを事前にそろえようということで、その内容まで検討に入っていると。こういうふうに考えますと、私は思うんですけれども、あらかじめ国税庁とそういう税理士会なり団体との間で、この意見を聞いた後の調査省略に関する話し合いなり何らかの了解があったとしか思えないんですね。国税庁が言わないのに勝手にそういう準備をするわけないじゃないですか。何か話し合いがあったんじゃないですか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 全くそのような事実はございません。 ○大門実紀史君 去年の一月の税理士制度に関する勉強会における論点整理メモというのがありますけれども、これは、税理士会の皆さんの要望を国税庁がいろいろ聞いて、今回の改正に向けて意見聴取なり議論をされたということで、内容は別に悪いものばかりじゃありません。いろいろ前進的なものもあります。 ただ、この中にも、やはり調査省略してもらいたいというふうな要望も確かにあるわけですよね。これについてどうお答えになりましたか。 ○政府参考人(大武健一郎君) あくまでも課税権というのは国税庁サイドにありますから、出された資料で、いわゆる我々が調査の過程で収集しておりますものと明らかに突合しないような場合、それは当然のことながら調査をさせていただきますし、先ほども申したように疑問点が解決された場合のみ、いわゆる調査はそれで終わるということもあり得るということかと存じます。 ○大門実紀史君 そうすると、疑義がなければ調査省略もあり得るということを述べられたということになりますよね。今の答弁だとそうなりますけれども。 それで、もう一つは、書面添付を今まで一生懸命やってこられた団体もあるわけです。先ほどから名前を出していますが、TKC全国会というのがございますけれども、ここの会長さんで、今度税調の委員になられるということで会長をおりられるのかどうかわかりませんが、松沢会長がこれはもうインターネットに会長の意見ということでずっと堂々と出しておられるわけです。一つは、昨年六月の会報の中で松沢会長がおっしゃっているんですけれども、税の専門家である税理士が責任を持ってチェックした申告書ならば調査するまでもないというのが書類添付制度の本質であると。書類添付すれば調査するまでもないんだということを意見としておっしゃっています。さらに、ことし三月の会報では、今回の改正で我々の多年の要望がいよいよ実現するというふうにもおっしゃっているんですね。 私、思うんですけれども、書類添付を税務署の意向に沿って一生懸命やってきた団体というのは、先ほど言いましたけれども、何のメリットもなければ、何でこんなことを一生懸命やらなければいけないんだと。そういう点では、やっぱり何かメリットをつけてほしいという当然の意向があったのではないかというふうに思いますし、大武さんは何度もTKCでは講演されていますけれども、こういう書類添付推進団体の意向が今回の改正に反映されているのではありませんか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 我々税務当局としましては、やはり税理士の方々が、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという使命に基づいて税理士業務を適正に実施していただくことは重要なことだとまず認識しています。 税理士の方々がそれぞれの業務を適切に処理していただくことは大切なことで、まさに今回の書面添付なりを通じて申告書の正確性を高めていただくということは、国税庁の立場からは、税務行政の一層の円滑化、簡素化が図れるということで期待をしているということで、我々としても推進したいというふうには思っております。 さらに、税務行政を執行していく上で調査情報は極めて重要だというところから、帳簿調査に先立って、それらを実際に調整、審査された税務に関する専門家である税理士の方々の意見を聴取することは、調査事務の合理化にもつながり、ひいては適正な税務執行の確保にもつながる、そういうふうに考えているところでございます。 ○大門実紀史君 私が聞いているのはイエスかノーかのことばかりですから、ノーならノーとおっしゃってもらえばいいので、もう説明は結構ですから、聞いたことに端的に答えてください。 もう一つは、私が冒頭言いましたとおり、これは言い方がどうかというのはありますが、税理士さんを税務行政の中に組み込むといいますか、協力機関化といいますか、悪く言えば下請化していくというようなことに、それをさらに進めると。今回の、意見を聞いて、調査省略、書類添付制度を普及させるという意味で、さらに下請化が進むというふうに思います。 実はこの下請化という問題では、大武さんばかり名指しにするとあれですが、大武さん自身も、今までの書面添付が進まなかった理由の一つとして、これも同じくTKCの講演の中ですけれども、こういうふうな書面添付制度というのは、税理士さんの中には、これは税務署の下請をやらされているんだ、そういう意識もあってなかなか皆さん乗り気になってくれないんだということを大武さん自身も認めておられます。そういう意味では、今回の改正で書面添付が普及するということは、大武さん自身も認められているとおり、税理士さんの下請化をさらに進めるということになるのではありませんか。端的に答えてください。 ○政府参考人(大武健一郎君) 下請機関となることにはならないと考えております。 ○大門実紀史君 そうはいっても、要するに協力してもらう、さらに協力してもらうことを進めるという点には間違いないというふうに思います。 次に、納税者間の不公平の問題なんですが、これは前回、先週の質問で私、こういうふうに調査省略が想定されているとすれば、税理士さんに頼んで書面添付をしてもらった納税者と、経済的な理由で、今不況で大変ですから、個人の規模と同じぐらいだったら自分で計算する法人だってあるわけですし、個人の事業主もいるわけですが、税理士さんに経済的な理由で頼めない方との差別がますます生まれませんかというふうに先週お聞きしたら、まともな答弁をなさらないで、税務署側としては同じことだということしか言われませんでしたけれども、納税者にとって差別が生まれるんじゃないですか。納税者にとってどうなんですか。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 事前に税理士に意見を聞いたとしても、そのことをもって帳簿書類の調査をしないという制度ではありませんので、差別をしたことにはならないと存じます。 ○大門実紀史君 どうしてもちゃんと答えていただけないんですけれども、納税者にとっては、調査に来られるということは、何もやましいところがなくても相当の精神的な負担になるわけですよね。あるいは仕事を休まなきゃいけないとか、物理的にも負担になります。まじめに申告している人でも、書類添付をしたからそれを免除されるといいますか、税務署が実地調査に来ないという方と、片や来るわけでしょう、わからないからと言って。これは当然納税者にとっては違いが生まれるんじゃないですか。もうちょっとはっきりと聞いていることに答えてくださいよ。 ○政府参考人(大武健一郎君) 税理士に税務代理を依頼した納税者は、直接税務当局に申述する手間や時間を省くことが可能となる場合もありますが、税理士関与の有無によって差別をしているということではないということかと存じます。 ○大門実紀史君 よくわかりませんけれども。 もう一つは、非常に先週から国税庁の答弁を聞いていて感じるんですけれども、税理士のあるべき姿といいますか、また大武さんの講演録の話をして恐縮ですけれども、大武さん自身も、これからの税理士というのは二つの選択を皆さんしなきゃいけないということをおっしゃっていますよね。一つは、公共的使命に沿って生きていく税理士さん。公共的使命が何なのかというと、当然その会議の趣旨からいって書面添付をちゃんとやっていくということになると思います。書面添付の実践会議での講演ですからね。もう一つは、そうではなくて、WTO、規制緩和を含めて外国の会計事務所なり法律家が入ってくる、そういう中で納税者の代理人になっていくという道も二つの選択の一つにはあると。だけれども、皆さんそうしちゃいけないよ、公共的使命に生きてほしいというふうなことを講演でおっしゃっていますけれども、そういう講演をされましたよね、大武さん。確認しますが。 ○政府参考人(大武健一郎君) お答えさせていただきます。 現行法一条にそのように書いてあるということかと存じます。 ○大門実紀史君 もういいです。 税理士法に関しては最後の質問ですのでぜひ宮澤財務大臣にお伺いしたいんですけれども、税務署のいろいろ補助なり協力をするのはいいけれども、納税者の立場に立って代理人的な仕事をしてはいけないというふうなことだとすれば、こういう考え方こそ、税理士法の第一条の公正、独立な立場に私は触れると思いますが、大臣としていかがお考えですか。 ○副大臣(若林正俊君) お話でございますけれども、第一条にございますように、「独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と、まさにそれに尽きると思うんです。ですから、税理士さんが、納税者の立場のみ、それの便宜、有利になるということで代理人としての仕事をするというわけにはまいらない。そういう中立、公正な立場が税理士自身に要請されているものと、このように考えております。 ○大門実紀史君 ですから、私が申し上げているのは、やはり課税官庁のかわりの仕事なんかやるんじゃなくて、課税官庁とも距離を置いて中立にやるべきだと。ところが、そうではなくて、課税官庁の下請といいますか、協力をしてくれということを国税庁の幹部がこうやっていろいろなところでしゃべって回っているわけですから、違うんではないかということを申し上げたまでです。 もういろいろ何度質問させていただいても疑問点が晴れませんので、この三十五条関連の、意見を聞くけれども疑義がなければ調査を省略するということは否定されないわけですから、これが加わることによって大変な大きな問題になると。つまり、何度も申し上げますが、税理士の下請化と納税者の不平等を生むという問題点を指摘しておきたいというふうに思います。 次の質問に移ります。 緊急経済対策の関係でお聞きをしたいと思いますが、この対策のまず最初に「基本的考え方」というのが述べられております。これは改めて読みませんけれども、要するに、企業部門が復調したんだけれども、個人消費とか家計部門が復調していないというふうなことが冒頭に、最初に「景気の現状」の中で書かれているわけです。 これは、我が党が前から指摘してきたことではありますけれども、宮澤大臣にお聞きしたいんですが、「景気の現状」の中に書かれている認識という点ですけれども、なぜ企業部門の復調が家計回復につながらなかったのか、そういう点ではどういうふうにお考えでしょうか。 ○国務大臣(宮澤喜一君) これは少し時間がたってから検証いたさないと定かにはわからないことでありますけれども、さしずめ私が感じておりますことの一つは、いわゆるIT革命というものが我が国でも進行しております。これは企業側における革命であると同時に労働側における革命でもありますので、アメリカの場合にはレイオフをしてしまうということで片づきますが、我が国はそういうことができません。したがいまして、企業は、ともかく苦しんだ末に、昨年の初めごろから非常に活発な経済活動に入り、設備投資も始めました。普通ならそれが、不況回復時に家計にそれがはね返って国民消費がふえるということですが、大きなIT革命であるがゆえに、労働側はなかなかこの労働の変化というものに簡単に対応できない。雇用関係がやはり変わってくる。終身雇用であるとか年功序列型とかいうようなことが恐らく変わりませんとIT革命というものに即応していけないという問題があります。 そもそもIT革命とは、人間がやっていることを機械がやることだと、グリーンスパンはそう言うぐらいでございますから、労働にとっては非常に難しい問題である。それでありますがゆえに、企業がもうけましても、それがすぐに賃金増にはつながらない。労働側にむしろ雇用の問題があるものでございますから、思い切った賃金要求ができないといったような、そういう状況が進行しつつある。つまり、簡単に申しましたら、やはりIT革命というものはそれだけ雇用側に非常に大きな変化を要求するに至っておる、それが一つであろうと思います。したがって、これは時間がかかれば必ず、企業側のそういう好調は雇用にも賃金にも反映していくはずであります。ふだんより時間がかかっておるということではないか。 もう一つは、企業は、確かにビジネス活動が盛んになり、経常利益も恐らく何十%という増収になりつつありますが、普通ですとそれは賃金なりなんなりにかなり反映されるはずですが、企業そのものが過去における古い設備あるいはそれに伴う債務を相当大きく抱えていまして、これもやっぱりその一つの、今までの経済から、ニューエコノミーとは申しませんが、そういうものに伴う、殊に我が国の場合は不況が加わりましたから、したがって、企業はもうけた金で借金を返すということ、当然でございますけれども、しかも労働側がそれを強く要求できないということがありますので、この点からも、企業の好景気というものがなかなか家計に反映しないということがあるのではないか。 これも時間の問題だとは思いますけれども、従来のパターンとは違って、不況回復のときにまず企業活動が起こり、次に家計が潤うという、そういうパターンが同じスピードでは進行していないのではないかと。 これはさしずめ私どもが思っていることでございまして、後に何年かたちまして検証しなければ正確なことは申し上げられないかもしれませんが、私はそう考えております。 ○大門実紀史君 いろいろ御答弁いただきましたけれども、要するに今三つの過剰論がありましたですよね、またIT革命もあるかもわかりませんが、要するに、リストラ、再編を進めた、それで企業そのものは減収増益に転じたと。ところが、幾ら、特に大手企業だけの利益が上がっても、労働者の失業がふえていますし、全体として賃金が抑え込まれていくという中で、当然企業が、また物が売れなくなるとか、全体として不況から脱出できないと。ですから、デフレに陥って、さらに企業の債務も膨らむ、銀行の新規の不良債権も発生するというような悪循環になっているのではないかというふうに私は思います。 例えば、中小企業の多くが今倒産していますけれども、中小企業だけではありませんが、倒産の大体七割、八割が不況型倒産なんですよね。つまり、販売不振だとか売り上げが落ち込んでの倒産と。別に不良債権が直接原因して倒産しているわけでもなければ融資だけでもないんですよね。やっぱり販売不振ということが倒産の一番の原因になっているというところから見ますと、今の日本経済の一番の問題点は、やはり消費が落ち込んでいるといいますか、家計が冷え込んでいるために企業も業績が伸びないという中で、いろいろまた悪い循環がめぐっていくというところに私はあるのではないかと。 ですから、緊急経済対策の「基本的考え方」の認識そのものは、私は、ぴったり合っているのではないか、家計部門に問題があるというふうに思います。ところが、後の「課題」を読ませていただきますと、それじゃこの家計部門をどうするかというところが一つも見えないといいますか、具体的に何も見えないわけですが、「基本的考え方」の中の「景気の現状」の認識どおりとすれば、家計を直接温めるだとか、そこに手当てするという政策が一つも出てこないのは、これはなぜなんでしょうか。 ○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもの考えでは、企業の利益がふえて、そしてそれが労働に分配される、家計がよくなるというパターンは、これはやはり本格的なパターンだと。また、そうならなければならないだろう、時間がかかっても。そう思いますがゆえに、いっとき家計に購買力をつけるというやり方は、いっときの効果はあるかもしれませんが、本格的な政策ではない。かつて金券を配布したということがありますけれども、そういうことでは、それはいっときの効果は生じますけれども、循環する経済活動としてはそれはそこでおしまいになるというふうに考えますから、したがいまして、基本的な経済のプリンシプルに沿って、まず経済そのもののいろんな障害を除いていくといったようなこと、そういったようなもろもろがこの緊急経済対策に書いてございますが、例えばセーフティーネットというような雇用に直接関係いたします部分は、直接に家計にいい影響を及ぼすことはもとよりあろうと思いますけれども、いっときだけ家計に購買力を与えるということだけでは、それでおしまいになってしまうというふうに私どもは考えるわけです。 ○大門実紀史君 とにかく、この緊急経済対策の現状の認識と課題のところに、私は、そうはいっても相当の乖離といいますか、ギャップがあるというふうに思います。 ですから、申し上げたいのは、家計を一時的に何かで刺激するということではなくて、家計が冷え込んで物が売れなくて販売不振、倒産が起きたりということになっている部分も、そちらから経済を見るということもあり得るわけですから、そこで何らかの手当ても、当然この緊急経済対策ということでしたら含まれるべきだというふうに申し上げておきたいと思います。 次に、この緊急経済対策の中身そのもので幾つか御質問したいと思いますが、これは内閣府の方にお聞きしたいんですが、朝日新聞だったと思うんですけれども、内閣府の見通しではこの緊急経済対策で十万から二十万人失業者がふえるという報道がありましたけれども、そういう認識でしょうか。 ○政府参考人(小林勇造君) お答えいたします。 先生御指摘の記事の件でございますが、内閣府におきましてこの御指摘の記事のような試算を行った事実はございません。 不良債権問題に関しましては、先ほど宮澤大臣からもお答えがございましたが、今回の対策の中で、この不良債権問題がやはり日本経済再生の障害になっている、そしてこの問題の積極的な取り組みを行うことによって、基本的には創造的な経済活動を促進すること、そして経済成長を促す、そのことによって……(「関係ないでしょう」と呼ぶ者あり)はい。失礼いたしました。 ○大門実紀史君 そうしますと、この朝日の記事というのは、かなり誤報といいますか、言った覚えがないことを書いた割にはかなり詳しく展開しておりますので、朝日の記者が勝手にでっち上げたということではないと思うんですが、こういうことを言っているんです。 大手行の十二・七兆の不良債権処理を進めれば、貸出先の企業倒産とかリストラで失業が十万から二十万ふえると。その中身の計算まで出しているわけですけれども、大手行がバブルの後、約五十兆円不良債権を処理した。うち直接償却が二十九兆円。このことで、九四年から九九年までに約五十万人の非自発的失業者がふえた。今回は十二・七兆、あるいは全国銀行入れても二十四兆ですから、その半分か半分以下だということで、十二・七兆だと十万から二十万だろうと。これは書いていませんが、全国行でいえば二十万から四十万ということになるわけですけれども、具体的にこうやって計算してこう出したというのを出していますけれども、そうしたらこれは朝日新聞が勝手につくったんですか。 ○政府参考人(岩田一政君) ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。 企業の雇用過剰感ということにつきまして、これまで経済白書等でもたびたび試算をいたしておりまして、今回も二〇〇〇年第三・四半期の時点で百九万人ほどの過剰雇用があるのではないかという試算をしております。その中で、業種別に見ますと、建設、不動産、卸・小売の三業種で過剰雇用の分が五十六万人程度あるという試算をいたしております。そして、この企業の過剰雇用は、九三年の時点ではゼロだったのでありますが、一九九九年の第二・四半期には二百四十二万人ございました。それから比べますとかなり減っているということでございます。 ○大門実紀史君 全然聞いていないことを次々と出てきて答えられているようですけれども、何も聞いていないんです、そういうこと。この朝日の記事については全くあずかり知らないということですか。 ○国務大臣(宮澤喜一君) それは朝日新聞に聞いてもらわないと。 ○大門実紀史君 わかりました。 そうしたら、今、岩田さん出てこられましたので、経済財政諮問会議で岩田さんが説明されているところに、私はその朝日の記事が非常に関係するんじゃないかなと実は思っているんですが、そういうことでしたら別に朝日に聞いたっていいと思いますが。私が知りたいのは、こういうことを詰めてみたいわけじゃないんです。要するに、内閣府として、今回の対策でどれぐらい失業者がふえるかを試算されているのか、あるいは想定されているのか、これをお聞きしたいということなんです。 岩田政策統括官が、諮問会議の中で、よくわからないんですけれども、資料二というものに沿って説明されている。この資料二は公表いただけないわけですか。 ○政府参考人(岩田一政君) この資料につきましては既に公表されているというふうに承っております。 ○大門実紀史君 ちょっと要求したけれども、このときの資料というのは出せないんだというふうに伺いましたけれども、出せるならば後でもいただきたいと思います。 この中でも、岩田さんの説明ですと、過剰雇用とかいろいろありますが、つまり直接償却に直接減額を加えたオフバランス化された金額四十五兆に対して、その間、五十万人非自発的失業者がふえたというふうに言われておりますよね。そうですよね、ここで言われているのは。これは諮問会議の文章ですけれども、そうですね。 要するに、四十五兆円不良債権の処理をやると五十万人ぐらい非自発的失業者がふえるんじゃないかということを一つ言われているんだと思いますが、こういうことも含めて、今回の緊急経済対策で政府としてどれぐらいの失業者がふえると見込んでいるのか、お答えいただきたいと思います。 ○政府参考人(小林勇造君) 不良債権処理に伴います失業の問題でございますが、私どもとしては、定量的に把握するのは困難だということで試算をいたしてございません。 ○大門実紀史君 大変無責任だなと思うんです。これだけ失業がふえるんじゃないかということで心配が広がっている中で、対策を打ち出したときにも試算も何もされていないということでは本当に無責任だと思います。 この間、シンクタンクがいろいろ数字を発表しております。ニッセイ基礎研究所の予測では、二十二・二兆の不良債権を処理すると百三十万人ふえると。これはちょっと試算がかなり大胆ですので、百三十万人というのがどうかというのはありますけれども。 いずれにせよ、先ほどの岩田さんの資料説明、あるいは全国行の二十四兆を処理するというレベルとか、さらにそれがデフレ圧力として波及するということを考えますと、やはりこの二年、三年で不良債権を処理するということでいきますと数十万人の失業者が出るということは、おおむねそれほど違わないのではないかと思いますが、その点ではいかがですか。 ○国務大臣(宮澤喜一君) それは私からむしろお答えした方がいいんじゃないかと思いますが、先ほど参考人が言われましたように、これを定量的に把握することが実際上なかなか簡単でないということを申し上げようとしたんだと思います。 しかし、大門委員がお尋ねになっていらっしゃることは私はごもっとものお尋ねだと思って伺っているんです。ただ、これから不良債権の処理を二年なり三年なりやって実態が一体どういうふうになるのか、あるいはむしろ今、そういう不良債権の処理を受けるような企業が現にどういう状況にあるのかというようなことの把握は実際困難なものですから、新しくぽんとここでこういう政策をやったらこれだけ失業が出ちゃうといったようなことがとてもなかなか想定できない。 片一方で、政府はもう三年近く前からジョブクリエーションをやったりミスマッチの改善をしたりしておるものですから、そういう中で今度こういう政策がとられた、これも全く新規に新しいことをやられるわけではない、今までのをもう少し計画的にきちんとやっていこうとするわけですから、何がしかのそこから失業が出てくるということは、むしろそう考えるのが当然だと思いますが、それを計数的に述べてみよと言われますときに、それを計量するだけの正確な見通しというものは立ちにくいということを私は正直に申し上げておくべきだろうと思うのです。したがって、ある新聞がこういうことであるという予測をしました。それは私も読んでおりますが、どうしてそういう答えに到達したかはあれを読みましてもわかりませんでしたが、ただ、こういう不良債権の処理をしていきますと、そういう失業あるいは雇用状況の悪化というものは出ると考えるのが普通でございますから、それを計数的に実は申し上げられないんだと。正直な私はお答えだと思います。 ○大門実紀史君 具体的に試算するのが難しいのはよくわかります。岩田さんは、その資料二というのがよくわからないんですが、とにかく諮問会議の中で、四十五兆の場合は五十万人ぐらいふえた例があるという意味かもわかりませんけれども、とにかくそういう一つの指標をお示しになりましたし、私は、与党の公明党の皆さんもやはり危機感を抱かれて百万人雇用創出というような大きなものを出されているわけですから、相当の失業者が出るという危機感が政府や与党の中にもあるんじゃないかというふうに思いますし、やっぱり数十万人以上の失業者が出るのではないかというふうに思います。 御存じのとおり今でも最悪の失業率なわけですけれども、私よくわからないんですが、今回の緊急経済対策でさらに失業者がたくさんふえると。失業者をふやすような経済対策というのは世界でも例がないんじゃないですか。これをやったら失業者がふえてしまうなんという経済対策というのは聞いたことがないんですけれども、こんなことはあり得るんですか。 ○国務大臣(宮澤喜一君) それは、事態は既に何年か前に発生していて、それに対応していろいろやってまいりましたが、この最後の段階において、柳澤大臣の言っておられるような、こういうことが必要になってくる。 ですから、今急に新しい政策をとって失業を生もうとしているのではありませんで、そういう事態は既に生まれてきていて、三年の間に我々がそれを改善してきた、その最後の段階。最後の段階ということは、触れずにおけばもっともっと事態は悪くなるだけのことでございますから、そこは決心をして最後の段階に入っているということであって、そのために失業を発生させる仕組みを考えているのではございません。 ○大門実紀史君 私はそうではないというふうに思います。二年や三年で一気に不良債権の最終処理をやるということで、それだったら大変なことになるということで予想されているのが先ほどから申し上げている失業問題ですから、何かずっとやってきて最後にばっと出る、こういうことじゃないと思うんですね。一気にこの不良債権処理をやろうというところで出てきた話だというふうに思いますので、宮澤大臣とは認識が違うわけです。 このセーフティーネット、雇用対策がこの中にも載っておりますけれども、例えば十ページの「雇用の創出とセーフティーネット」のところで、(1)のところに「新市場開拓に資する規制・制度改革」云々とあります。これは要するに新規雇用をここで創出しようというふうなことだと思いますが、ここに四点、ITから医療システムから保育・介護、循環型社会という四つの分野で規制緩和とかをやりながら新規雇用の創出というふうに書いてありますが、ここで何万人の新規雇用創出を想定されているんですか。 ○政府参考人(小林勇造君) 対策に書かれているような分野、創造的な企業活動を促進することを通じて経済成長を促し新規雇用を創出したいということでございますが、計数的な整理はしてございません。 ○大門実紀史君 非常に無責任な、内容も既に出しているような内容をここに持ってきて並べただけのような、しかもこのITにしろ、保育・介護のところだって新規雇用はふえていませんよね、実際問題。そういうところに何で持ってきて、ここで新規雇用だと言うのは、何か当面非常にごまかしといいますか、そういうものを感じるんですね。本当にここでこれから出てくる失業者を引き受けるんだというふうなものは何もないと。 しかも、計量的にも、計量的にといったって厳密には難しいと思いますが、先ほどの話にもありましたけれども、少なくとも相当の失業者を受け入れるだけの新規雇用を想定するような施策にもなっていないし、非常にやることだけはっきりしていて、不良債権を二年、三年で処理すると。それによって出てくる失業者のことについては、どれだけ出るかも試算もしないし、受け入れる方も試算もしないと。非常に無責任なようになっているんではないかというふうに思います。 時間が少しなくなってきましたので、次に中小企業の倒産の関係も幾つかお伺いしておきたいというふうに思うんですけれども、中小企業の倒産といいますと、大変今心配されているわけですけれども、非常に少ししか書いてない。六ページのところに、よくわかりませんけれども対応はするんだというふうなことしか書かれておりませんが、具体的に、連鎖倒産の危険防止などはどういう対策を考えておられるんですか。 ○政府参考人(中村利雄君) 御指摘のように、六ページに「中小企業への対応」ということがうたわれておりますが、その中で中小企業における影響といいますのは、オフバランス化の対象となる企業と取引関係のある中小企業について、例えば連鎖倒産の危険があるということで、こうした不測の事態に対応するためにいろんな施策を講じているわけでございます。 具体的には、倒産企業に売掛金債権等を有する中小企業の連鎖倒産防止対策としまして、政府系金融機関による運転資金の別枠かつ低利の融資がございます。第二に、中小企業信用保険法の別枠化等の特例措置がございまして、これにつきましては昨年の法改正によりまして無担保等の措置がございます。それからさらに共済の貸付制度もございます。 ○大門実紀史君 時間がなくなりましたので、今おっしゃったことも既にある制度でして、今後予想される中小企業の連鎖倒産、たくさんふえると言われているものに対する新たなといいますか、大きな措置というのは見えないわけですが、私は一つだけ最後にこの点で要求させていただきたいのは、今回の不良債権処理でやっぱり、前回に柳澤大臣にいろいろお尋ねしましたが、ゼネコン関連の不良債権処理が非常にウエートを占めると。この分野だけではありませんけれども、流通でもそうですが、下請の連鎖倒産を防止するといいますか、なぜ倒産が下請に一番起きるかといいますと、下請債権ですね、元請が倒産した場合、下請がもらうべき代金がもらえないとか、持ち込んだ材料を返してもらえないという、いわゆる下請債権が保護されていないというのが非常に今現場では問題になっています。流通でも建設でも問題になっています。 つまり、銀行や国が先に倒産した企業の差し押さえをやって担保物件を取っていく、税金の肩がわり、いろんな社会保険料の肩がわり等々で銀行と国が先に取っていく、下請はそれを取れない、それで連鎖倒産するという例が非常に多くなっておりますので、この下請債権、特にその中に含まれる労働者部分の労働債権というものをぜひこの機会に優先債権にさせるということをやらないと、幾ら今までのようなことをやられても連鎖倒産はなくならないということを申し上げて、私の質問を終わります。 |
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