国会質問

● ● ● ●  大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2026年7月14日 参議院 内閣委員会 国旗損壊処罰法案 憲法法理ほぼ解体 参考人が危惧
<赤旗記事>

2026年7月15日(水)

憲法法理ほぼ解体
国旗損壊処罰法案 参考人が危惧
参院内閣委で大門氏質疑に

発言する(左から)橋本、木下、伊藤俊幸の各参考人
=14日、参院内閣委

 参院内閣委員会は14日、国旗損壊処罰法案について参考人質疑を行いました。意見陳述で、神戸大学大学院法学研究科の木下昌彦教授は憲法21条が保障する表現の自由に反すると述べ、中央大学法学部の橋本基弘教授はどんな行為が刑罰で処罰されるか明確でなければならないとする憲法31条の罪刑法定主義と真っ向から対立するといった懸念を表明しました。

 日本共産党の大門実紀史議員は質疑で、国旗損壊を処罰する法律のあるドイツやイタリアは戦後、ファシズムの国家観を否定し新しい憲法の下で国旗を制定した経過があり、国旗への侮辱は戦後の憲法と民主主義に対する冒涜(ぼうとく)だという考え方が根底にあると指摘。日本では日の丸が戦前から使われていることから日本国憲法と国旗が結びつかず、国民感情もさまざまであり「それぞれの国の憲法と国旗の結びつき方は違う」と述べ、参考人に見解を求めました。

 木下氏は「その通りだ」と指摘し、ドイツなどでは国旗を民主主義や共和制と結びつけ、「その憲法秩序の中で国旗損壊罪が存在する」と述べました。

 大門氏は、木下氏が意見陳述で、法案を合憲とするなら「表現の自由に関する憲法法理をほぼ解体する必要がある」と述べたことを挙げ、一部の政党が政治的な思惑で「憲法の法理を壊そうとしているといえるのではないか」と質問しました。木下氏は、大門氏の指摘に同意し「その意味で憲法改正と同じだ」と発言。今後、立法事実や保護法益が曖昧な法律でも合憲という議論になっていくと危惧を示しました。

<議事録>(未定稿)

○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
 お忙しい中、ありがとうございます。
 まず、伊藤参考人に伺います。
 ちょっと今もあったんですけど、先ほどこの立法事実との関係で選挙の妨害という話をされましたが、もう一度ちょっとお話をいただけますか。

○参考人(伊藤俊幸君) 私は、この今回の保護法益は、その国旗をめぐる公共の平穏だと思っているんですね。まさに国民の感情というのもありましたけど、私は、それの結果、国旗をめぐる公共、まさに日本の社会が平穏であること、要するに騒乱が起きないということですよ。
 ということだと私は認識していますので、そういう観点から言うと、選挙活動の中でそういうのを振り回して、そして、あれは振り回すだけじゃなくて、言論でもかなり乱暴なことを言うんですね。乱暴なことを言ってあおるという行為は、端から見ている人間でも不愉快に思う。ということは、実際に、我々はコメントは何もしませんけど、ネットに山のように書かれるということは、それを見た人たちが不愉快に思う人は実際いるということですよね。であるならば、そういったことが派生して大きな問題にならなければいいだろうということは思ったということです。

○大門実紀史君 選挙の話と、選挙のときに例えば演説している人が嫌な思いをするというのはちょっと別の話でね。例えば、我が党も結構右翼が来るんですよ。で、日の丸、日の丸まではあれですけど、旭日、目の前でこんなやられたことあるんですよね。それと、それが、それに対する不快感と選挙の話は別で、それは、選挙妨害は選挙妨害できちっとただすべきで、ちょっと結び付けられるのは違うのかなとちょっと思いましたので質問いたしました。
 それで、ちょっといろいろもうあったんですけど、外国にも国旗損壊罪あるという話があって、今日もお話ありましたけど、木下先生伺いたいんですけれども、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカですかね。ただ、アメリカも、ヨーロッパの中でも欧州裁判所の判断なんかも含めて、要するに、今回の法案は不快の情を起こさせるということが処罰の理由になるわけですけど、いわゆる不快を理由にして、不快に感じたということによって処罰している国はないと思うんですが、いかがですか。(発言する者あり)

○参考人(木下昌彦君) 済みません。
 私の知る限りそういう例は存じ上げません。

○大門実紀史君  もう一つその歴史的なことで、私も専門家じゃないんですけど、ちょっと読んだ範囲なんですけど、ドイツ、イタリア、フランスと日本を比べると、そもそも歴史が違うのかなと思うんですけれども。戦後のドイツですね、今の国旗ですね、これは先ほどありましたとおり、やっぱりナチス政権の国旗を否定して、新たな憲法、新たな国旗という位置付けですので、今のドイツの憲法と国旗というのは非常に結び付いている関係で、国旗を、国旗に対していろいろやることは憲法に対してといいますか、に対してという強い意識があるわけですね。イタリアも同じように、ムッソリーニの後、戦後ですね、国王の戦争責任を追及して、共和制になって、その下での新しい憲法で新しい国旗というふうに非常に憲法とその国旗が結び付いているという意味があると思うんですよね。
 ですから、このドイツ、イタリアなんかそうですし、第二次世界大戦前の国家観を否定して新しい憲法で国旗を制定した経過があるので、国旗への侮辱というのは、その戦後の憲法、民主主義に対する冒涜だという考え方が根底にあると。ただ、フランス国旗もやっぱり、自由、平等、博愛でしたかね、やっぱり歴史があるわけですね。その思いがあるわけですよね。そういうものに対して冒涜すべきじゃないという国民感情は強いものがあると思うんですけど、日本の場合はもうずうっと日の丸が、百五十年ぐらいですか、主に使われてきて、戦争があって、いろんな思いがあってという中で来ましたので、そう簡単に憲法と国旗は結び付いているわけではない、そう簡単に結び付いているわけではありませんし、国民感情もいろいろあるという中、のはあると思うんですよね。
 つまり、申し上げたいことは、それぞれの国で違うということと、なおかつ、それぞれの国の憲法と国旗の結び付き方は違うと。したがって、ほかの国でやっているからという話は当たらないのではないかと思いますけど、これは、木下先生、橋本先生も言及されていることかと思うので、伺えればと思います。

○参考人(木下昌彦君) ありがとうございます。
 私もそのとおりだと思いまして、特に表現の自由とか国旗をどう、それとの関係どうするのかというのは、まさに古い言葉ですけど、国体の問題であると思うんですよね、国の形がどうあるべきかという。ドイツとかフランスとかイタリアというのは、国旗というのを民主主義とか共和制との関係で結び付けてきて、その憲法秩序の中で国旗損壊罪が存在する。
 日本の場合は、御指摘されましたようにそのような伝統はございませんので、特に国旗については、国旗・国歌法ありますけれども、何を象徴しているのかということが定かではなくて、かつてこれが国旗だということで定められたということで、それが続いているということで定められているものなんだと思うんですけれども、本来、まずそこから、出発点として、そもそもこの国旗は何なのかというところから、日本の場合は、何なのかというところは議論を説き起こす必要があったんだろうとも思うんですけれども、それがなされないままで単に国民感情ということになっておりますので、そういう観点からも問題があるでしょうし、単純にほかの国、独自の歴史がある国との比較というのは困難であろうというふうに思います。

○参考人(橋本基弘君) 先ほどの繰り返しになりますけれども、例えばドイツの場合、ドイツ国旗の損壊行為、これはまさにナチズムへの復活を招く表現というふうな意味を持つわけですね。したがって、ドイツにおける国旗損壊罪、これはまさに反ナチズムというような思想を体現しているわけです。せっかく独裁体制やファシズムを倒してつくり上げた共和国を保っていこう、そこの切実な法益というのがあるわけですね。そういう歴史、文脈、そういったものがあって初めて国旗損壊罪といったものが犯罪になっているわけですね。
 これは、外国にあるからだということで日本にもという議論に欠けていることでありますけれども、でも、どの国でも国旗損壊罪の適用は非常に慎重なんですね。非常に抑制的だということです。それはつまり、まさしくそれは、国旗を損壊する行為というのは表現の行為だからという意識も一方であるということですから、そういうバランス、両方ともの事実というものをきちんと見ておかないと、これは、何というんでしょうかね、公正な議論にはならないのではないかなというふうに思いました。
 以上です。

○大門実紀史君 木下先生に伺います。
 この法案については既に衆参の質疑がございまして、今日もありましたけど、罪刑法定主義、明確性の原則に反するとか、立法事実がないとか、あるいは表現の自由、内心の自由、制約、侵害するおそれがある、つまり憲法三十一条、二十一条、十九条に抵触するということが指摘されて、野党からも指摘されて、ところが提案者の方の答弁がずっと曖昧の繰り返しで、何か全然深まらないんですけれども、今日、木下先生のレジュメの最後に御紹介していただきました、この法案が合憲となれば、従来の憲法法理がほぼ解体するというのが大変ぴたっと分かった気がしたんですけれども。
 といいますのは、私、法律論は素人なんですけれども、ただ、こういう議員立法も長く審議してきて、ただ、思うのはこの法案がなぜ議員立法なのかと。通常、刑法に関わる改正ですから、重要な改正となりますよね、刑法ですからね、刑罰ですからね。法制審など専門家の議論を経て、憲法上、あるいは法体系上というんですかね、そういういろんな審査を経て法案化するというのが通常だと思うんですよね。
 ところが、この法案は、そういう議論とか審査、そもそも堪えられる内容じゃないというのもあると思うんですけど、そういう、だからこれ法制審に掛けたら潰れたんじゃないかと、こんなずさんなものはですね、と思うんですけれども、そういう、刑法の積み重ねとか、法的観点とか、専門的な知見とか、全部吹っ飛ばして、政治的な思惑で立法しようと思うと議員立法しかなかったというふうなずさんなものが来ているんで、みんな議論にならないといいますか、だと思うんですね。
 したがって、申し上げたいことは、木下先生がおっしゃった、これが合憲ならば、従来の憲法法理ほぼ解体するというのは、たとえ立場が違っても、やっぱり刑法、法制上の検討を経てこういうものは出されてきて議論すべきだと思うんですけど、ですから、刑法学界全体が非常に疑義を抱いているというのが今回だと思うんですよね。
 言い換えれば、何といいますか、刑法も蓄積も何も分からない一部の政党、一部の議員が、政治家が憲法の法理を壊そうとしているというふうに言えるんじゃないかと思います。
 そういう受け止めでいいでしょうか。

○参考人(木下昌彦君) ありがとうございます。
 本法案、今の憲法のこれまで積み重ねられてきた判例を基に考えますと、やはり多くの憲法学者、私が知る限り現役で大学で教えている憲法学者の多くはもう、多くはというか、私が知る限りはほぼ全員、私が知っている人は全員ですけれども、違憲だというふうに考えておりまして、逆にこれが合憲ということになりますと、それでは、我々が考えてきた、我々が授業で教えているような憲法とは全く異なる憲法を教えなければいけないわけですね。こんなに立法事実が曖昧で、強制要件も曖昧で、立法保護法益も曖昧なものでも表現の自由を規制してもいいんですよということで授業で教えなきゃいけないわけです、仮にこの法案が合憲だというふうに判断されたら。そういう意味では、まさに憲法の教える内容が一〇〇%変わってしまいますので、その意味で憲法改正と同じ意味があったということがあります。
 確かに、この国旗というのは、みんな大切に思っている人が多いものです。ですので、この法案だけを見れば何で反対するんだということはあるのかもしれないんですけれども、まさにこの誰も反対ができなさそうなものが作られて、それがまず初めの出発点、アリの一穴となって、次から次へと、じゃ、これは尊重しなければならないんじゃないか、これも、これはどうなんだということで、どんどんどんどん広がっていく。その最初の契機になる。それらを次に規制をしようというのを、歯止めを掛けようとしましても、まさにこれ、これだけの立法事実で、これだけの保護法益で、これだけの曖昧な法律でも立法ができているんだから、この新しい法律も当然合憲でしょうという議論になっていくわけです。
 そういう意味で、これまでの憲法法理が解体されるということで申し上げさせていただきました。

○大門実紀史君 終わります。ありがとうございました。

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