国会質問

● ● ● ●  大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2025年12月2日 参議院 参議院内閣委員会 ストーカーの治療・カウンセリングについて
<赤旗記事>

2025年12月4日(木)

ストーカー治療義務付けよ
大門氏 規制法改正で主張
参院本会議で成立

(写真)質問する大門実紀史議員
=2日、参院内閣委

 紛失防止タグによる追跡行為を規制する改正ストーカー規制法と改正DV防止法が3日の参院本会議で全会一致で可決・成立しました。日本共産党の大門実紀史議員は2日の参院内閣委員会の質疑で、ストーカー行為を繰り返し、殺人や傷害などに及ぶ「ハイリスク・ストーカー」に治療やカウンセリングの受診を義務づけるべきだと主張しました。

 治療・カウンセリングの効果が欧米などで実証されながらも、日本の受診率が5%と著しく低いのは、警察職員の知識不足やカウンセラーなどの専門家や相談機関との連携不足のほか、根本的には義務づけの仕組みがないからだと指摘。欧米で、裁判所命令による治療・カウンセリングの義務づけが可能なのは、刑法で「つきまとい罪」を規定し、被害の深刻化に照らして重罪だと認識しているからだと強調しました。

 一方、日本のストーカー規制法は特別法で、個々の違反行為を後追いで規制しており、この枠組みでは治療・カウンセリングは義務づけられないと指摘。欧米のように刑法の枠組みでストーカー行為をとらえれば、さまざまな対処ができると迫りました。赤間二郎国家公安委員長は「検討すべき課題がある」と述べるにとどめました。

 大門氏は警察庁や法務省、厚生労働省など関係省庁を交えたストーカー総合対策関係省庁会議などで治療・カウンセリングをどう義務づけるか、広く検討を行うよう要求。山田好孝警察庁生活安全局長は「関係省庁も含めた取り組みが極めて大事だ。改正法施行後も適切な対応を推進したい」と応じました。

<議事録(未定稿)>

○大門実紀史君 大門です。
 ストーカー規制法に絞って質問します。
 今回、幾つかの大事な改善点がありますけれども、ただ、昨日、ずっとストーカー問題に対応されてきた弁護士さんと夜お話をして、要望をお聞きしました。また、最近の関係者のいろんなレポート、発言がありますけれども、今、現場で頑張っておられる専門家とかNPOの方々が、今一番行政に求められておられるのは何かといいますと、それはストーカー、特に警察の警告も無視すると、で、ストーカーを繰り返すような、あるいは殺人、傷害などにまで及んでしまう、いわゆるハイリスクストーカーに治療、カウンセリング、治療、カウンセリングの受診を義務付けてほしいというのが、実は今一番、現場の強い要望だそうでございます。
 ストーカーといっても、警察に警告をされると八割の人は止めるんですね、やめるんですね。で、残りの二割の人、その中でも更に一割の非常にちょっと病的な、警告を受けようが、刑罰を受けようが繰り返してしまうという方々が一番危ない話ですね、この間、問題になっているわけですね。止めるにはもう治療しかないというのが現場の方々の御意見で、したがって、それを義務付けてほしいというのが強い要望になっております。
 この治療、カウンセリングの効果は、午前中、局長から、効果があるのかもしれないし、ないのかもしれないという自信のない答弁がありましたけれど、よく勉強してほしいんですけれど、既にいろんな行動療法がアメリカやイギリス、そして日本のNPOの中でももう実証されていて、かなり効果は、もちろん一〇〇%ではありませんよ、しかし効果が出ているというのはもうありますので、それも踏まえていただきたいわけでございます。
 現在、警察では、警告を発した加害者には治療、カウンセリングをお勧め、勧めるということまではやっているわけですよね。ただ、それが、先ほどありましたとおり、午前中あったとおり、受診率が五%という、大変に低いと。その原因については、もう衆議院で議論がありましたので、申し上げますと、要するに、警察の担当者が余り専門的知識がまだ高まっていないというので、カウンセリングの有用性について加害者になかなか説明できないとか、あるいは、そういういろんな問題があって、要するに、警察職員の方の研修、専門性高めてもらうとか、専門家ですね、カウンセラーを同席してもらうとか、あるいは相談機関につなぐとか、そういうことが求められると思いますが、それはそれでやっていただかなきゃいけないんですけれども、その受診率が低い根本的な、抜本的な原因は、欧米と違って低いのは、やっぱり義務付けの仕組みがないということがもう決定的ではないかと思うんですよね。
 欧米では、ストーカー問題というのは既にもう八〇年代から日本に先行して発生、深刻化しておりまして、いろんなことを重ねてきているわけですね。ハイリスクのストーカーについて言えば、もう治療、カウンセリングを裁判所命令で義務付けると、そこまでやらないと駄目だなということで、もうやっているわけでございます。アメリカやイギリス、カナダなどでは、もう既に裁判所命令で治療、カウンセリングを義務付けるということをやっているわけでございます。
 日本もどんどん深刻な事例が増えておりますし、このままでいいのかというふうに思うわけでございます。
 なぜ、現場の方々は、本当にいろんな専門家が異口同音にそういう義務付けをすべきだとおっしゃっているんですけれど、なぜ現行法で治療やカウンセリングを義務付けるということはできないんでしょうか。

○政府参考人(山田好孝君) お答えいたします。
 御指摘のストーカー加害者にカウンセリングや治療を義務付けることについては、例えば、令和四年度に警察庁で行いましたストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的アプローチに関する調査研究においては、医療機関等における課題として、標準的な治療方法が必ずしも確立しているとまでは言えず、どのような治療方法、対応が有効か断定的に言える段階にないですとか、ストーカー加害者本人に治療等の意欲がなければ治療等の効果が上がらない、こういった課題が指摘されているところでございます。
 また、網羅的に把握しているわけではございませんが、過去の調査研究によれば、海外の一部の国においては、加害者に対し、心理教育プログラムや精神的治療の受講を義務付ける制度が導入されておりますところ、こうした制度については、刑事処分の一環として、あるいは裁判所における保護命令等に付随しているものと承知をしているところでございます。
 こうした事情も踏まえますと、警察において、委員御指摘の加害者に治療やカウンセリング等を義務付けることについては、様々な課題があるものと考えているところでございます。
 今後とも、地域精神科医あるいは医療機関等との連携を図りつつ、ストーカー加害者に対して受診の働きかけを行うほか、加害者をカウンセリング、治療機関等につなげやすくする方策について検討を進めるなど、加害者による行為のエスカレート防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

○大門実紀史君 今局長おっしゃった中にありましたが、要するに法の立て付けが違うんですよね、海外と。欧米では治療、カウンセリングの義務付けが命令までできるわけですけれども、これは日本の規制法のような、今回の、特別立法じゃないんですよね。刑法の中で、まあ国によっていろいろですが、付きまとい罪ですかね、刑法の中に入れているわけですね。したがって、おっしゃったように、まさにそのとおりですね、刑事処分としてやれる仕組みをつくっていると。
 日本のこのストーカー規制法というのは、あの桶川の事件とかそういうものを含めて作られてきたわけですけど、行為を規制する、出てきた行為を規制する、後追いで規制していくわけですね、特別立法なわけですね。
 したがって、法の立て付けが全然違うので、おっしゃったように、刑法の中に位置付けないと、そういう刑法の中での裁判所命令というのができないという仕組み、要するに法の立て付けが違うというふうに、ちょっと調べて私も分かったんですね。
 そうなりますと、今の局長の答弁だと、これからどんどんどんどん深刻化していっても、今のこの規制法は、特別立法の違反行為を一つ一つ後追いで、イタチごっこのようにやっていくわけですね。これだといつまでたっても治療やカウンセリングを義務付けることができないことになってしまいますよね。
 したがって、私思うんですけれども、ちょっとこの法の立て付けを、例えばドイツ、カナダなど調べましたけれども、やっぱり刑法の中に位置付けて、もう深刻化しているから重罪という意識で取り組んで、多分、最高刑が十年なんですよね、ドイツやカナダですね。日本は、今あれですか、一年の禁錮刑ですかね。命令禁止違反でも二年ですかね。非常にもうそこから違うわけですけれども、刑法に位置付けて重罰化しろという意味ではありませんけれど、刑法の枠組みで捉えていけば、いろんな事前の対処ができるようになると思うんですけれども。
 私は、局長言われたこととそんな違っているとは思わないんですが、要するに、その法の立て付けからいって、今のこの規制法では限界があるということをおっしゃったんではないですか。

○国務大臣(あかま二郎君) 一部繰り返しとなりますけれども、ストーカー加害者にカウンセリング、治療等を義務付ける制度の導入については、局長先ほど申し上げたとおり、まず様々な課題があり、現時点においては慎重な検討を要するものだというふうに認識をしております。
 その上で、御指摘のような義務付けについて法律で整備することについては、どのようなものを義務付けの対象とするのか、それをどの機関が認定するのか、何をもって義務を履行したとみなすのかなど、検討しなければならない課題があるものというふうに認識しております。
 そのことを踏まえますと、加害者を治療、カウンセリング機関等につなぎやすくする方法の研究を進めてまいることをより強く推し進めていくことをまずやってまいらなければならない、そう思っております。

○大門実紀史君 ちょっと大臣、お分かりになっていないと思うんですけれど、そういう類型じゃないんですよ。法の立て付けなんですよね。
 例えば、刑法で殺人罪ってありますよね。殺人罪というのは、どんな殺害方法をしたかと一個一個規定していませんよね、これが刑法の世界ですね。ですから、海外のこの刑法の中にストーカー規制を付きまとい罪というふうに組み込む場合に、一定のこの範疇は決めると思いますけれど、その何が該当するかというのは、今まさにこの規制法がそうなんですよ。
 そうではなくて、刑法の世界はそうではなくて、捉えるわけですよね。そういう捉え方をしないと、この問題一個一個はもうずっとイタチごっこで追いかけるだけで、そういうふうな、特に一番求められている治療やカウンセリングということの裁判所命令と、海外ではどこでもやっているようなですね、そこにたどり着かないのではないかということを申し上げたわけで、もう多分、局長は御存じだと、お分かりだと思うんですけどね。それで、いずれにしても、今日、はい、そうしますというわけにはいかないと思うんですよ、大きな問題でね。
 ちょっと申し上げておきますと、二〇二一年の改正のときに、この参議院の内閣委員会、この内閣委員会での附帯決議の中に、まさに「加害者の治療及び更生をより一層支援すること。」というのが書かれているわけですけれども、その後何も提案がないわけですよね。それは、やっぱりこの法案の中ではこれは提案できないと思うんですね、この立て付けの中ではですね。やっぱりそのストーカー対策全体を視野に入れた検討が、法の立て付けも含めて、もうここまでいろいろ深刻化してきますと必要じゃないかと思うわけです。
 例えば、警察庁の有識者検討会って今回開いていないんですよね。前回開いたんですけれど、あの有識者検討会というのはあくまで、こんなことが始まったと、それ規制しましょうと、行為規制の、ずっと追いかけるだけなんですよね。したがって、そういう枠組みではどう対応するかが出てこないと思います。
 先ほどありました、二〇二二年、三年前に、ストーカー総合対策関係省庁会議ですか、これは警察庁だけではなくて法務省、厚労省、関係省庁が参加されて、まさに、もうそれ以来開かれていないんですけど、総合的なストーカー対策について議論されているんですね、いい議論されているわけですよね。そういうのを継続していただいて、これ、このストーカー規制法あるいは警察庁だけでは限界があるというふうに思います。各省庁に働きかけて、特に法務省、厚生労働省の協力も得て、広く検討していただくということを通じて海外レベルに追い付くといいますかね。
 しかも、これ一番、一番今現場の方々、たくさんの相談を受けてきた方々が求めておられることでございますので、この治療、カウンセリングをどう義務付けるか、命令で、命令として受診させるようにするかという点に踏み込むためにはそういう広い検討が必要かと思いますが、それは是非、警察庁から各省庁に呼びかけてそういう検討の場を始めてほしいなと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(山田好孝君) お答えいたします。
 ストーカー対策、とりわけ加害者対策につきましては、警察庁のみによってこれを進めていくということだけではなく、やはり、今委員御指摘のあったとおり、厚生労働省、法務省等の関係省庁も含めた取組というのが極めて大事だというふうに思っております。
 今の、ただいまの御指摘も踏まえて、改正法の施行後においても適切な対応を推進してまいりたい、このように考えております。

○大門実紀史君 この問題は二つありまして、再犯を防止すると、被害者を守るということと、加害者を更生させるという点で、まさに一番大事な問題でございますので、今申し上げたように検討を始めていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。

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