<議事録>
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。会派を代表して質問します。
まず、新型コロナウイルスと経済対策について聞きます。
新型コロナウイルスが日本経済を直撃し、国民の暮らしにも大きな悪影響を及ぼしています。加えて、先月末、総理が科学的根拠もなく突如打ち出した全国一律の学校への休校要請が混乱を拡大しています。
一方、独自の判断で取組を進めている自治体もあります。今大事なことは、地域の実情を最も把握している各自治体の取組を尊重し、国が制度的にも財政的にも万全の支援をすることではないでしょうか。総理の認識を伺います。
この間、新型コロナウイルスの影響を受けたアジア各国は、かつてない規模の経済対策を次々と打ち出しています。例えば、韓国は、中小企業への減税や金融支援など日本円にして総額一兆四千三百億円規模の対策を実施すると発表しました。香港は、十八歳以上の永住権を持つ住民七百万人に一人当たり約十四万円を支給するなど一兆円規模の対策を打ち出しました。シンガポールも、企業減税など五千億円規模の対策を発表しました。
日本より人口も少なく国家予算も小さい国々ですが、それぞれの実情に応じた対策を大胆な財政措置で実行しようとしています。
日本政府も、既存の制度の延長線上ではなく、また、小出しの対策でもなく、中身も財政措置も従来の枠を超えた大規模な対策を一気に打ち出す必要があります。それが国民に安心感を与え、明日への希望につながるのではないでしょうか。総理の認識を伺います。
例えば、中小事業者に対する支援も、融資の拡充だけにとどまらず、無利子貸付けや既存債務の返済凍結、社会保険料の免除、さらに営業損失補填金や減税などの直接補助を思い切って実施すべきではありませんか。働く方々の休業補償も、フリーランスや個人事業主にも直接支払われる給付金のような制度を創設すべきではありませんか。
政府は、三月十日までに第二弾の緊急対応策を打ち出すとしています。方針や内容を決める前に、各党各派の具体的提案を聞いて、それを反映させる努力を是非していただきたい。総理の答弁を求めます。
次に、不況打開策について質問します。
昨年十―十二月期のGDPは、年率換算でマイナス六・三%、家計消費もマイナス一一・五%の大幅減となりました。この時期はまだ新型コロナウイルスの影響が深刻化する前でした。総理は、この時期の景気の落ち込みの原因はどこにあるとお考えでしょうか。
十月一日からの消費税の一〇%への増税がその原因であることは明らかです。そもそも二〇一四年の消費税八%への増税以来、家計消費の低迷は続いていました。そこに米中貿易摩擦などの影響を受け、昨年夏以降の日本経済は明らかに下降局面にありました。そんなときに消費税の増税を強行すれば景気がひどく落ち込むのは当たり前です。総理、消費税の増税は大失敗だったと率直に認めるべきではありませんか。
内閣府の景気動向指数の基調判断も昨年八月以来五か月連続して悪化となっています。ところが、政府が発表した二月の月例経済報告では、いまだ緩やかに回復という表現に固執しています。今や月例経済報告は、経済報告というよりただの作文です。
景気の悪化に新型コロナウイルスが追い打ちを掛け、日本経済と国民の暮らしは危機に直面しています。国民の負担を軽減し、内需、家計応援型の経済に転換することで不況を打開すべきです。とりわけ、今の不況をつくった大本である消費税を五%に戻すことは、実質的な負担軽減だけでなく、家計応援の強力なメッセージとなり、景気回復の起爆剤になることは間違いありません。総理、今こそ思い切って、消費税の減税を決断すべきではありませんか。
こういうときにもかかわらず、今回の税制改正案には、家計を応援するどころか、巨額の内部留保をため込んでいる大企業にわざわざ補助金を与えるようなオープンイノベーション促進税制や5G導入促進税制が含まれています。体力のある大企業を優遇するお金があるのなら、暮らしや中小企業向けの予算に回すべきではありませんか。
また、我が党が富裕層優遇であると再三批判してきた株の譲渡などの金融所得課税の税率も、そろそろ引上げに踏み切るべきではありませんか。麻生大臣の答弁を求めます。
次に、ジェンダー平等と経済との関係について質問します。
世界経済フォーラムが発表した二〇一九年の日本のジェンダーギャップ指数は、百五十三か国中百二十一位で過去最低となりました。安倍政権発足時の百一位から更に大きく後退しています。総理が掲げる女性活躍推進が進んでいないどころか、逆に男女格差は開いているのです。その原因がどこにあると総理はお考えですか。
日本が順位を下げているのは、特に政治と経済の分野における男女格差の是正が進んでいないからです。世界経済フォーラムは、日本は、女性の閣僚と国会議員の比率が余りにも低いこと、経済においても男女の所得格差が著しく、企業の管理職や役員に女性が少ないことを指摘しています。
ジェンダーギャップは人権の問題であるだけでなく、経済そのものにもマイナスの影響を与えます。IMF、国際通貨基金も、男女格差の是正が経済成長の推進力になるというリポートを発表しています。ゴールドマン・サックス証券のリポートでも、男女格差が解消されれば日本のGDPは一〇%押し上げられると試算しています。事実、北欧諸国などジェンダー平等の進んだ国ほど一人当たりのGDPは高くなっています。ジェンダー平等の推進は経済にもプラスになると考えますが、総理の見解を伺います。
今や欧米の先進国では、男女格差の是正に努める企業ほど将来性と競争力があると判断され、企業価値も上がる時代になっています。日本でも、二〇一四年に有価証券報告書に女性役員の人数を開示するよう義務付ける改正が行われました。女性が活躍しているかどうかも企業価値を判断する際の基準にすべきだという前向きな改正が麻生大臣の下で行われたのです。
ところが、男女の賃金格差については、日本企業は実態を公表せず、いまだに格差是正に消極的です。こんなことでは、ますます世界から取り残されてしまいます。
先日の予算委員会で我が党の小池晃議員が提案したように、せめて企業が男女の賃金格差を把握し公表する仕組みをつくり、格差是正への努力を促すべきではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
麻生大臣、有価証券報告書も、せっかく女性役員数の開示まで義務付けたのですから、更に進んで、給与、待遇を含めた男女格差の是正状況が分かる情報も開示させるよう検討すべきではありませんか。
これらのことを含め、男女の賃金格差の是正に国を挙げて本気で踏み出そうではありませんか。
以上、現下の経済情勢と時代の変化に対応した政策への抜本的転換を求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大門実紀史議員にお答えをいたします。
自治体の取組への支援についてお尋ねがありました。
この度、学校における臨時休業要請については、ここ一、二週間が瀬戸際とされる状況の中で、子供たちの安全と健康を守るために、時間を掛けるいとまがない中での判断であったことから、保護者を始め自治体や教育関係者の皆さんにも大きな負担をお掛けしています。
このため、政府としては、できる限りの対策を講じ、学童保育の実施や各自治体における独自の取組も尊重しながら、国として財政面も含めて全力で応援することとしています。
今後も、自治体の御意見も踏まえながら、国内の感染拡大防止に向けてあらゆる手を尽くしてまいります。
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対策についてお尋ねがありました。
今般の新型コロナウイルス感染症については、先般取りまとめた第一弾の緊急対応策に基づき、感染拡大の防止に加え、事業者の皆さんに対する五千億円の資金繰り支援や緊急雇用助成金を活用した雇用対策など、必要な対策を直ちに実行しております。
また、来週取りまとめる第二弾となる緊急対応策においては、今回の臨時休校により職場を休まざるを得なくなった保護者の皆さんへの新たな助成金の創設や、医療提供体制の構築、中小・小規模事業者などに対する強力な資金繰り支援など、必要な対応策を速やかに具体化させます。
今般の新型コロナウイルス感染症が景気全体に与える影響に対しては、二十六兆円の総合経済対策を着実に実行していくとともに、世界経済の動向も十分に注意しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行ってまいります。
中小企業支援についてお尋ねがありました。
新型コロナウイルスの影響については、現在、全国で千か所を超える経営相談窓口を設け、各地の中小企業・小規模事業者の皆さんから大変厳しい状況にあるとの声をたくさんいただいています。
全ての中小・小規模事業者の方々の個別の損失を国が補償することは困難であると考えますが、他方で、多くの事業者の方々から資金繰りについての相談を受けており、しっかりと事業を継承していただけるよう、第一弾の緊急対応策により五千億円の資金繰り支援を行っています。
加えて、これまでも関係省庁が連携して、官民の金融機関等に対して、返済負担緩和のための条件変更への柔軟な対応や、年度末の金融繁忙期を控え迅速な貸出しの実行など、個別企業の実情に十分配慮するよう要請してきたところです。社会保険料についても、納付を猶予する仕組みを活用し、柔軟な対応を行っています。
来週取りまとめる予定の第二弾となる緊急対応策においても、強力な資金繰り支援を始め、中小・小規模事業者の皆さんの声を踏まえた実効的な支援策を講じてまいります。
フリーランスや個別事業主の方への休業補償についてお尋ねがありました。
今回の臨時休校に伴って生じる様々な課題に対しては、政府として責任を持った対応をすることとしており、仕事を休まざるを得なくなった保護者の皆さんについては、新たな助成金制度を創設することで、正規、非正規を問わず、休暇期間中の所得減少に対する手当てを行うこととしております。
自営業者やフリーランスなどの小規模事業者については様々な形態があり、一概に論じることは困難ですが、新型コロナウイルスの影響については、現在、全国で千か所を超える経営相談窓口において、各地の中小企業・小規模事業者の皆さんから大変厳しい状況にあるとの声をたくさんいただいております。
様々な民間事業者の方々の個別の損失を国が補償することは困難であると考えておりますが、多くの事業者の方々から資金繰りについての相談を受けており、しっかりと事業を継続していただけるよう、第一弾の緊急対応策により五千億円の資金繰り支援を行っています。
また、来週取りまとめる予定の第二弾となる緊急対応策においても、強力な資金繰り支援を始め、御指摘のあった方々も含めて、中小・小規模事業者の皆さんに対する実効的な支援策を講じてまいります。
第二弾の緊急対応策についてお尋ねがありました。
来週取りまとめ予定の第二弾となる緊急対応策の策定に当たっては、国会での御意見や、先般、各党の党首の方々と面会した際にいただいた御意見、各党各会派の御提案も十分踏まえてまいります。新型コロナウイルス感染症対策に当たっては、野党の皆様ともお互いに協力をして乗り越えていきたいと思います。
景気や消費税の減税等についてお尋ねがありました。
先般公表された昨年十―十二月期のGDPは、主に個人消費が、消費税率引上げに伴う一定程度の反動減や、台風や暖冬の影響を受けたことから、前期比マイナスに転じたところでありますが、我が国経済は、引き続き、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかに回復していると認識しています。
今回の消費税率の引上げは、少子高齢化という国難に正面から取り組むに当たり、お年寄りも若者も安心できる全世代型社会保障制度へと大きく転換していくためにどうしても必要なものです。
他方で、経済財政運営については、引き続き消費税率引上げによる影響について注視するとともに、今般の新型コロナウイルス感染症が景気全体に与える影響に対しては、二十六兆円の総合経済対策を着実に実行し、世界経済の動向も十分注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行ってまいります。
ジェンダーギャップ指数についてお尋ねがありました。
我が国のジェンダーギャップ指数が国際的に低いことについては、経済分野における女性管理職の割合が低いことなどが主な要因でありますが、これらについては、一つ一つの課題にしっかりと取り組んでいくことが必要と認識しています。
安倍内閣の下で女性活躍推進法の制定などに取り組んだ結果、女性の就業者は三百三十万人以上増えました。保育の受皿整備を進めることなどにより、M字カーブも確実に解消に向かっています。出産や育児に関係なく女性が働き続けられる環境を整えることは、確実に将来、指導的地位に就く女性の増加に資するものと考えます。
また、有価証券報告書に女性役員数の記載を義務付けたほか、取締役のうち少なくとも一人は女性が含まれるようコーポレートガバナンス改革にも取り組んだ結果、この七年間で上場企業の女性役員は三倍以上に増えています。
今後とも、政治分野も含めて女性の活躍を促す政策を推し進めることで、ジェンダーギャップの解消に取り組んでまいります。
ジェンダー平等と経済成長の関係についてお尋ねがありました。
ダイバーシティーを重視する経営は今や世界の常識です。女性の目線、女性の力を生かせない企業は、もはやマーケットから評価されない時代となっています。ジェンダー平等なくして、まさに二十一世紀の未来を切り開くことはできないと考えています。
こうした観点から、安倍内閣は、発足以来、女性活躍を成長戦略の重要な柱に位置付け、女性の就業促進、コーポレートガバナンス改革などに取り組んできました。日本の持続的な成長軌道を確かなものとするためにも、今後とも、政府一丸となって全ての女性が活躍できる社会づくりを進めてまいります。
男女間の賃金格差についてお尋ねがありました。
我が国の男女の賃金格差の要因は、管理職比率や勤続年数の差異を始め様々なものがあると承知しています。こうした複合的な要因がある中で、一律に男女の賃金格差の公表を行うことについては求職者の誤解や混乱を招くおそれもあるとの指摘等もあり、女性活躍推進法に基づく情報公表の対象とはしていないところです。
政府としては、昨年五月に成立をした改正女性活躍推進法において、管理職比率の目標など、自社の課題に基づいた目標を設定し取り組むための事業主行動計画の策定義務の対象拡大を図るとともに、出産や育児に関係なく女性が働き続けられる環境等のために保育の受皿の整備等の両立支援体制の整備も推進しているところであり、こうした様々な取組を総合的に進めていくことにより、男女間の賃金格差の解消に努めてまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 大門先生から法人課税や金融所得課税、有価証券報告書の開示について、計二問お尋ねがあっております。
まず、法人課税や金融所得課税にお尋ねがあっておりますが、令和二年度の税制改正において、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進に係る税制上の措置や5G導入税制の創設などを行うことといたしております。
今回の改正は、大企業向けを中心とした租税特別措置の廃止、縮減等により法人課税全体で税制中立で行うものであり、大企業優遇との御指摘は当たらぬと思っております。
金融所得課税につきましては、平成二十六年度から上場株式の譲渡益に係る税率を一〇%から二〇%に引き上げたのは御存じのとおりです。これによりまして高所得者など所得税の負担率が上昇する傾向が見られ、所得再配分機能の回復に一定の効果があったと、そのように考えております。
更なる金融所得課税の見直しが必要ではないかという御意見なんだと存じますが、令和二年度の与党税制改正大綱において、税負担の垂直的な公平性を確保する観点から検討するということとされておりますのは御存じのとおりですが、経済への影響をどう考えるかといった論点もありますので、総合的によく検討していくべきものだと考えております。
なお、令和二年度の予算におきまして、中小企業の生産性向上といった現下の中小企業を取り巻く重要課題に対応していくために必要な予算ということにつきましてはしっかり確保しており、十分な中小企業支援が可能なものだと考えております。
また、所得の低い方々に配慮して、真に支援を必要とする低所得世帯の子供を対象とした高等教育の無償化、月額最大五千円の年金生活者支援給付金の支給などの措置も講じているということも御存じのとおりであります。
最後に、男女格差の是正等についての開示についてのお尋ねがあります。
これまで金融庁は、有価証券報告書に男女別の役員数と役員の女性比率の記載を義務付けておりましたほか、コーポレートガバナンス・コードを改訂して、取締役会の構成についてジェンダーを含む多様性を確保するように促してきたところであります。
女性活躍などの観点も含めて、中長期的な企業価値の向上について投資家と企業との対話を充実させるということは、これは大変重要なことであり、その方策を引き続き検討してまいりたいと考えております。(拍手)