≪議事録≫
○大門実紀史君 私の方は税法についてだけ質問をいたします。
昨日も所得税法等改正案が本院で採決されましたけれども、今後のこともありますので、一点だけ、税の所得控除のそもそも論について確認をしておきたいというふうに思います。
今回の改正、非常に大きなところに踏み出したんではないかなと、原理原則的にはですね、思っておりまして、給与所得控除から基礎控除にシフトしたという話なんですけれども、つまり給与所得控除を十万円引き下げて、基礎控除を十万円引き上げたと。もちろん、この点で減税になる人もおられるんですが、ただ、方法論としてこういうやり方に踏み込んでいいのかというふうに思うわけであります。給与所得控除も基礎控除もそれぞれ意義とか、何といいますか、目的とか歴史的な積み重ねとか経過が違うわけなんですけれども、それを簡単にこちらを十万引いて、こちらを十万足すというのは、差し替えといいますか、差し違えといいますか、差引きといいますか、そういうことをしていいのかなというのがそもそもちょっと疑問であったわけでございます。
この間の政府税調の議論を聞いておりますと、要するに、給与所得控除はサラリーマンの経費を見ているんだと。勤務経費の概算控除、サラリーマンの経費を概算的に引いているものだというふうな議論があって、昨年十一月の政府税調もそうですけれども、ところが、家計調査などいろいろ調査してみると、そんなにサラリーマンは経費が掛かっていないと、簡単に言うとですね、じゃ、減らしてもいいんじゃないかというふうな、非常に簡単な安易な議論が行われているんじゃないかなというふうに思ったわけでありますけれども。
資料をお配りいたしましたけれども、平成十二年ですから二〇〇〇年ですかね、随分前ですけれども、この頃の政府税調というのはまだ格式があったといいますか、正確な学究的な議論をちゃんとされていたんだなと思いますが、要するに、給与所得控除について何かということで書いてあるんですけれども、給与所得控除の性格については二つあると。
一つは、今申し上げたような勤務費用の概算控除、いわゆるサラリーマンの経費ですね。もう一つは、それだけじゃないんだと、ほかの所得との負担調整のための特別控除ですね。ほかの所得との負担調整というのは、いわゆるサラリーマンというのは専ら身一つで使用者の指揮命令に服して役務提供を行うと、体一つで働いているんだと、失業などの不安定なこともあるんだと、いろいろ拘束もされるんだというような性格、サラリーマン特有の事情に対して考慮したものだというふうに、この二つの性格ですよね。つまり、サラリーマンの経費だけじゃなくて、経費と、もう一つは勤労者性ですね、勤労者性所得だからという、勤労性控除というんですかね、そういうことの二つで給与所得控除は成り立っているんだと、要素があるんだと、ちゃんと正確な議論をされているわけですけれども。
この二つ目の勤労性所得と、この点に対する配慮を軽く見ているんじゃないかと、今回のはですね、ちょっと踏み込んでしまったんじゃないかと思うんですけれども、星野さん、いかがでしょうか。
○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
今、先生からお配りもされまして、御指摘もありました平成十二年七月の政府税調のレポートでございます。この中に述べられております給与所得控除、これには二つの要素が含まれるという整理、これは今でもそのとおり妥当すると考えているところでございます。
他の所得との負担調整という部分におきましては、まさに先生、線を引っ張っておられるように、いわゆるサラリーマンが専ら身一つでこういう環境の中でやっているという、そのサラリーマンに特有の事情に対してしんしゃくを加えるものと、ということでございまして、こういうことも加えまして、今回の制度改正を行っているということでございます。
○大門実紀史君 今回それも考慮したんなら、そう簡単に基礎控除と相殺するようなやり方はすべきではないというふうに思うわけでありまして、これは大事な問題であって、「租税法」という本があって、金子宏さんの、最新版を見ても、給与所得というのは勤労性所得であって、資産性所得、いわゆる利子所得とか株の取引とか不動産とかですね、それに比べて担税力が弱いと、負担能力が弱いんだというようなことも給与所得控除が採用された理由の一つということで、いろんな意味で給与所得控除というのは構成要素があるわけですね。
今回、その基礎控除の点でいきますと、フリーランスなどの自営的労働者といいますか、そういうものに配慮してというのがあると思うんですけれど、それを言うなら、この二つを、基礎控除と並べるのではなくて、それはそれで別に、本来は事業性所得の中にも勤労性があるわけです、勤労者性というのがあるわけですね、いわゆる自家労賃の問題とか。そういうものをもっと研究、検討するということでその問題を考えて、給与所得控除についてはきちっとした位置付けを踏まえておくということが本来やられるべきことであったんではないかというふうに思うんですよね。
今回の文書改ざんもそうなんですけれど、どうも財務省が理論的にも軽くなっているんじゃないかと。もうちょっと学究的なレベルを確保しながら税制改正も考える必要があるのではないか、こっち引いてこっち足すとかそういうことではないんじゃないかと、もっともっといろんな控除等々、税法の理論、原則を踏まえてやる必要があるのではないかと思いますけれど、大臣、そういうやっぱり財務省のきちっとした理論水準守ってほしいと思うんですけれど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) これは大門先生御指摘のあるとおりであったという面もあるんだとは存じますけれども、この税制の話というのは、もう本当、我々の世界では山中貞則を始め著名な方々がおられまして、この世界は。もうやかましいと、まあ正気の沙汰じゃないんじゃないかと思うぐらいやかましく我々やられましたよ。若い頃、この辺のときなんか、私はもうむちゃくちゃ、意見を言うと、おおとか言われて、もうむちゃくちゃやられて、これはもう税制に、ちょっとあそこに耐えられないとちょっとこの世界にはいられないぐらいよく徹底してやられましたんで、長い議論があって、みんなでやり過ぎた結果こんな難しくなったという、これ、私はそう思っています。もうちょっと単純なものでよかったんだ、こんなもの、私は本当にそう思っているんですけれども、みんなでやった結果難しくしちゃったんですよ、この税制。だから、税理士なんて商売がやたら増えざるを得ないほど難しくなったわけでしょう。だって、でなければ税理士なんて職業は成り立たないぐらい単純なものだったはずですよ、昔はこんなものなかったんですから。
そういったような形で積み重ねた結果なんだと思いますけれども、今回は、やっぱり働き方改革なんということが増えますと、私は多分副職する人がいっぱい増えてくると思いますよ。だって超勤できないんでしょう。だって働きたい人はいっぱいいるわけですから。そうすると、外国見ていてもお巡りさんが家庭教師やったりしているような例はいっぱいありますから、そういった意味では、公務員もそういったようなことにならざるを得ぬとかいうようなことになってくると、これは税の掛け方というのは、従来のような単純に掛け方じゃできなくなるんじゃないかなというのが、さっきの学術的なことではなくて、大局的な流れとしては、そういうものを前提にして私どもはこれを考えてきたという背景を御理解いただければと存じます。
○大門実紀史君 それはよく分かるんですけれど、そういうときの対応を、やはり長い長い歴史があって、長いこといろんな議論があって給与所得控除が構成されてきたとか、そういうことはきちっと踏まえていただきたいと思います。もちろん税の問題というのは、非常に政治的な、いろんな現場の声の結果というのは分かりますけれど、財務省がそれをどう、実際に税制改正をやるときに、やっぱり財務省としてはきちっとそういういろんなことを、変なことを言う人にも、違うんだと、これはこういう歴史があるんだということを、特に与党の皆さんにはきちっと物を言うような財務省になっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。