≪議事録≫
○参考人(黒田東彦君) 黒田でございます。
本日は、日本銀行の政策・業務運営につきまして私の所信を述べる機会を賜り、深く感謝申し上げます。
初めに、金融政策運営について申し述べます。
私は、五年前の二〇一三年、日本銀行総裁を拝命いたしました。当時の日本経済は、長年のデフレにより経済の劣化が進んでおり、デフレからの早期脱却が最大の課題でした。そうした認識から、私は、政府との共同声明において日本銀行は二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するとしていたことを踏まえ、総裁就任直後、大胆な金融緩和策である量的・質的金融緩和を導入しました。その後も、経済・物価情勢の変化に対し必要な政策対応を行ってまいりました。現在は、長短金利操作付き量的・質的金融緩和という世界でも初めての措置により、極めて緩和的な金融環境を整えています。
日本経済はこの五年間で大きく好転し、戦後二番目の長さとなる景気回復が続いています。企業収益は既往ピークを更新し、労働市場がほぼ完全雇用となる中、賃金も緩やかながら着実に上昇しています。物価面でも、生鮮食品、エネルギーを除いた消費者物価の前年比は、二〇一三年秋にプラスに転じた後、ほぼ一貫して前年比プラスで推移しています。日本経済は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。
このように経済・物価情勢は大幅に改善しましたが、二%の物価安定の目標は実現できていません。原油価格の大幅な下落なども影響しましたが、より大きな要因は、長年にわたるデフレの経験から家計、企業経営者の間に根付いたデフレマインドです。価格が上昇しないことを期待した経済行動が定着しており、こうした期待を変えていくにはある程度時間を要することが明らかになってきました。
もっとも、粘り強い金融緩和の下、持続的な景気回復と労働需給タイト化、賃上げに向けた政府のサポートなどもあり、情勢は着実に変化しています。賃金、物価は緩やかに上昇し、人々のインフレ予想も上向いており、日本経済はデフレ脱却に向けた道筋を着実に歩んで、進んでいます。現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことにより、物価安定の目標を実現できると考えています。総裁として再任されましたならば、引き続き政府と連携しながら、日本経済のデフレ脱却への歩みをしっかりとサポートし、二%の物価安定の目標実現への総仕上げを果たすべく、全力で取り組んでまいる覚悟です。
この間、強力な金融緩和が続く下で、金融システムや年金運用などに与える影響、金融緩和からの出口戦略や日本銀行の財務をめぐる様々な議論があることは承知しています。これらの論点についても十分な検討を行いながら、二%の物価安定の目標の実現を最優先に政策運営を行ってまいりたいと思います。
また、金融システムや金融市場の安定を図っていくことも日本銀行の重要な役割です。特に、金融規制については、各国の政府当局、中央銀行間での連携協力が一段と重要性を増しており、いわゆるバーゼル3の最終化では、政府と連携して強力な国際交渉を行いました。さらに、日本銀行は、銀行券の流通や日銀ネットの運行など決済システムの中核を担っています。熊本地震等の災害時も含め、こうした業務が円滑に行われるよう取り組んでいます。また、新しい情報通信技術を金融面に応用するフィンテックが金融サービスの向上や持続的成長に資するよう、様々な研究や金融機関等へのサポートも行っています。
こうした多様な機能、役割を持つ日本銀行を、私はこの五年間陣頭指揮してまいりました。この間の経験も生かし、日本銀行の持つ総合力を一層引き出すことにより、金融面から日本経済の更なる発展に貢献したいと考えております。
最後に、金融市場や海外とのコミュニケーションの重要性について述べさせていただきます。
本年初来、国内外の金融市場で大きな変動が見られました。経済、金融がグローバル化した現在、各国の中央銀行や政策当局者と緊密に連携するとともに、内外の金融市場に対し適切に情報発信することも中央銀行総裁の大事な役割です。財務省財務官、アジア開発銀行総裁そして日本銀行総裁として培った知見、人脈を最大限活用し、こうした役割を十分に果たしてまいりたいと存じます。
日本経済が極めて重要な局面にある現在、引き続き日本経済のために貢献できる機会を与えていただくことになれば、これまでの経験を生かしながら全身全霊を込めて職務に邁進していく所存です。
以上でございます。
○大門実紀史君 大門でございます。
しばらく前に財政金融委員会で日本銀行に行きまして、黒田さんともお会いしていろんなお話をさせていただきまして、あれでお別れかと思っていたんですけど、またお会いすることになって、これからまた何度も議論するようになるのかなというように思いますけれど。
さんざんこの異次元金融緩和、議論してきましたけれど、今日は財金委員会ではありませんので、総裁候補としての所信ですので、余りテクニカルといいますか財金的なことよりも、基本的なお考えをちょっと改めて伺いたいなというふうに思います。
一番大事な点だと思うんですけど、日本銀行の独立性の問題です。もっと平たく言えば、政治からの独立性の問題であります。ちょうどこの「日銀と政治」という本が先日出まして、「暗闘の二十年史」と、朝日の鯨岡さんが書いたやつですけれども、まさに政治がどれだけ日本銀行の政策を左右してきたかということを大変リアルに書かれております。国会の論戦も幾つか載っていたりします。ちょっと参議院の論戦少ないなと思うんですけど、幾つか載ってはおります。
要するに、私も、この二十年のうちの十七、八年現場で見てきましたけれど、何といいますか、結果的に、結果的に非常に政治が日本銀行にいろんな圧力といいますか要請といいますか、掛けてきたなというのは非常にリアルに分かります。
そもそも、今回のこの人事そのものが大変私は、私、最初は次の総裁が出てこられて、出口がないというふうに私思っていますけれど、そうはいっても正常化の模索には踏み出すような変更があるのかなと思ったんですけど、やっぱり安倍政権としてはこのまま続けてもらわないと困る、今は株価とか円の為替の問題もいろいろ流動的になっていますが、とにかくこのまま続けてもらわないと困るということで安倍政権からの要請があって、提案そのものがそうなんですけど、まだまだ今の路線を日銀は続けてもらいたいということがあって黒田さん、そして、黒田さんもいろいろぶれないように、まだリフレ派で行け行けどんどんと言っている若田部さんをくっつけてというような、非常に、何といいますか、この今やってきたこれを絶対ぶれないで続けろというふうな安倍政権の要請を非常に感じるんですけれども、もう長いこといろいろな議論をしてきましたけど、どういうふうにお考えですか。
○参考人(黒田東彦君) 総裁、副総裁の人事は、御案内のとおり国会の同意を経て内閣が任命するということになっておりますので、私から何か申し上げることはございませんが、日本銀行の政策として二%の物価安定の目標というものを二〇一三年の一月に決定し、これが政府との共同声明にも盛り込まれているということの下で、日本銀行として、政府とは独立に二%の物価安定の目標を追求して金融緩和を続けてきたわけでございます。
今後も、二%の物価安定の目標を実現すべく最大限の努力を払ってまいりたいというふうに思っておりますが、日本銀行としての物価安定の目標というものは、やはり日本銀行の使命のように最も重要なものでありますので、これは何としても達成する必要があるというふうに考えております。
○大門実紀史君 なかなかお答えにくいと思うんですけど。
ずっと見てきますと、黒田さんの衆議院の議運ではちょっとお答えになっていますけど、私は、速水総裁、福井総裁、白川総裁と黒田総裁ですけれども、速水さんのときにかなりいろいろ、ゼロ金利の解除が早かったということでかなり政治的に圧力があって、財政金融委員会なんかではもうつるし上げのような状態があったりして、私は、唯一速水さんを守ってといいますかね、そういう圧力に屈するなということで、まあいろいろありましたけれども。非常に頑固な方ではありましたけど、一線画してというような非常に強い方でありまして、福井さんはちょっと軽い方でありましたけれども。白川さんはやっぱり、私今も思っていましたが、白川さんの非常にアカデミックな、私は大好きだったんですけれども。
そこまではいろいろあって、何といいますかね、いろいろ、はっきり言って、与党、あのときは野党の議員もそうでしたけど、リフレをやれリフレをやれ、インフレターゲットをやれというようなことがありましたけれど、一線を言ってこれ以上はできないということが速水さん、福井さんもありましたし、白川さんはもっとあったんですけどね。それでも、それでもインフレターゲット、リフレの方向にぐうっと押されてきたわけなんですけれども。
黒田さんは、そもそも、そういう人を安倍さんが選んだからそういう、また違うんでしょうけれど。私思うんですけど、そういうふうになると、結局、日銀の独立性とはいいながら、人事によって、政権の思うことをやる人を据えてしまえば、幾ら日銀法があって独立性が書かれていても、政権の思うように金融政策も左右されかねないなというふうに見てきたんですけれど、そういう怖さが一つあるのと、実際あったんじゃないかというふうに思います。
それともう一つ、この政策って何だったのかと思うと、実は、黒田さんが異次元金融緩和をやる前にいろんな議員がいろんなことを言ったんですけど、こんなことを言ったんですね。物価はまあいいんだと、どうなろうと、株を上げたいんだと、株を上げることが大事なんだと。その議員も株持っていましたけど、国会議員の中に何人も、特に財政金融委員会なんかは結構与野党問わず株を持っている議員がいて、うちは誰も持っていませんけど、株を上げろみたいなのが物すごくあって、なぜ株が上がるのにやらないんだというような、あったんですね。実際、あのときに少し量的緩和をやりますと、ちょっと株が上がったりしていたんですね。だから、量的緩和をやれば株が上がるというのは、この政策入る前から誰でも分かっていたということですね。
もう一つは、先ほど大塚さんからもありましたけど、これは、日銀が大量に国債を買いますと国は国債を発行しやすくなります。そうすると、国債発行は安定すると。これは、財務省にとっては有り難いし、また与党の皆さん中心に、公共事業をやりたいとか何をやりたい、財政支出をやりたいというときに国債を安定的に発行できる、発行していいんだというようになれば非常にいいわけですね。やりたいことができるわけですね。そういうふうな、物価が上がるとかデフレがどうとかそういうことよりも、非常にそういう政治的なことが働いてきたなというのが率直に、この本だけじゃなくて、私なんかも現場にいて感じることなんですよね。
そういう点でいくと、一番怖いのは、今日のこれがそのものなんですけれども、日銀の独立性が幾ら日銀法に書かれていても、人事を通じて政権が思う人間を据えることによって政権の思うとおりの金融政策を遂行するということが可能は可能ではないかということをずっと見て率直に思うんですけれどもね。
この人事と独立性という点ではいかがお考えでしょうか。
○参考人(黒田東彦君) 現在の日本銀行法では、日本銀行の金融政策についての政府から独立性が非常に明確に書かれているわけでございます。他方で、総裁、副総裁あるいは政策審議委員の人事につきましては、国会の同意を経て内閣が任命するという仕組みになっているわけでございます。
諸外国の例を見ましても、基本的には中央銀行は政府から独立して金融政策を決めるという形に主要先進国はなっておりますけれども、それと同時に、やはり総裁、副総裁等の任命は政府が行うという形になっておりまして、金融政策の独立性は維持されているというふうに思いますけれども、中央銀行の総裁、副総裁の人事につきましてはどこの国も基本的に同様な形になっている、議会の同意を経てというのがない国もあるようですけれども、いずれにせよ、政府が議会の同意等を経て任命するという形になっているというふうに認識しております。
○大門実紀史君 これは、政治の問題もありますのでこれぐらいにしておきますけれど。
今日はちょっと基本的な考えを改めてお聞きしたいんですけれど、デフレを克服ということでやってこられたわけですけれども、そもそもデフレの原因は何なのかと、それが間違うと処方箋も間違うわけなんですけれど。本当に、これはもう最初から議論が分かれてきたわけですが、私どもは、私なんかは何回も質問させていただきましたけど、今のデフレの原因は賃金デフレである、賃金の低下が物価の低下を招いて、物価の低下が更にコストダウン競争に入って賃金を引き下げるという賃金デフレだということをかつて竹中平蔵さんとも何度も議論していたわけですね。
ところが、こうやって急に、いや、違う、金融政策なんだということが出てきて、もっとひどいのは、私思うんですけど、デフレはデフレマインドのせいだ、人々の気持ちの問題だというような、それで物価が上がるということを、そういうイメージを与えればみんな前向きになるんだというような、何か本当の原因といいますか実証的なものを抜きに、何か病は気からといいますか、何かマインドの問題だとか、あるいは金融で実体経済を動かせるんだみたいな荒唐無稽なことが私は最初からこの異次元金融緩和のもとになっているというふうに思って、それが、最初はそういう議論がいろいろあったんですけれど、結局、何やったってうまくいかないですから。
最近は、名前は申し上げませんけど、当時私と論戦したような政府のブレーンだった諮問会議のメンバーなんかの東大の先生なんかも、賃金だと、今頃になって賃金を引き上げなければデフレは克服できないんだというようなことをおっしゃるようになってきているわけですけれども、賃金そのものを上げるべきだというのは安倍内閣もおっしゃっているわけですけれども、デフレを克服するには、マネーをどうのこうのじゃなくて、賃金を上げるということにストレートに踏み出すしかないと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
○参考人(黒田東彦君) 賃金が上昇するということを通じて、先ほど来申し上げているとおり、物価が緩やかに上昇していくということが好ましい姿であるということは従来から申し上げているとおりであります。
その上で、金融政策として取り得る方法というのは、やはり伝統的な金融政策でもそうですし、現在の非伝統的と言われる量的緩和、各国がやって日本銀行もずっとやっているわけですが、いずれも、基本的に、やはり名目金利を一方で引き下げて、他方で予想物価上昇率を引き上げることによって、その両者の差である実質金利を引き下げて、それによって消費や投資を刺激し、経済を拡大し、需給ギャップを改善していって賃金や物価が上昇していくということを企図しているわけでありまして、金融政策として、どこの国でも全く同様に、そうしたメカニズムを通じて賃金も上昇し物価も上昇していくという姿を実現しようとしているということであろうと思います。
また、政府が賃上げを促進するために今減税措置その他様々な政策を講じておられるということ自体は、物価安定目標の実現のための賃金の上昇につながっていくのではないかというふうに期待をしております。
○大門実紀史君 まずその点で、二%と賃金の関係なんですけど、大体、二%の物価目標とおっしゃいますけれども、それが世界のグローバルスタンダードだと総理もおっしゃっていますけど、二%以上の物価上昇が続くというのは日本では高度成長期ぐらいで、そんな継続して続いたことないんですよね。あとバブルですかね、あのときぐらいですかね。
そういうものを目標に立てられているということと、それが何の意味があるのかというふうに私なんか思うんですけど、それに縛られてどんどんどんどん国債を買い込むというようなことの、これは、まさに異次元というよりも異常な政策を取られているということはもう五年前から指摘させてもらっているんですけど、仮に二%とすると、これは黒田さんもおっしゃっていますよね、仮に二%の物価上昇ということは、賃金は三%あるいはそれ以上というふうになると。当然そうですね、そういう関係でいきますとね、細かい理屈は抜きにして。
そうしますと、今年も今統計が出始めていますけれど、まだ三%には遠いですよね、賃金ですね。二%の目標を達成するには賃金は三%以上ということになりますと、二〇一九年ですか、到底私は難しいと。これから物すごい賃上げがあれば、それはそうなるかも分かりませんけれど。
ということで、先ほどのお話に戻りますけど、今一番大事なのは、よほど、よほど本格的に賃金引上げしないと二%も行かないというふうに思うわけなんですね。
そういう点では、その二%と賃金の関係を考えると、もっともっと、アコードならアコードで、安倍政権との協調もあるんでしょうけれども、賃金問題をもっと中心に据えるぐらいでないと物価二%行かないんじゃないかと思うんですけど、その辺もうちょっと、改めていかがですか。
○参考人(黒田東彦君) これも従来から私ども申し上げていますとおり、日本銀行は消費者物価の前年比の上昇率で二%という物価安定の目標を実現することを目指しているわけですが、もとより物価だけ上がればよいと考えているわけではありませんので、企業収益や雇用、賃金の増加を伴いながら物価上昇率が緩やかに高まる好循環をつくり出していくことが大切であると考えております。その中でも特に、先ほど来申し上げているとおり、賃金の上昇というのが非常に重要なファクターになっております。
そうした意味で、私どもも賃金の動向を常に注視しておりますし、現在春闘が始まっているわけですけれども、その中で春闘の水準が三%に行くのかどうか注視をしていると。委員御指摘のとおり、賃金の動向というのは極めて重要なファクターであるということはそのとおりでございます。
○大門実紀史君 一つのシンクタンクですけど、今年の賃上げ二・一%と、このまま行くと定昇込みでですね、というような水準でありますので、この点だけ考えても、二%の達成が二〇一九年云々は大変厳しいというか難しいのではないかというふうにちょっと指摘だけしておきたいと思います。
もう一つは、こういうインフレ政策そのものが何なのかということなんですけど、ちょっとテクニカルなことはおいておいて、要するにこういうインフレを目指す、デフレだからインフレにすればいいんだと。これが、この間、この異次元の金融緩和で、これは当然、円安、株高を誘導政策に、日銀が意図するかどうかは別として、日銀は為替には関与していないとおっしゃいますけれど、結果的に円安、株高を招く、そうすると、大きな企業、海外に輸出する企業は為替差益が入る、株が上がりますから、株が上がり始めますと人々が株を買いますから株がどんどん上がるということで、株が上がるというようなことが続いてきて、これだけでも格差が広がっているんですけど、私申し上げたいのは、インフレそのものは実は格差を広げる作用を及ぼすということをやっぱり見ておかないと、今のところ、そのインフレといったって二%成功していませんからあれですけど、本当に二%、私は、二%成功したということはそれ止められるのかとありますけれども、そもそもインフレ政策というものを今この日本が格差広がっていることが問題になっているときに追求すべきなのかどうかと。
当然、インフレになりますと現金を持っている人たちは価値が減少いたします。年金だとか失業給付だとか現金給付を受ける人たちも、もらうものが少なくなります。一方、マネーを運用する人たちは、借りて利ざやを稼ぐわけですから、インフレになれば増やすことができると。しかし、所得の低い人ほど、インフレになれば元々現金以外の資産を持てませんから大変苦しくなるというような、インフレによる格差が広がるというようなことを、そういうことは御検討になったことはあるんでしょうか。
○参考人(黒田東彦君) 量的・質的金融緩和、これは日本銀行だけではなくて米国でも欧州でも行われたわけですが、そうした下で金融資産の価格は上昇して、その下で所得分配がより不平等になったのではないかという議論があることは承知をいたしております。いろいろな分析、研究があるということも承知しております。
ただ、現在のところ、我が国でそうしたことが、この四年間、五年間で大きくその格差が拡大したというふうには必ずしも見られないというふうに思っております。ただ、この点はもちろん金融政策の直接の目的、目標ではないわけですけれども、言わばその副産物として所得格差、資産格差が拡大しているのではないかという観点はもちろん十分注目をしていきたいというふうに思っております。
ただ、先ほど来申し上げていますとおり、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で狙いとしておりますのは、企業収益が拡大し、労働需給が逼迫度を強め、賃金や物価が緩やかに上がっていくということを目指して行っておるわけでして、格差の拡大ということを言わばその中に不可避的に含んでいるということではないと思っております。
○大門実紀史君 最後に、最後というか出口論なんですけど、これも私、五年前の予算委員会でしたかね、これから大量に国債買って異次元の金融緩和に具体的に踏み出すというときの議論で、これに踏み込みますと、一旦踏み込めば出られなくなる、引き返せなくなると。なぜならば、マーケットは日銀が買うということを前提に買い始めますから、日銀がどこかで売るとか減らすとかなると引き始めると。そうすると、国債の価格が暴落とまでは言いませんけど急落して、金利が上がって、景気が悪くなって、国の財政にも悪い影響を及ぼすと。だから、これ踏み込むべきじゃないということをずっと申し上げてまいりまして、今出口があるかないかという議論がされていますけど、入るのは一年で入れますけど出るのに何十年も掛かる、そういう政策だと。今四百五十兆ですか、日銀が持っている国債ですね。これGDPの八割で、全体の発行している国債の四割ですよね。これだけの膨大な国債を日本銀行は引き受けてしまっていると事実上の財政ファイナンスだと思いますけど、そういうふうなのはちょっとおいておいても、どうやってその国債を吐き出していくのかと、正常化していくのかと。
この前、黒田さんが衆議院のこの人事の聴取でちょっと出口論を触れられただけで、一九年度、検討、議論をしているということをちょっと触れただけで円相場上がりましたよね。債券市場の長期金利も上がりましたよね。あれ、そういう反応をするわけですよね。恐らく、そういうことも含めて出口の話はしないんだということをおっしゃってきたんだと思いますけれど、私、出口、出られるかどうかというようなことじゃなくて、正常化に向かうという点では、もうやっぱりいろんなことをきちっとお話しされるべきだというふうに思うんですよね。
例えば、FRBの前のバーナンキさんがおっしゃっていますけれども、もう細かいから紹介しませんけど、要するに、出口について話すことは、具体的に示すことは決してマイナスではなかったと。アメリカと日本は違うんですけれども。何も言わない、まだ時期尚早と言ってもう五年たつんですけれど、言わない、言わない、言わないというところの方が、ここまで来ると本当にマーケットが過剰に反応して、すぐ先週の金曜日のように反応してしまうと。むしろ、ここまで来ると一定の正常化の方向こういうふうに考えている、だから、逆にだから安心してくれということも含めて、時間は掛かるけどこういうふうに考えるとか、それはやっぱりFRBの教訓からいっても、何も言わないということではなくて、それが一九年とか達成したら、達成の見込みが出てきたらとおっしゃいますけれど、僕は達成しないと思うんですよね。ずっと行っちゃうと思うんですよね、これ。それまで買い続けるんですかと。
もちろん、今ちょっと目標変えられておりますけど、減らすことはできないと、保有額を減らすことはできないというふうなことが続くんじゃないかと思うんですけれど、もうそろそろ出口、まあ出口は私はないと思うんですけど、正常化に向かう模索ぐらいかなと思うんですけど、そういう道も、次またやられるならばそういうふうに示していかないとかえって後々パニックが起きるというふうに思うんですけれど、この正常化の方策を示すという点ではいかがお考えでしょうか。
○参考人(黒田東彦君) 正常化というか、あるいは出口というか、この際に論点になる点は、従来から申し上げているとおり、短期政策金利をどうするかということと拡大したバランスシートの調整をどのように行うかということの二つに尽きるわけですが、それを具体的にどのような手順でどのように動かしていくかというのは、やはり出口に差しかかったときの経済、物価、金融情勢を踏まえて最適な方法でやっていくということに尽きると思います。
したがいまして、適切な時期に出口について議論をしてそれを示していくということは必要だと思いますけれども、まだ二%の物価安定目標とかなり距離がある現時点で、具体的にその時点の経済、物価、金融情勢がどういうふうになっているかということを踏まえずに申し上げるのは、かえって市場を混乱させると思いますので適切でないと思いますけれども、先ほど来申し上げているとおり、そこで出てくる論点というのは、米国の例を見てもそうですけれども、この二つに尽きるであろうと。
その場合に、それを適切にやっていく手段という意味では日本銀行は十分な手段を持っておりますので、御指摘のような急に長期金利が跳ねたり、金融市場に大きな影響が出るようなことがないように、実際に出口ということになると、米国はそのようですけれども、まさに極めて緩やかに、経済、物価、金融情勢をにらんで最も適切な形で進めていくということになると思います。
ただ、今具体的に、いつの時点でどのような手段でどのようなテンポで行うかというのを議論するのはやはり早いというふうに思います。
○大門実紀史君 終わります。