≪議事録≫
<公述人>
常葉大学教授・副学長・保育学部長 稲葉光彦君
慶應義塾大学経済学部教授 井手英策君
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎君
<公述人の陳述>
○公述人(稲葉光彦君) 本日は、貴重な機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
国が近々の課題として取り組んでいる少子化対策、中でも保育園の待機児童解消に向けた取組について、保育士の育成に取り組む現場からお話をさせていただきたいと思います。
保育の課題を考える上で、まず、私が教鞭を執る常葉大学における状況を説明させてもらいます。
平成二十八年度卒業生、今月卒業を迎える本大学保育学部保育学科の卒業生の中で、就職希望者の八十八名のうち十三名が保育以外の仕事を選んでいます。この数字から、七十五名は保育の仕事を選んだのですから、大きな問題ではないと言えるかもしれません。ただ、詳しいデータはありませんが、保育の道を選んでも、離職する人も相当数がいるのが実態でございます。大きな希望を持って保育を志し、四年間掛けて学んだ学生が、なぜ保育以外の仕事をしたり途中で辞めてしまうのでしょうか。私が学生から聞いた話を要約しますと、やはり給料が他職種に比べると安いのではないか、キャリアの仕組みが不十分であるという二つの理由に集約されると思います。
一点目の、給料が他職種に比べると安いのではないかということでございます。
厚労省の賃金構造基本統計調査二〇一五年によりますと、全国の保育士の平均賃金は月二十一万九千円で、全職種の月三十三万三千円にかなり及ばないのが実態です。また、保育の仕事は忙しいとはよく言われますが、実際に、各児童の連絡帳や日誌を書いたり、また育児の悩みや家族関係、仕事など様々な悩みを抱える保護者への対応と、大変忙しい仕事です。長時間労働に加え、それでも仕事が終わらず、明日の仕事の段取りをするため、家に持ち帰り仕事をする人もいます。そうした仕事の内容や負担に対し給料が安いという声は確かに多いのです。さらに、給料が低いということが即社会的な評価が低いと取られてしまうのです。これでは保育の仕事に誇りが持てなくなります。
もちろん、保育の仕事は大事な教育の一環でありますので、お金が全てではない、働きがいがあると考える人もいます。ただ、常葉大学の保育学科の卒業生を例に取ると、八十八名のうち男性が十四名いますが、将来結婚しよう、子供が欲しいと考えると、生活が立ち行かなくなるという声は多く聞きます。
二点目が、キャリアアップの仕組みが不十分ということでございます。私は、特にこの点の改善が非常に重要だと考えております。
現在、保育の現場で働く人は、以前と比べると保護者との関わる時間が格段に長くなっております。そのため、保護者と接することにより、私は保護者の保育に対する大きな期待に応えられそうもない、あるいは応える自信がないといって、保育の道を諦めるケースも多く聞きます。また、私たちが大学の教育現場で教える内容と実際の保育現場では、ある種のギャップがあります。そうした現場の変化に対応するには、保育園等でのキャリアアップ教育を充実させなければならないと痛感しております。自信がなかった人も、しっかりとしたキャリアアップ教育を受ければ自信が付きますし、その結果、仕事に誇りを持つことができるようになると思います。
さて、こうした、給料が他職種に比べると安いのではないか、キャリアアップの仕組みが不十分であるという声を踏まえ、二〇一七年度予算案には様々な改善策が盛り込まれたことを評価したいと思います。
一点目の、給料が他職種に比べると安いということに対し、保育士の処遇改善として、二〇一七年度予算案には、保育の給与を約二%、月額約六千円を引き上げることが盛り込まれました。さらに、二〇一七年度予算案では、中堅、若手の保育士向けの役職を新設、一定の研修を修了した経験年数おおむね七年以上の職員に月額四万円、そして一定の研修を修了した経験年数おおむね三年以上の職員に月額五千円の賃金を上乗せするとしています。この点は高く評価したいと考えております。
二点目の、キャリアアップの仕組みが不十分ということに対してキャリアアップ研修を創設したことは重要でございます。都道府県等が実施する研修のメニューには、乳児教育、幼児教育、障害児教育、食育、アレルギー、保健衛生・安全対策、保護者支援、子育て支援等が示されていますが、例えばアレルギーを持つ児童は年々増加しております。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など、アレルギーについて正しい知識や対応について研修を受け、しっかり対応できるように、児童の安全に直結しますし、保育士の自信にもつながります。
以上、私の教育現場から見てきた保育の課題と予算案について見解を述べさせていただきました。
続いて、保育所に入れない待機児童について一言述べさせていただきたいと思います。
待機児童は社会的に大きな問題となっております。そのため、厚生労働省は、二〇一三年に待機児童解消加速化プランを取りまとめ、さらに待機児童解消加速化プランの取組を強力に進め、保育所の受入れ児童数の拡大を図るとともに、保育の受皿拡大の中で、保育園の入園が円滑に進むよう、例えば入園予約制の導入、地域連携コーディネーターの配置の支援を図るとしています。そして、保育を提供するための延長保育、夜間保育、病児・病後児保育などを支援し、整備し、待機児童の解消に取り組んできていると承知しております。
現在国会で審議中の二〇一七年度予算案には、以上のような保育対策関連費として、昨年度と比べて二千七十二億円増となる一兆一千四百九十五億円を計上しております。先ほども触れましたが、待機児童解消加速化プランに掲げた二〇一七年度末までに五十万人分の保育の受皿を確保するという目標の達成を目指すものと評価したいと思います。今後、約五万人分の受皿の確保を目指す企業主導型保育所とともに、この五十万人分の保育の受皿に着実に推進することが重要であると考えます。
以上のような保育士の処遇改善や保育の受皿拡大といった施策とともに、今後更に保育の量的な拡充や多様なサービスの充実を図ることが求められております。保育所は様々な保育サービスを提供することが求められ、保育所に求められる社会的役割はますます大きくなってきております。
保育所への入所児童数は年々増加し、特に都市部においては顕著であります。各自治体は、待機児童の減らすことの対策は早急に解消していかなければならないため、これまでも様々な施策を実施してまいりました。待機児童の解消のために保育所の最低基準を見直され、待機児童の多い地域においては居室の面積基準が国の基準を下回る基準を条例で制定することができるようになりました。保育所の定員の規制緩和により、都市部は定員の弾力化を実施してきております。
昨年、待機児童になってしまった人のブログが大きな反響を呼びました。こうした人には寄り添う対策が必要であります。そのためにも、小規模保育の増設やベビーシッターなど、居宅訪問型サービスを柔軟な仕組みにすることなどが重要になると考えております。しかしながら、このような保育施設は保育の質の低下を招くとの懸念をする意見もあります。そうした懸念は理解できます。その懸念を払拭するために、例えば施設の情報を開示したり、第三者の評価を義務付けるなどを提案したいと思います。これができれば質はかなり担保できると考えます。
待機児童解消のための施策は当然重要であることは言うまでもありませんが、待機児童解消がゴールではないと申し上げたい。保育の質の担保、質の充実が保育、子育て支援にとって必要条件であり、子供の最善の利益に基づいて保育を実施することが極めて重要であることであります。適切な知識と技術を持った保育士とともに、適切な施設が整った環境の下での子供の最善の利益を保障していかなくてはなりません。
さきに述べました待機児童解消加速化プランの中で、保育士の就業継続支援や処遇改善について触れられていますが、保育士不足も大きな問題であります。保育士の離職率が高いことが問題になっています。今回の予算案で、保育士、幼稚園教諭に関するキャリアアップ、処遇改善等が盛り込まれましたことは、処遇改善、離職防止とともに質の向上につながるものと改めて期待をしております。
そして、保育の現場では、非正規職員の増加に加え、変則労働勤務体系などの労働環境も厳しい一面があることを忘れてはならないと思います。子供の最善の利益を保障するためには、質の高い人材を確保するため、非正規の保育士の給与等の待遇改善も急務であります。
言うまでもなく、保育所、幼稚園は子供の人格形成の基礎をつくる重要な時期に当たります。この時期は教育の原点であり、子育ては未来の日本を支える人材を育てるもので、子供は社会の宝であります。早急に待機児童解消を達成するとともに、今後、誰もが希望する保育を受けられ、子供の健やかな育成に社会全体で取り組み、全ての子供の将来を保障する体制を構築していくことが必要であると申し上げ、私の意見陳情を終わります。
御清聴ありがとうございました。
○委員長(山本一太君) ありがとうございました。
次に、井手公述人にお願いいたします。井手公述人。
○公述人(井手英策君) 慶應大学の井手でございます。本日は貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
今日の私からの意見陳述でございますが、平成二十九年度予算の前提にある考え方について私なりの考えをお示しさせていただこうと思っております。お手元に資料があるかと思いますので、めくりながら御覧いただきたいと思います。
まずは三ページ目を御覧ください。ここからしばらく、私たちの日本社会がどうして今のように閉塞感を感じるのかということについての御説明を申し上げようと思います。
青い線を御覧ください。これは、端的に申し上げますと、社会保障、社会支出の中で高齢者の方に向かっている部分を指しております。一方で、赤い方を御覧ください。これは現役世代に向かっている給付の割合を示しております。一目でお分かりいただけますように、日本は先進国の中でも極めて現役世代に対する社会保障、社会支出の給付割合が低い国であるということが分かるかと思います。したがいまして、若い現役世代にとっては、自らが就労し、自らが貯金をする、そうすることによって、子供を塾に行かせる、学校に行かせる、あるいは老後の備え、家を買う、病気になったときの備え、全ての備えを自己責任において行う社会をつくっているということが御理解いただけるのではないかと思います。
おめくりください。
私たちの社会は、所得を増やし、そして同時に、貯蓄をすることによって未来の安心を手にする、そういう社会をつくったわけでありますが、この二十年間の間で世帯の収入が二割近く低下をしております。かつ、この図を御覧いただきますと一目で分かりますように、年収四百万円以下の層が明確に増えております。現在、世帯収入が三百万円以下の世帯が全体の三四%を占めているという状況でございます。所得が増えなければ安心して生きていけない社会の中で、劇的に貧しい人たちが増えているということを御覧いただけるのではないかと思います。
おめくりください。
五ページ目を御覧いただきますと、一九九七年から八年にかけて、日本経済の歴史的な転換が起きていることが分かります。九八年以前の状況では、人々が高い貯蓄率の中で将来の安心を手にしていたわけであります。そして、その貯蓄が、マクロで見ますと、企業への貸付けに向かっていたことが分かる図となっております。それに対しまして、九八年以降、大きく経済の構造が変わってまいります。一つには、家計の貯蓄が劇的に下がっていく。これは、国民経済計算レベルで見ますと、ほぼマイナスの状況になっているという状況であります。他方で、貯蓄を増やしているのが企業でございます。この企業の貯蓄がマクロで政府への貸付けに向かっているという状況に変わったというのがこの九八年前後の出来事であります。言わば、貯蓄をしなければ安心できない社会をつくっている一方で、人々は貯蓄ができないような状況に追い込まれているということを示すものであります。
おめくりください。
今、九七年から八年にかけて大きな変化があったことを申し上げましたけれども、まさに同じ年に社会的にも大きな変化が起きております。それは何か。自殺率、これは実際に自殺者の数もそうなんですけれども、九七年から八年にかけて劇的に増えているということです。とりわけ、四十代、五十代の男性労働者の自殺率が上がっていることが分かると思います。
今日、冒頭申し上げましたように、貯金をしなければ人間らしく生きていけない社会を私たちはつくったと申し上げましたけれども、にもかかわらず、貯蓄が難しくなる中で働く男性は生きることではなく死ぬことを選んでいる。そういう社会、そういう財政を私たちはつくってしまっているというのが、まず皆さんに申し上げたい事実の一つ目であります。
おめくりをください。
今日申し上げているような自己責任の社会が、私は今の日本の人々の生きづらさの原因ではないかというふうに思っております。
私が国会での議論を拝聴します限り、一つには、経済を更に何とか成長させて、人々がまた貯金をし、将来の安心を勝ち取れるような状況をつくっていこうという、そういう議論があるように感じております。しかしながら、現実には、私の考える限り、日本経済は更なる成長を遂げていく力をかなり失っているのではないかと思います。そのような状況の中で、成長を前提にし、所得を増やし、貯蓄を増やす、そういうモデル自身が実は事実上破綻しているというのが今の私たちの社会ではないのかと考えるわけです。
したがいまして、ここでまた新しい方向性をお話ししたいと思うわけでございます。
八ページを御覧ください。
今日、皆さんに御提案申し上げたい、私がお話をしたいのは、経済を成長させ、収入を増やし、そして個人の貯蓄を増やしていくのではなく、むしろ経費を軽くする、収入を増やすのではなくて経費を軽くする、そして、人々が感じている将来不安、これをならしていくという戦略について皆さんにお話をしようと思います。
今、Aさん、Bさんという二人の人がここに書かれておりますけれども、当初の所得が二百万円と二千万円というふうにいたしております。これは幾らでも構いません。ここに二〇%の課税を行いまして、課税後の所得が百六十万円と一千六百万円になったというふうに考えております。この課税の割合も、いかような割合でも構いません。
現時点で格差は十倍ございます。しかしながら、ここで発想を転換し、AさんやBさんの所得とは無関係に全ての人々に対して均一な給付を行う、とりわけお金ではなくサービスの給付を行うということをやってみます。そうしますと、現時点では四百四十万円の税収がございますが、このうちの四十万円を借金の返済に回し、例えば四百万円を二百万円のサービス、二百万円のサービスというふうに分配したとします。そうしますと、最終的な格差は五倍になっているということが見て取れるのではないかと思います。
ここで皆さんに申し上げたいことはたった一点。貧しい人に御負担をお願いし、かつ豊かな人に給付をするとしてもなお、あらゆる人々が痛みを分かち合い、あらゆる人々が喜びを分かち合っていけば、最終的には格差を小さくできるという可能性についてお示しをしているわけであります。したがいまして、中間層、富裕層も含めてあらゆる人々を受益者にし、そうすることで、自分がけがをしても病気になっても失業しても、誰もが安心して生きていくような社会をつくっていけるのではないのかということ、これが今日申し上げたい二点目のポイントとなります。
おめくりください。
私は、これを不安平準化社会というふうに呼んでおります。私たちが不安なのはどうしてでしょうか。例えば子供が幼稚園、保育園に行く、例えば子供が大学に行く、例えば家を買う、例えば年を取って介護が必要になる。実は、ある人生のポイントポイントで極めて大きな支出が生じてしまうこと、これが私たちの不安の根源ではないかと私は考えております。
したがいまして、そのポイントポイントで必要になるお金を国民みんなが分かち合うような仕組みは考えられないのか、反対に言えば、自分が必要ない、その不安から解き放たれているときには同じ国民、他者のために負担をするような、そういう財政の仕組みというのは考えられないのかということを考えております。
ここで、x軸、横軸を御覧ください。不安を平準化するために現物給付、つまり医療や介護、子育てなどのサービスを少しずつ多くの人々に、所得制限を外して少しずつ多くの人々に提供していきます。そうするとどうなるか。右上がりの関係が出てまいります。所得格差の縮小効果であります。これは単純に申し上げますと、年収一億円の人に百万円分のサービスを出しても一%の効果しかありませんが、年収百万円の人にもし百万円分のサービスを出せば一〇〇%の効果があるということを意味しております。全員にサービスを提供してもなお格差は小さくできる、そういうことを示したグラフでございます。
おめくりください。
あらゆる人々の生活を支える、そうすることができていけば、今申し上げましたように格差が小さくなります。では、格差が小さくなるとどうなるか、ジニ係数が小さくなるとどうなるか、このグラフ、この図を御覧いただきますと分かりますように、経済の成長率が高まってまいります。したがいまして、あらゆる人々を受益者にするという戦略は、結果的に格差を小さくするのと同時に、結果的に経済の成長率を高めていく可能性を秘めているということを示しております。
もう一枚おめくりください。
ここで示しておりますのは、恐らく今、私の話を聞いてくださっている皆さんが一番懸念される点ではないかと思います。全員に配るということは非常に大きな資金、お金が掛かってしまうのではないのかというような疑問であります。一部の人々を受益者にすると左側になります。一方で、右側は全ての人々を受益者にした場合でございます。明確な右上がりの関係が出てまいります。これは一体何かといいますと、税収の動きであります。
要するにこういうことです。一部の人々を受益者にしてしまえば、その結果、中間層や富裕層が税に対する反発を強めていく、その結果、取れるはずの税が取れずに分配することができなくなっていく。それに対して、あらゆる人々を受益者にすることによって中間層や富裕層の税への反発が弱まる、その結果として税収が上がってくる。この一部を人々の暮らしに、そしてこの一部を財政再建のために使っていけば、人々の租税抵抗を緩和することによってむしろ格差を小さくし、かつ経済を成長させ、同時に財政を再建していくための財源も生まれてくる可能性があるということでございます。
おめくりください。
今日データを使って皆さんにお示ししたことを私なり整理してお伝えしようと思います。今日皆さんに申し上げたかったことは、誰かの利益ではなくて私たちの利益という領域をもっともっと増やしていきませんかということであります。
私の見る限り、この観点からしますと、二〇一九年の十月は日本の財政の中で歴史的な分岐点になるのではないのかと思います。現在の議論の対立軸を見ますと、一方では二〇一九年十月の消費増税を先送りすべき、あるいはもうやめてしまえという議論があろうかと思います。それに対して、三党合意のスキームで、今のフレームの中で消費増税を行うというのがその対抗軸ではないかと思います。
しかしながら、現在の増税のフレームワークでは、中間層、富裕層の受益がほとんどございません。全体のうちの八割が借金の減少に向けられ、残りの二割がほぼ貧困対策に向かっている状況の中で、中間層や富裕層はこの増税に対して極めて強い抵抗をするのではないのかと思います。増税ができなければそれは財政健全化の先送りであり、他方、増税をすればしたで中間層、富裕層の強い租税抵抗を生み出し、政府への不信感は最高潮に達するのではないのかと思います。
したがいまして、ここで第三の道、もう一つの提案をしたいと思うわけであります。それは何か。二%組替え戦略であります。
現状の二%であれば、私の認識する限り、半分が財政再建、半分が低所得層対策、貧困対策に向かうのではないかと思います。しかしながら、この中のそれなりの割合を中間層の生活のために、私の言葉で申し上げれば、不安の平準化のために使う、そうすることで今後の増税に対する人々の抵抗感を和らげていくという戦略があり得るのではないのかと思います。
私が申し上げたいのは、個人で貯金をしてきた社会、成長が止まれば人々が不安になる社会を終わらせる、そのためにどうするのか。あらゆる人々が痛みを分かち合い、社会に対して貯金を行う、そして、そのことが将来の不安の平準化につながる、成長にただただ依存せずとも生きていける社会をつくっていくことができる、こういうことであります。そして同時に、あらゆる政党が目標にしてきた格差是正、経済成長、財政再建、この全てが目的から結果に変わるということでございます。
誰かの利益を私たちの利益につくり変えていくことができれば、もっと大変な人がいるんだからあなたも我慢しなさいという社会ではなく、一人一人が家族のように支え合い、人間らしい暮らしが全ての人に行き渡るような社会に変わると思います。成長を前提にし、自己責任を前提にするような社会観、人間観を今こそつくり変えていくべきではないか、そういう決意が問われているように感じております。
御清聴いただき、ありがとうございました。
○委員長(山本一太君) ありがとうございました。
次に、萩原公述人にお願いいたします。萩原公述人。
○公述人(萩原伸次郎君) 横浜国立大学の萩原でございます。今日は、この公聴会にお招きくださいまして、誠にありがとうございます。
予算ということでございますので、私は、全般的な問題について、あるいは根本的な予算編成というものの基本的精神、そこからどういう問題が発生するのかという点についてお話しさせていただきたいと思います。
平成二十九年の予算編成の基本方針に、安倍内閣は、長く続いたデフレからの脱却を目指し、経済の再生を最優先課題と位置付け、アベノミクス三本の矢を推進してきたと。平成二十七年の十月からはアベノミクスの第二ステージに移りまして、一億総活躍社会の実現を目指し、三本の矢を強化して新三本の矢、戦後最大の名目GDP六百兆円、希望出生率一・八、介護離職ゼロを放ち、少子高齢化という構造問題に正面から立ち向かい、成長と分配の好循環の実現に向けて取り組んでいると書かれてあります。予算編成の基本方針にアベノミクスがありまして、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算だと、誰もが活躍できる一億総活躍社会を実現して、成長と分配の好循環の強化というものをうたうということでございます。
ところが、現実の我が国の経済、ちょっとかいま見てみますと、例えば二〇一六年の名目GDP成長率は一・五%、消費者物価上昇率がゼロ%、公債依存度が三五・六%でございます。アベノミクスが開始されました二〇一三年の名目GDP成長率が二・六%、消費者物価上昇率が〇・九%、公債依存率は四六・三%でありまして、依然として経済再生と財政再建は道半ばであると安倍首相も認めているところだと思います。
なぜこうした状況が続くのかということを私なりに考えてみますと、このアベノミクスという政策が富裕層を重視した経済政策になっておりまして、中間層を重視する経済政策になっていないというところに大きな問題があるのではないかということを申し上げたいわけであります。
御承知のとおり、アベノミクスが登場したのは二〇一二年の十二月、第二次安倍内閣が成立したときでありまして、内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略と、この三本の矢ということが大変有名になりましたが、私が考えますには、この三本の矢の中で、金融政策というものを軸にして経済政策を展開している、つまり異次元の金融緩和政策ということで、二年間で消費者物価上昇率年率二%を達成するということを目標に掲げたということであります。しかし、現在四年たって、黒田日銀総裁もお認めになっていますように、この目標が実現されてはおりません。
異次元の金融緩和の政策というものが円高と株式価格の急騰を引き起こしまして、多国籍化を果たしている輸出大企業が収益を急増させ、この株価急騰とともに日本の富裕層に莫大な富の蓄積を実現したということが事実でございます。つまり、金融政策を実行するということによって、先行させるということによって、今申し上げましたような状況をつくり上げたわけでありまして、そういう点でいいますと、このアベノミクスの政策というものが、先ほど私が申し上げましたような富裕層を重視する政策としてはまさに見事に成功しているというふうに言えると思います。
しかし、問題は、実体経済がどうなのか。消費者物価の上昇率二%というものが達成されなく今日に至っておるわけでありまして、これは、要するに、日銀の金融緩和政策には限度があるんだということを見なければならないわけであります。
しかし、そう申しますと、アベノミクスの第二の矢として機動的な財政政策があったではないかという議論が持ち上がってまいります。確かにそのとおりでありますが、この財政政策というのは、補正予算でGDPの二・五%にも当たる十三・一兆円の財政支出でありますが、これが要するに緊急の財政出動ということでありまして、かつてケインズ政策が経済政策の中軸になったような、財政政策を基軸とする経済政策に戻ったというわけではございません。
つまり、アベノミクスの金融財政の積極政策によって、株価の急騰、円安、大企業の収益によって確かにそういう意味では成功したかに思われましたが、実体経済という面に関していいますと、二〇一四年の四月、御承知のとおり消費税が八%に増税されまして、その増税効果がまさにボディーブローのように我が国日本の経済に効いてくるという状況が起こったわけであります。しかし、そのときに安倍政権は、アベノミクスは第二ステージに入ったと。
これは二〇一五年の六月の日本再興戦略改訂版二〇一五に書いてあることでございまして、第二ステージというのはどういう意味かと申しますと、短期の政策は終わったんだと。つまり、労働需給はタイト化して、GDPギャップは急速に縮小するというのが前提になりまして、基本的にデフレから脱却しているのだと、したがって、第二ステージは供給を重視する、そういう政策に変えるのだというのがこの第二ステージの意味でございます。
現実に、この第二ステージというものが、この十月に新三本の矢ということで、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障という、これが新三本の矢ということで、これを、名目GDP六百兆円というものを生産性革命によって生み出すという、その第二ステージというのは、まず生産ありきという状況になるわけです。それは、言うまでもなく需給不足は基本的に解消しているという認識でありますので、当然生産をいかに活発にするかということが目的にされるわけであります。
そして、生産革命を行うには労働分野の改革が必要でありまして、そして消費が拡大し、その結果として賃金が上がっていくという考え方を取っているわけです。しかし、考えてみますと、それは逆でございまして、最低賃金を引き上げて、あるいは成果配分としての賃金の引上げがあって消費が活発になり、産業分野の生産とともに生産性が向上していくというのが基本線でありまして、そうした考え方になっていないというところがやはり大きな問題点であろうと思います。
私たちは、米国オバマ政権の経済政策に学ばなければならないというふうに考えます。オバマ政権は何を大きな課題としたのかといいますと、最低賃金を大幅に上げることであると。現在、米国の連邦最賃は七・二五ドルでございますけれども、それを一〇・一〇ドルに上げるべきだということで、議会にハーキン・ミラー法案というのを是非通せと、こういうことでオバマ大統領が議会に要請しましたが、共和党が主流の議会はそれを拒否するということになって、オバマ大統領は、それでは連邦の契約そして仕事にはこの一〇・一〇ドルを適用するというまさに大統領令に署名するということで実施してくるということになります。
この意味は、連邦最賃を一〇・一〇ドルに上げれば、最低賃金で働く約二百万の賃金を引き上げて、そして一千万人以上の貧困者を貧困から救うという、そういうことができるのだと。貧困から救うというのは賃金を上げるということによって実現でき、それは企業に任せるのではなくて、公的な形でそのルールを定め、それを実施していけば貧困者がそこでなくなっていくと。
これは、我が国のワーキングプア対策にとっても極めて重要な教訓であると私は考えます。現在、年収二百万以下のワーキングプアと言われている人が一千百万人も存在しまして、貯蓄なしの世帯も増加の傾向にあるという中で、この米国のオバマ大統領の最低賃金を大幅に上げるというこのまさに大統領令は大変重要な意味を持っているのではないだろうかと。全国一律千円あるいは千五百円という、こういう課題を財政というものとリンクさせる。つまり、積極的に零細中小企業に援助するという形で最低賃金を上げていくという、そのことで私は日本の経済の底上げというものが可能になると思っております。
それからもう一つ、オバマ大統領が述べたのは、富裕層の税負担を重くするバフェットルールを提唱いたしました。バフェットという方は、大変な富豪の方でありまして、その方が提唱した少なくとも年収百万ドル以上の人は実効税率三〇%以上を負担すべきであると。御自分は一四%だったらしくて、秘書の方が実効税率が高いというので驚きまして、これはおかしいと、どう見ても。そういうものを提唱いたしまして、やはりオバマ大統領が議会にこれを要請したわけでありますが、これもやはり議会共和党の反対に遭いまして実現することができなかった。
これは、やはり私は大変重要な教訓を日本にも与えているのではないかと。二〇一六年の三月に安倍首相の招きで日本を訪れたジョセフ・スティグリッツ教授が、消費税の増税を延期すべきことであるとか、あるいは法人税の減税に対して否定的な意見を述べたわけであります。現在、米国の民主党の中で大変大きな力を持ち始めましたバーニー・サンダースという方が、最低賃金を時給十五ドルにすべきであると。これは、民主党のヒラリー・クリントンが戦いましたけれども、ヒラリーさんの選挙公約でもございました。そして、応能負担の税制改革をすべきであるし、さらに単一基金の国民皆保険制度をつくるべきであるし、積極的なインフラ投資も実施することによって米国経済の変革というものを唱えているわけであります。
現在、残念ながらトランプ政権になりまして状況は大きく変わりましたが、アメリカには二年ごとに選挙がありますし、四年ごとに大統領選挙がありますので、その中で大きくこの変化を私は期待しているというものでございます。
したがいまして、日本の予算編成も、今までアベノミクスで展開されてきました富裕層を重視する経済政策というものから中間層を重視するそうした経済政策に大きく転換する、そういう時期に来ているのではないかというふうに私は考えるわけであります。
以上、御清聴ありがとうございました。
○大門実紀史君 本日はお忙しいところありがとうございます。
この公聴会は経済・財政・社会保障でございますので、最初、全体に共通する話を三人の先生に伺いたいと思います。
お聞きしたいのは、福祉・社会保障分野における、何といいますか、市場原理主義の導入といいますか、福祉・社会保障分野の市場化、マーケット化が進んできたわけですけれど、それに対するお考えを聞きたいなというふうに思っております。
振り返りますと、九〇年代から新自由主義的な流れが強まって、日本でも、特に小泉・竹中路線ということで、あの辺りから大変新自由主義的な流れが強まってきて、新自由主義の自由というのは、もう人間の自由じゃなくて企業のもうけの自由のことでありますけれど、そういう中で、一つ、雇用の、先ほどからあった雇用の流動化と非正規雇用の拡大とあって、もう一つはやっぱり民営化路線というのがありまして、何でも官から民がいいんじゃないかというような、もうみんながそういうふうに一辺倒になった頃がありまして、その中で、福祉分野も民間企業を参入させようと、市場原理を入れてマーケット化していこうというようなことが強まってきて、元々、官は、公は効率が悪いと、民間は効率がいいんだというようなことを掲げてやったんですけれど、それを過大宣伝してやったんですけれど、その結果今いろんな問題が起きているんではないかということで、保育所が足りないという問題も、もう公立保育所は余り造らないでほとんど減らしていって、民間にやってもらおうと。民間が占めてくる中で、やっぱり賃金が、保育士の待遇がどんどん悪くなって、今度は保育士のなり手もなくなって保育所が増やせないというような悪循環に今来ているわけであります。
そういう面で、申し上げました福祉分野の市場化、マーケット化、こういうものについて、この流れについて、三人の公述人の方々、それぞれいかがお考えか、聞かせていただきたいというふうに思います。
○委員長(山本一太君) では、まず稲葉公述人。
○公述人(稲葉光彦君) 福祉への企業参入というような問題、これは保育所だとか、いろんな面で、障害者施設だとか、いろんなところでかなり参入がされてきているということでございます。
これは、今の状況でありますと、やはり公立の、本来なら公立の保育所が増設されれば、増強されればいいと思いますけれども、やはり財政的な問題だとかいろいろ考えますと、やはり企業型、福祉関係の参入というようなことでいろいろ、そういう点で今相当いろいろ福祉関係に企業が参入してきているということは事実であります。
しかし、そこで、考え方としまして、企業でありますので採算性というようなことを重視してしまうのではないかという懸念、そういう面がやはりあると思います。そういう面で、やはりその質の担保というものをしっかり対応していかなければならないと思いますし、それから私は、社会保障という問題は、やはり余り財源を、これは一番大事な問題であると思います。やはり、安心、安全の社会という、そしてまた、やはり国民が一番求めているのは社会保障のやはり充実というようなことであると思いますので、これに、余り予算を削減いたしますと大きな問題になってくると思います。
そういう面で、社会福祉は経済のマイナス効果ではないか、社会保障というのはマイナス効果の要因ではないかというような考え方もあると思いますけれども、いや、それは逆の、社会保障が充実することによって経済も回ってくるというようなことであると思います。そういう面で、余り社会保障に、財源を削減するというのは大きな問題であると思いますし、そういう面で、やはり待機児童解消という問題についても、やはり保育所不足、これは、今、今はどうしても企業が参入、あるいは小規模な形の保育所というのは、今現在はそういうふうな形で解消するということでありますけれども、やはり公的な保育所がベターであると、そう思っております。
○公述人(井手英策君) まず、そもそもの話としまして、市場化をすれば経済が成長するのか、人々の所得が増えるのかということを考えなければいけないと思います。私の知る限り、一九六〇年代、七〇年代、八〇年代というように、先進国ではなく世界全体の経済成長率を見てまいりますと、実は、新自由主義化が進む七〇年、八〇年、九〇年、二〇〇〇年、年を追えば追うほどに平均的な成長率は下がっております。したがいまして、まず、そもそもの問題として、自由化、市場化が経済の効率化あるいは経済成長、所得の増大につながっていくかどうかは自明ではないということを確認する必要があると思います。
二つ目に、市場化が目指すものは価格の競争だと思います。したがって、同じサービスをできるだけ安い値段で提供するということに力点が置かれようかと思います。しかしながら、その場合には品質的な保証は行われない、あるいは供給の規模自体が企業側のロジックで決まってしまうということではないかと思います。反対に、価格の競争ではなく、質を競争させるという視点があろうかと思います。それは、同じ価格のサービスをより高い質で提供していくというような、こういう競争であります。とするならば、市場化によって価格の競争を図るのか、あるいは、そうではなく、公的なコントロールの下で質的な競争を促していくのかというのは、一つの論点たり得るのではないのかと思います。
では、なぜ二つの効率性、二つの競争がある中で、経済的な効率性や価格の競争が選択されるのか。それは、たった一つ、予算制約だと思います。すなわち、この国の財政にはお金がないということではないのかと思います。したがいまして、質的な競争を目指す、あるいは質的なコントロールを充実していくのであれば、やはりこの予算制約を突破していくということが重要である。
今までのように、成長に頼って経済を成長させて予算制約を緩和するというのがこれまでの考え方ですが、私はそれはもう不可能だと考えています。したがって、人々が応諾可能な増税の仕組みをきちんと提示しながら、そのお金を社会保障の充実や質的な競争のために使っていくという視点を提示できるかどうかが問われているように思います。
○公述人(萩原伸次郎君) 市場経済と公共の部門という関係になろうかと思います。
市場経済は市場経済として効率性を追求していく、これはそれなりの当然理由があるわけでありまして、その分野の発展というもので経済が展開してくる、これは当然のことでございますが、しかし、その市場メカニズムで全て律することのできない分野、これがかなり私たちの社会には存在している。したがって、その分野に関しては、やはり公的なものが重要視されなければならない。例えば、医療、福祉ですね、今、先ほどの待機児童問題その他もそうでありますが、そういうものが非常に重要であるということを皆が認識すれば、それに対する公的な重要性ですね、ということに恐らくなってくる。
しかも、例えば、先ほどの待機児童云々の問題でもそうなわけですけれども、それが我が国全体の経済にとっても、今人口が減ってきているというそういう状況の中で、どのように人口を増やしていくかという、そういう全体的な戦略としても、やはり、就学前の教育ですね、というようなものを公の立場で考えていくというのがいよいよますます重要なことになってきているのではないだろうかと。
あるいは、医療の面でもそうですね。医療の面でも、だんだんこの頃、日本の国民皆保険制度も怪しくなってきているわけでありますが、そのことによって我が国全体の国民のレベルが落ちてしまうということではやはり大きな問題になるわけでありまして、当然、そうした公的な仕組みというものの必要性、それを国民が認識し、そしてそれを皆で議論して、そして未来の日本の発展と繁栄というものを考えていく、これが大変重要なことではないかと私は考えております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
井手先生に伺います。
井手先生の八ページの資料を見て、大変刺激的な提案で、もっと勉強をさせていただきたいなというふうに思います。人々のマインドといいますか、租税抵抗とか不安の平準化というふうな、本当に頭を柔らかくして私たちもいろんなことを考えなきゃなというふうに大変刺激を受けました。
ちょっとお聞きしたいのは、御提案は分かったんですけど、最初のこの当初所得ありますよね、この八ページでいきますと、この二百万と二千万の格差。再分配とか後でどうするかと、いろんな形があると思うんですけれども、その当初所得の格差、これをどうまず是正するのかという点で、どのようにお考えでしょうか。
○公述人(井手英策君) 大きく二つの方向性があるように思います。
一つは、まずは今日も論点になっておりますけれども、あらゆる人々、あらゆる子供たちがきちんと教育を受けられるようなチャンスを保障していくということだと思います。そうすることによって、イニシャルインカム、当初所得の段階での格差を小さくしていこうという戦略であります。つまり、貧しいということによって教育を受けられない、そして質の高い労働者になれないというような問題を回避していくべきだということです。
それともう一つは、何といいましょうか、職業教育のような、つまり自分自身が人生を選択する上で、現状ではほとんどの人々が大学に進むというような道しか提示されていないわけであります。そうではなく、もうちょっと若い段階で、早い段階で、あらゆる子供たちが大学に進むだけではない別の可能性を模索していくような可能性についてもっともっと検討されてよいと思います。
すなわち、ある特定の技術を持っているような道を目指すような選択肢をつくってあげる。そうすることによって、多くの人々が自ら選択した結果そういう道に進んでいくことができるようになれば、そういう職業に対する尊敬の念やレピュテーションのようなものも高まっていき、もう少しそういった中での職業間の格差というものを是正していく道につながるのではないかと思っております。
○大門実紀史君 ありがとうございます。
先ほど、中西さんからもあったんですけれど、そもそも九七年、九八年以降、この大変化の大本は何なのかということの一つに、先生おっしゃったように、あの九五年の日経連の新時代の日本的経営の日本の雇用政策、賃金政策を大きく変えるという問題があったと思っておりまして、当初所得でいえばやっぱり賃金格差を是正することが一番重要ではないのかなと実は思っているところでございます。
その点で、萩原先生に伺いたいんですけれども、この間、昨日も本会議でちょっと日米経済関係について質問をさせてもらったんですけれども、アメリカに今起きている問題ですよね、格差とか産業の空洞化、特に格差の問題ですね。日本でも同じようなことが広がっております。その点で、このアメリカのトランプ、この前も一月にアメリカ行ってきたんですけれども、いろんな方に話を聞いたんですけれども、そのときに、端的な話として、トランプが大統領になるぐらいだったら、トランプ対サンダースで選挙をやらしたかったというぐらい対決軸が本当はそこにあったという話を聞いたりしたんですけれども、萩原先生、アメリカにお詳しいということで、そのサンダース旋風って何だったのかと。あれだけの支持を得たサンダースの政策って何だったのかと。
それがアメリカの今の問題をどう解決する見通しがあったのかとか、今の日本にも非常に勉強になることだと思いますので、先ほどの最低賃金だけじゃないと思いますけれども、オバマ・ケアなどのことも含めて、サンダース政策って何だったのか、ちょっと御紹介いただければと思います。
○公述人(萩原伸次郎君) 昨年、大統領選挙がありまして、トランプ氏が大統領になったわけであります。相手がヒラリー・クリントンということでありました。重要なポイントは、その民主党の中の候補者選びでサンダース氏が敗れたということが大きな問題点でございました。FOXというメディアがございますけれども、そのメディアが世論調査をしたときには、五月の段階ですが、ヒラリーとトランプではトランプが勝つでしょうけど、サンダースとトランプがやればサンダースが勝つだろうと、こういう予想も出てきたほどでありました。
現在、アメリカでは大変な新自由主義的な経済政策の結果格差が開いておりまして、従来タブーとされていた社会主義という言葉がもはやタブーではなくなったと。
御承知のとおり、サンダースという人は、一九九〇年にバーモント州の下院議員として出たわけですが、そのときには共和党、民主党いずれにも属さない、共和、民主いずれも大資本あるいは大金融機関の代弁者だ、私は独立派として、しかもソーシャリストとして議員生活を送りたいということで、当選して以来一貫して無所属と。しかも、無所属でも、ソーシャリスト、社会主義者、デモクラティックソーシャリストという民主的社会主義者だということを公言して今日に至っているわけです。
しかし、それでは世の中を変えることはできないということに気付いたサンダース氏は、昨年、昨年というよりも二〇一五年ですかね、大統領選に出るためにあえて民主党に入って政策を進めていくと。彼の政策は、基本的にはまさにルーズベルトが展開した政策、それをアメリカで実現していくと。つまり、ルーズベルトが展開し、社会主義的なものが次々とこの新自由主義の中で崩されていったんですね。それをやはり九九%の国民に取り返すのだというのが基本的にサンダース氏の考えでありまして、最低賃金十五ドル、これはヒラリー・クリントンもそう言いましたし、それから国民皆保険制度ですね、これも単一の、要するにファンドにおけるところの国民皆保険制度を導入し、そして応能負担の税制というものを実現していくと。
これは、先ほど申し上げたとおり、バフェットというアメリカの大富豪でありますが、この人が、もう是正すべきだ、是正しないとやはり社会がまさにおかしくなると。そういう議論も出てくるわけでありまして、そうした是正の動きが大変強く今日出てきております。
そして、しかもそのサンダース氏の考えというのは、現在民主党の中の非常に大きなグループ、というよりは、この前米国民主党の委員長選びがありましたけれども、基本的にはヒラリー派の人が委員長ですけれども、それに接近してサンダース派の人がすぐ副委員長ということに指名されまして、そのヒラリー・クリントン派とサンダースの両委員長、副委員長が共に、今までの民主党とは違った政策を実現していこうと、そういうことで、現在トランプ政権でありますが、それに対抗した戦略を展開していくという、そういう点でいいますと、アメリカは大きく変わってきているということは実感できるかと思います。
以上でございます。
○大門実紀史君 終わります。ありがとうございました。