<参考人>
学習院大学経済学部教授 遠藤久夫君
北海道がんセンター名誉院長・北海道医薬専門学校学校長 西尾正道君
東京大学名誉教授 醍醐聰君
<意見陳述>
○参考人(遠藤久夫君) 学習院大学経済学部の遠藤でございます。医療経済学を専門としております。
時間が限られておりますので、ちょっと文書の読み上げで失礼させていただきます。
本日は、このような場に意見陳述する機会を与えていただきまして、大変光栄に存じております。
私は、二〇〇五年から二〇一一年までの六年間、厚生労働省の中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協の委員を務めておりまして、そのうち後半の二〇〇八年から二〇一一年の三年間は会長を務めさせていただきました。現在は社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会の部会長を務めております。そういう関係で、我が国の医療保険制度及び診療報酬あるいは薬価制度について知見があるということで今回参考人として意見を述べる機会をいただいたと、このように考えております。
まず初めに、我が国の国民皆保険について述べさせていただきます。
御案内のとおり、昭和三十六年、一九六一年に国民皆保険体制が発足し、全ての国民が公的な医療保険に加入し、医療の保障を受けられるシステムになっているわけであります。また、我が国の医療保険では、有効性、安全性が確認され、必要かつ適切な治療は基本的に保険給付することとされております。また、高度な医療技術や革新的な医療、医薬品が開発された場合、それらのほとんどは順次保険収載されて公的医療保険の対象となります。つまり、我が国の公的医療保障制度では、提供される医療の有効性や安全性を担保するだけではなく、新しい技術や革新的新薬も積極的に保険給付の対象としているわけであります。さらに、高額療養費制度等々によりまして、高額な費用が掛かる治療においても一定額の自己負担で受けられる仕組みになっているわけであります。このように大変恵まれた医療保険の仕組みは世界にも類がなく、まさに世界に冠たると言える国民皆保険体制だと考えることができると思います。
しかしながら、その一方で、高齢化の進展に伴って医療費が急速に伸びていることもまた事実でありまして、様々な制度改革が現在も求められて進行しているということは御案内のとおりであります。
さて、TPPとの関連でお話をさせていただきたいと思います。
TPPの議論が起きた当初は、TPPの締結によりまして、いわゆる混合診療が解禁され、我が国の皆保険体制が崩壊するのではないか、あるいはアメリカの要求で我が国の医薬品や医療機器の保険償還価格が高くなり、医療費を高騰させるのではないかという、そういう議論あるいは懸念が巻き起こったわけであります。
私は、まず申し上げておきますと、いわゆる混合診療の解禁には反対の立場であります。混合診療の禁止というのは、御案内のとおり、一連の医療の中で自由診療と保険診療を併用した場合には保険診療部分も自己負担となると、こういう仕掛けでございますけれども、この仕組みの評価は様々で、いろいろな意見もございますけれども、私は高く評価しておりまして、我が国の国民皆保険制度の土台を支えている重要な要素の一つだと思っております。
保険診療であれば有効性と安全性が担保された医療しか対象とされませんし、保険診療であれば患者の自己負担は軽減されて、医療へのアクセスが保障されます。さらに、この混合診療を禁止している、こういう体制の下では、新薬を保険収載せずに自由診療として提供することは、患者の自己負担が非常に大きくなるため、製薬企業は新薬を速やかに保険収載しようといたします。その結果、患者は革新的な新薬でも保険診療として少ない金銭的負担で利用することが可能となると。もし混合診療禁止の仕組みが全くなければ、有効性の高い革新的な医薬品がいつまでも保険の対象とならない可能性もあるわけでございます。
したがいまして、TPPの締結が混合診療の解禁をもたらすという懸念が現実のものとなればゆゆしき問題だと私自身も思っておりました。さて、その実態はどうだったのか。こういう関心を持っておりましたので、TPP協定の関係条文、私の能力の範囲において読んでみたわけでありますけれども、混合診療の解禁につながるような内容は見受けられませんでした。その意味で、TPPの締結に伴い、混合診療が解禁され、ひいては我が国の国民皆保険体制を揺るがすという意見は杞憂であったのではないかと、このように思っております。
一方、医薬品は公的医療保障制度の重要な要素を形成しておりまして、一体不可分な存在でありますから、社会保障の一環だとは言えるわけですけれども、一方で、工業製品であることから、TPPのような貿易のルールの議論との親和性は高いというわけで、こちらの方はTPPの議論の俎上にのるだろうとは思っておりました。実際に、TPP協定には医薬品の保険収載の手続に関する規定、あるいは締約国での協議の枠組みに関する規定が設けられております。
この内容に触れる前に、まず我が国の薬価制度について簡単に述べたいと思います。
私は、先ほど申し上げましたように、中医協委員六年を務めたのですけれども、そのうち四年間は、薬価専門部会という中医協の中の薬価基準を決める部会でありますけれども、そこの部会長を務めておりまして、個々の医薬品の薬価収載のみならず、薬価制度の改革に関わってきたという経験もございます。
まず、我が国の薬価算定プロセスは、歴史的に累次の見直しを行いまして、その結果、他国よりも透明かつ公平公正な仕組みになっているということを申し上げておきたいと思います。薬価そのものは健康保険法に基づいて厚生労働大臣が定めるものでありますが、算定に当たってのルールには、算定基準という形で保険局長が通知の形で広く公開されておりますので、誰でも見ることができます。もう企業も当然これを自由に閲覧して、そのルールを十分把握した上で薬価収載の希望を提出することになっております。
また、薬価算定の手続も透明かつ公平公正に運用されております。まず、新薬の薬価を決める場合には、中医協の下部組織であります薬価算定組織というところにメーカーが申請を出しまして、そこで議論がされて薬価の原案ができます。そのプロセスにおいて、現在は申請企業は二回意見を表明することができます。つまり、不服意見を表明して、そこでまた再検討するというプロセスになっております。この薬価算定組織は、ほとんどの審議会は全て公開になっておりますが、薬価算定組織に関しては、企業秘密の事項に基づいた議論もあるということでこれは非公開となっておりますが、企業秘密を公開しないということは他の国も同様であります。
また、これも重要でありますけれども、薬価の算定においては、外国企業と内資企業は一切差別はしておりません。全く同列に取り扱っております。そういう意味で非常に公平公正な仕組みになっているということでございます。
次に、今度は薬価制度そのものを見直す場合はどうするか。これは、先ほどの薬価算定組織ではなく、中医協の中にあります薬価専門部会、それと中医協の総会、この二つで議論をするわけであります。
薬価の見直しというのは二年に一回行われます。これは薬価改定、診療報酬のない奇数年に必ず議論されて何らかの改革が行われるわけでありますけれども、この見直しに際しては、見直しによって影響を受ける製薬企業の代表者あるいは卸業者等々、こういう方たちの意見陳述を一年間に二回行います。その中にはアメリカやヨーロッパの医薬品業界の団体の代表者が必ず含まれております。そういう意味で、日本だけで決めているのではないということであります。
確かに、TPP協定には医薬品等に関する附属書がありまして、医薬品の保険収載及び保険償還価格決定に係る透明性及び手続の公正な実施について定められております。具体的には、この附属書の第三条で三つのことを言っておりまして、医薬品の保険収載の検討を一定期間内に完了させること、手続規則や方法、指針等を開示すること、それから申請者に意見提出の機会を与えることが求められているわけですが、これらを我が国の先ほどの薬価算定のプロセスに当てはめて考えてみますと、まず、医薬品の薬価収載は原則六十日間、遅くとも九十日以内ということになっております。また、先ほど御説明いたしましたように、薬価算定の基準は広く公開されておりますし、申請者に意見提出の機会も、二回あるというふうに申し上げましたけれども、ございます。
以上のように、我が国の薬価算定プロセスは既にTPP協定が締約国に求める内容をクリアしているわけです。したがって、TPP協定によって我が国の薬価算定プロセスを何か変えなければいけないということはないというふうに考えます。
次に、そうはいっても、TPP協定によって外国政府から様々な要求が強まるのではないかという懸念もよく聞かれます。
そもそも我が国は、薬価制度や医薬品、医療機器について、米国政府などとバイで様々な交渉協議をしてきた経緯があります。外交交渉自体は政府が行っておりますので私がその詳細を知る立場にはありませんけれども、薬価制度や医薬品、医療機器に関する交渉結果を見ますと、これは是々非々で対応しているということが分かります。我が国の国民の利益になるもの、あるいは我が国の医療保険制度の持続可能性を高めるもの、あるいは医薬品、医療機器業界の発展のため内資企業も含めて切に切望しているものなどについては、制度変更を行うことがありますが、国民皆保険制度に悪影響を及ぼすものや不当な要求は、再三要望があっても拒否し続けているというふうに思います。TPP発効後、もし外国政府と協議することがあったとしても、日本政府はこれまでどおりこのような姿勢で臨めば、外国政府の不当な要求を受け入れることにはならないと思います。
今まで申し上げましたとおり、私としては、TPP協定の発効によって我が国の国民皆保険が脅かされたり薬価が高騰するといったことは生じないと思います。また、我が国の制度はTPPが求める水準を既にクリアしておりまして、むしろ締約国間で統一的なルールを定めることによって我が国の医薬品産業の海外への進出にとってプラスになることが期待されると考えます。
これからも国民皆保険をしっかりと堅持していただいて、また先進国として外国政府との協議には誠実に応じつつその要求には是々非々で対応していただくという、このようなこれまでの対応を日本政府にはお願いしたいというふうに考えております。
私の意見陳述は以上のとおりでございます。どうもありがとうございました。
○委員長(林芳正君) ありがとうございました。
次に、西尾参考人にお願いいたします。西尾参考人。
○参考人(西尾正道君) 北海道がんセンターの名誉院長をやっております西尾と申します。
私は、放射線治療で四十年ほどずっと一線の病院でやってまいりました。原発問題なんかでもいろいろ発言しているんですけれども、日本人のこういった放射線の健康被害も非常にうそだらけで塗り固められているので、大変僕は危機意識を燃やしているんですけれども。
TPPに関しては、水曜日の午後にこの参考人のお話、電話を受けまして、昨日一日でちょっと資料を作りました。以前書いたものなんかを集めて四つの資料を作っております。
一番目は、講演なんかでスライドとして使っているスライド、ポイントになるものを十六枚ほど用意しました。今日はその内容だけで説明になると思いますけど。
二番目は、医療がどういうふうに変わるかというようなことを、ちょっと長文ですけれども書いたものがありましたので、持ってまいりましたので、後ほど読んでいただければと思います。
それから、三点目と四点目の原稿は、北海道医師会の雑誌に、お医者さんもTPPのことに関しては余り問題意識がないということと、それから、実は福島の原発事故の健康被害というのはこれから出てくるとして、本体は微粒子の取り込みによる内部被曝であるということで僕自身の頭も大分整理付きましたので、それをちょっと医者向けに書いた原稿でございます。三、四は投稿原稿ですけれども、一応医師会の雑誌に載った原稿でございますので、これもまた直接関係ないかもしれませんけど読んでいただきたい。特に、三番目のTPPによって医療はどう変わるかということに関しては、実は経済的な問題だけじゃなくて、健康被害が本当に深刻になるというふうに僕は思っています、最後、ちょっとお話ししますけれども。
それとあと、よく調べてみますと、このTPPというのはとんでもなく不平等な条約なわけですね。例えば、ISD条項というのは皆さん御存じだと思いますけれども、そのほかにラチェット条項というのがありますね。これは、一回取り決めたらもう後戻りできない、とんでもなく日本が不利になってもとにかく変えることはできないとか、それから、ノン・バイオレーション・コンプライアンツ、とにかく思うようにアメリカの企業が利益を取らなければ、得れなければ日本を訴えることができるとか、それから、スナップバック条項といいまして、アメリカに不都合なことがあればアメリカだけが一方的に関税撤廃ができるとか、大変な不平等な条約がたくさんちりばめられております。
こういうことだけじゃなくて、医療を中心にしてちょっとお話ししますけれども、このスライド原稿の一枚目ですけれども、かつて自民党は、選挙でうそはつかない、TPP断固反対と言っていました。今の稲田防衛大臣はかつて、TPPのバスは終着駅は日本文明の墓場だという発言をしているんですけれども、もうころっと、とにかく皆さん、個人がうそをつくというレベルじゃなくて、党としてうそをついている、百八十度態度を変えちゃう。一体国民は誰に投票したらいいんですか、これ。こういう党の公約そのものも破棄しちゃう。修正どころか百八十度違うようなことを言う。これはもううそとしか言いようがない。これらの倫理的な、道義的な問題って一体どうなっているんでしょう。恥ずかしくないんですかね、TPPを推進している、何年か前に断固反対していたのが。とにかく、こういった形で息を吐くようにうそをつかれたら、やっていられません、国民は。
それで、そもそも六千ページに及ぶこの内容を本当に皆さん読んでいるんですか。情報を出してくださいと言っても、のり弁当の段階です。こんなことで、知らないで、とにかくみんな、赤信号みんなで渡れば怖くないといって今皆さん賛成しようとしているわけです。冗談ではない。こんな条文が、まともにチェックもしていないわけですから、実際には赤信号も見ないで今渡ろうとしているわけです。これが今の現実です。
実際に、TPPというのは、基本的には、歴史的には、昔戦争、今TPPです。昔は戦争を仕掛けて国益を取りました。戦争をするのは国益を取るためです。ところが、公然と核兵器を持つ時代になったら、お互い面と向かって戦争はできない。そうなると、地域紛争はもちろん起こりますけれども、国家として国同士がぶつかり合えないですから、国益を取る、国益というよりもむしろグローバル企業ですけれども、国を動かしているグローバル企業の利益を取るために、貿易上の仕組みを変えて利益を取ろうというのがまさにTPPでございます。これがTPPの本質でございます。
それから、三ページ目ですけれども、米国の医療というのはとんでもない高い。GDPの二〇%以上を占めていますし、日本の七倍の医療費が使われている。実際にですけれども、TPPに入るということは、結局アメリカナイズされた医療になるということでございます。もうお互いに助け合うとか共に生きるなんという発想はないんです。もうとにかく医療も完全に金もうけの道具になるというふうに考えてください。
実際に、四枚目のスライドですけれども、これは米国のロビー活動費、これ、この活動費見たら、何がターゲットですか。農業とかそういうものじゃないです、実際には。ターゲットは医療です。医療であり、医療産業の、保険も含めた医療業界の仕掛けなんです、最大のターゲットは。これは、二〇一三年の三月四日付けのタイムスに、二十八ページにわたる米国医療の驚愕、医療ビジネスという特集号が出ていました。まさにこの中から取った記事であります。こういうことによって、日本の医療は多分かなり大幅に変わると思います。
ちなみに、米韓FTAが二〇一二年に締結されましたけど、韓国の医療費は二年間で二倍になりました。二倍になりました。多分、日本は韓国の医療規模の四倍ぐらいありますから、恐らくあっという間に膨大にお金が飛び上がる。今、オプジーボで半額にしようなんという議論をやっていますけれども、そんな話じゃ全然なくなります。本当に深刻です。遠藤先生の意見とは僕は全く反対の考え方をしていますけれども、そういうことです。
五枚目ですけれども、従来、一九八五年以来、とにかく日本の医療市場を開放するようにアメリカはずっと働きかけてまいりました。最近では、新薬創生加算のようなものをつくったりして、非常に製薬会社が有利な形で日本市場に参入してまいりました。しかし、このTPPが、まさにこういった米国の日本の医療産業の開放を行う最後の仕上げがTPPだというふうに僕は考えております。
ちなみに、米国業界と保険業界の標的は日本市場であるということは、これは全国保険医団体連合会の寺尾さんの論文からサマリーを取ったものです。これ六枚目です。後から詳細は読んでください。時間がありませんので飛ばします。
七枚目は、抗がん剤の価格が今こういうふうになっています。私が医者になった頃は、一か月の抗がん剤は数千円でした。九〇年代になって数万円になりました。二十一世紀になって数十万円になりました。そして、三年前の免疫チェックポイント阻害剤が出たら数百万円になりました。ですから、これでもう桁三つ違っているんですね。桁三つ違っていますけれども、TPPが締結されればどうなるか。要するに、アメリカの製薬会社のほとんど言いなりの値段になりかねない。
中医協ではチェックできません。それから、中医協のやっていることが透明性とか公平性を欠くといってISD条項で訴えられたら、もうそれはできませんので、かなり製薬会社の意向を酌んだ価格になる。これは今、本当に日本の医療費というのはもうとにかくパンクしつつありますけれども、そんな話じゃ全然ありません。もう断トツにとにかく日本の医療費は飛び抜けます。ですから、最終的には皆保険も実質的に崩壊するというふうに考えております。
実際に、六枚目ですかね、TPPで日本の医療はどう変わるかということになりますと、患者負担が増大しますし、混合診療が解禁されます。民間医療保険の拡大があります。それから、営利団体が、営利の会社が医療産業に入ってきます。そういうことで、今でさえ薬剤費、医薬品は三兆円以上の輸入超過になっていますけれども、もっともっとこれが広がっていくというふうに考えられます。
それとあと、次ですけれども、このままでは、ですから日本の医療が崩壊して、日本人の健康は守られません。その下は、具体的にどういうことも例えば想定されるかというと、例えば先進医療みたいなことが今やられていますけれども、それが医学的に効果があるということで保険診療にしようとしたときに、先進特約なんかをやっている保険会社が、利益を損ねるということで、保険診療にしたらそれは企業としては非常に損をするからということで、訴えられたら負けます。ですから、新しい新技術が保険診療にできないというような事態も考えられますし、もっと言いますと、実際の手術の術式まで特許料を取るというような事態になります。そういうことで、医療費も高くなりますので、国民はみんな医療保険に入らざるを得ないというような社会にもなりかねないというのがございます。
あと、十枚目ですかね、TPPの根底にある思考というのは本当に正しいのかと。
基本的に、TPPの本質は、グローバル企業が一般国民を犠牲にした金もうけでございまして、それから、自由貿易というのは善であるという前提なんですけど、これはやっぱり国の状況とか経済格差みたいなのを考えてやるべきであって、これ自体が本当にいいかどうかというのは話が別ですね。
いわゆる産業革命以来、富の源泉というのは労働力でした。しかし、今は労働力じゃなくなった。ロボットも使える、AIも使える。そうしたら何が富の源泉かというと、科学技術を持つか持たないかです。それがまさに富を生み出すものになった。そうすると、科学技術の持つ負の側面は隠す、隠蔽するということになりますし、とにかくそういうことが金もうけになっちゃうと、とんでもない格差ができます、経済的に。
それをどう社会正義だとか公平性を保って再配分するかということが、僕は本当の意味でのこれからの政治家の仕事だと思います。こういった本質的にやるべきことをきちっとやらないで、どんどん企業がもうけるようなところに世界をどんどん誘導していくというのは、僕はとんでもないことだと思います。そういう点では、議員としてというよりは、一人の人間として、共に生きるような日本の社会をどうつくるかということを本当に真剣に考えていただきたい。
それで、最後になりますけれども、生命を脅かすTPPの二つの大きな問題というのがございます。これは今医療問題を言いました。もう一つは健康問題です。
例えば、この四十年間、ホルモン依存性のがん、女性は、僕、医者になった頃、乳がん一万五千人でした。今九万人です。前立腺がんもほとんどいなかったけど、今前立腺がんも九万人で、男性の罹患者数のトップになりました。卵巣がんもどんどん増えている。子宮体がんも増えている。ホルモン依存性のがんが五倍になっているんですよ。この四十年間でアメリカの牛肉消費量は五倍になりました。まさに、エストロゲン入りの、女性ホルモン入りの餌を与えて一割生産性を高めて、そういう肉を食べている日本人もアメリカ人も五倍になっているんです、ホルモン依存性のがんが。
それから、例えば耐性菌もそうですね、豚や羊には、鳥には抗生物質入りの餌を与えて生産性を高めている。そのため、人間が肺炎になってもなかなか効かないという問題もございます。
それから、残留農薬がとにかく世界一緩和されている。とんでもない話だ。実際に今一番使われているネオニコチノイド系の農薬が自閉症の原因であるということが突き止められています。小児の神経発達障害の原因であるアスペルガー症候群も含めたトータルな子供のそういう精神発達障害の原因がこの農薬である。最近、WHOは、今のネオニコチノイド系の農薬は発がんにも関係しているとBランクにランキングされました。それから、認知症にも関係している、うつ病にも関係しているという報告がどんどん出てきている。このままいけば、アメリカの若者が、子供たちが二人に一人は自閉症になるよというハーバード大学から去年論文が出ました。これが、本当にこういうことが深刻なんですね。
遺伝子組換えも日本は一番食べている。アメリカにとって大豆やトウモロコシは家畜の餌です。ところが、日本人は納豆で大豆食べます。みそやしょうゆの原材料です。一番食生活で遺伝子組換えの影響を受けるのは日本人の食生活なんです。こういうものが全くチェックされないで、世界一遺伝子組換え食品が普及している。これはもうまさに、日本人の健康そのものが保てません。
がん患者さんが増えているというのは、高齢者だけではないです。こういう食生活を含めて増えているし、更にもっと深刻なのは、昔六十以上になってがんになったのが、今四十代ざらです。約二十年間、若年化してがんになっています。これが現実です、僕の実感として。
こういう健康問題というのが、自分たちの国で農薬を規制したり、遺伝子組換えの表示がちゃんとできるようにしたり、そういったことがTPPに入った場合にできなくなっちゃうんです。日本の国の決まりよりもTPPの方が上位にあるわけです、位置されているわけです。こういう現実をやっぱり冷静に考えていただきたいと思います。
最後の二枚ですけれども、最近では遺伝子組換えでサケなんかも五倍ぐらいの大きいものが作られていますね。これがもう本当に規制しなくていいのってことですよね。本当に何があるか分かりませんよ。
例えば子宮頸がんワクチンだって、今までワクチンというのは、不活化ワクチンか弱毒化ワクチン、この作り方で作っていたんです。だから、大きな問題は起こらなかった。弱毒化か不活化にして作っていた。子宮頸がんワクチンというのは、遺伝子組換えを作っているんです。遺伝子組換え技術で作って、さらに効果を高めるためにアルミニウムのようなアジュバントを加えて作っているから、ああいう予期しない問題が起こっちゃうわけです。
もう少し冷静に、命をやっぱり重視する、とにかくお金よりもやっぱり命を大事にするという発想に切り替えるべきだと思います。
僕は、最後のスライドですけれども、大変深刻なのは、今福島から出ている放射性物質、これは微粒子として浮遊しています、残念ながら、四番目の資料の論文に書いてありますけれども。そういうものと化学物質が、農薬も含めた化学物質が人間の体に入った場合に、相乗的に発がんするということが動物実験で分かっています。こういう、今、多重複合汚染の社会になってきて、恐らく、今二人に一人はがんになると言われていますけれども、多分、二、三十年たったら三人のうち二人はがんになります。僕はとっくに死んでいますから、若い議員さん方、是非確かめてください。この場で西尾がうそを言ったかどうか確かめてこいと。本当にがんがどんどん増えるという社会になります。
そういう点では、自分たちの国できちっと法律である程度規制できるような体制をつくるためには、決してTPPに加入すべきではないというふうに私は思っております。
ありがとうございました。
○委員長(林芳正君) ありがとうございました。
次に、醍醐参考人にお願いいたします。醍醐参考人。
○参考人(醍醐聰君) 醍醐と申します。
こういう機会をいただきまして、ありがとうございます。
私用の資料は、パワーポイントバージョンで用意しました縦長でスライド二こまずつを入れました資料、もう一つ、横長で、私の名前をちょっと入れるのを忘れてしまったんですが、一番最初のページが表一、高額新医薬品データ一覧、このちょっと細かい数字の入った表、これが私の参考資料です。主にこの縦長のパワーポイントバージョンの資料で進めさせていただきます。
私が申し上げたいことは、大きく言いまして二つでございます。
もはや発効が見込めなくなったTPP協定、それでも国会で承認するということは、ただ無意味であるというにとどまらず、危険な行為だということをお話をしたいと。では、どこが危険なのか、協定案をスタートラインとして二国間協議に入っていくことがどうして危険なのか、そのことを少しお話ししたいと。その場合は、本日の主なテーマである医療、薬価問題を中心にお話をしたいと思っております。
TPP協議に参加入りを決めましたときに、全国の大学教員が非常に将来を危惧しまして、約八百五十人の様々な分野の大学教員、私のような名誉教授も含めまして、TPP参加交渉からの脱退を求めようという会をつくりました。今回、この二十八日に緊急声明を発表しました。今日のこの私のお話と関わるところを少し読み上げさせていただきます。死に体のTPP協定を我が国が国会で承認しようとするのは、無意味であるというにとどまらず、危険な行為である。協定文書を国内で承認すれば、仮にTPPが発効に至らないとしても、日本はここまで譲歩する覚悟を固めたという不可逆的な国際公約と受け取られ、日米二国間協議の場で協議のスタートラインとされるおそれが多分にあると、この点を私は強調したいと思っております。
次ですが、これは実は大学教員の会だけが言ったのではなくて、安倍首相御自身が国会で実はおっしゃっているわけです。二十八日、そして昨日、実は私もテレビで見ましたが、この特別委員会の場で安倍首相はこういう答弁をされています。協定案が国会で承認されるならばということで、日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があるという国家の意思を示すことになると、こういうことを明言されております。解釈は全く逆ですけれども、将来の見通しについてはくしくも何か同じになっているような気がしました。
しかし、その解釈の違いなんですが、つまり、TPPバスの行き先が全く違うということですね。協定案はそれほど、安倍首相がおっしゃるほど胸を張れる内容なのか。バスの行き先は墓場から至福へといつ変わったのか。私は変わったとは思っておりません。むしろTPPの原理主義である例外なき関税撤廃に向かってひたすら走り続けるということだと思っております。そのようなTPP協定を国会が承認するということは、そもそもなぜ危険なのかというときに、その危険に警鐘を鳴らした国会決議に背いているということです。
これにつきまして、実は次のページの画像を見ていただきたいんですが、昨日、このTPPの特別委員会を私テレビで見ておりまして、その録画をカメラで撮ってちょっと貼り付けさせていただきました。
ある議員がこういうことをおっしゃっていました、他国に比べて多くの例外を確保したと。これはよく頑張ったというおっしゃり方でした。しかし、この他国に比べてというときに、他の国はほぼ一〇〇%関税を撤廃したのに対して、日本は全品目では九五%、農林水産品では八二%という数字をパネルで紹介されました。問題はこの八二%から外れたのが一体何なのだと、そのことを触れられなかったのを私は奇異に思いました。
一つスライドを戻りますが、重要五品目は五百九十四ラインです。そのうちの二八・五%、百七十品目で関税を撤廃しております。また、二百六十九品目、四五・三%で税率削減か新たな関税割当てをしております。このような内容抜きによくやったととても言えるものではないと思っております。
しかも、強調したいことは、この協定案がファイナルではないということです。これからがむしろどんどんとTPPバスが先へまっしぐらに走り続けると。そのことが協定案の、皆様方はもう言うまでもないことですが、附属書を御覧になればもう随所に協議協議という言葉が登場いたします。しかも、またセーフガードにつきましても、牛肉は十六年目以降四年間連続で発効されなければ廃止、豚肉は十二年目で廃止と、軒並みこれは廃止です。
次のページの映像の下に移っていただきますが、安倍首相は再協議には応じないということを繰り返しおっしゃっています。私はこの言葉がすり替えだというふうに思うわけです。そもそもTPP協定案で明記されている、再協議ということではなくて協議協議です。つまり、継続協議を約束するということがTPP協定のこれが根幹だと思っているわけです。協議を継続するというふうに明記されていることをあたかも任意でやったりやらなかったりできるかのような再協議というふうに呼び方を変えるということは、私はすり替えだと思います。
しかも、継続協議といいますけれども、逆戻りができるのかどうなのかです。
次のスライドを見ていただきましたら、片道切符のバスと書きましたが、例えば第二・四条一では、いずれの締約国も現行の関税を引き上げ、又は新たな関税を採用してはならないとなっているわけですから、もう逆戻りはできないということを、これはもう好き嫌いではなくて約束しているわけですね。これは安倍首相といえども、これを変えることはもう離脱しない限りはできないわけです。免れないわけですね。
それから、同じ第二の四で漸進的に関税を撤廃するということも明記しています。また、三項では、関税の撤廃時期の繰上げについて検討する、そのための協議を継続するということを、これをもう明記しております。
さらに、附属書の二―D、日本の関税率表の中で九の(a)、オーストラリア、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、原産品の待遇についての約束にセーフガードも含むと、検討するため、この協定が効力を生じる日の後七年を経過する日以降に協議するとなっております。協議といいましても、どちらにも向けるんじゃなくて、関税を下げる撤廃の方向にひたすら走る協議だということは、もうこれは動かせない事実となっております。
この後は、少し医療をめぐって意見を述べさせていただきたいと思います。
協定の二の六、もうここの辺りはちょっと時間がございませんからやめますが、その中の第五条で、各締約国はこの附属書に関連する事項について協議を求める他の締約国による要請に好意的な考慮を行い、協議のための適当な機会を設けると。つまり、TPP協定全般じゃなくて、医療の分野でもこのような約束が明記されております。
また、その下ですけれども、これは日米両国間が交わした書簡というのが含まれております。今年の二月四日、日米が交わした書簡で、フロマン氏からこういう書簡が出されております。日本国及び合衆国は、附属書二十六のA五に規定する協議制度の枠組みの下で、附属書に関するあらゆる事項、この中には保健医療制度を含むと、について協議する用意があることを確認する、本代表は、貴国政府がこの了解を共有することを確認されれば幸いでありますと書きましたところ、同じ日に、高鳥修一副大臣名で、本官は、更に、日本国政府がこの了解を共有していることを確認する光栄を有しますと述べております。
次へちょっと飛ばさせていただきます。
私が、このような協議に入ることを約束している日米の、つまりこれはTPPの中にその入口がリンクされているわけですね。ですから、この点でTPPと二国間協議はもう連動しているわけです。TPPを承認するということは、このような協議に入ることをもう約束するということになるわけです。あるいは、発効はしなくても、安倍首相の言葉を借りれば、それを国際公約として、胸を張ってこれを約束するということをおっしゃっているわけですね。
そのことがどういう懸念があるのかということですが、二〇一一年二月に発表されました日米経済調和対話の中の米国側関心事項ということがございます。その中で、先ほどからちょっと出ました、新薬創出加算を恒久化する、加算率の上限を廃止する、それから、オブジーボでこの後出てきます、市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないよう、これを廃止若しくは改正すると、こういうことを米国は要望事項として出しております。
その市場拡大再算定ルールを前倒しで使って半額にしたのが、御承知のオブジーボです。詳しいことは、もう時間がございませんから触れられません。これが前倒ししたことで、オブジーボは緊急でしたが半分に下がったわけです。
ちなみにこれ、オブジーボだけではないということを申し上げたいので、この横長の表一、高額新医薬品のデータ一覧を御覧いただきたいと思います。オブジーボだけでは決してないと。例えば、一瓶当たりとか、あるいは一日薬価とか、十二週間とか、軒並みこれが、一日薬価でも万単位のものが、これはもうざらに出てまいります。このようなものが軒並みにあるわけですね。
これらをどうするのかというときに、予想よりも市場が拡大した、あるいは効能が拡大した、そのことをもって、それに市場が拡大したものに見合うだけ薬価を下げるという仕組みを、これはもう今後の薬価の高止まりを抑える決め手になると私は思うわけですが、アメリカは、それやると成功した医薬品の価値を損なうという言い方でそれを廃止を求めてきているわけです。これは物すごく脅威だと私は考えております。
それから、ちょっと時間もございませんから先へ飛びますけれども、私がそういうことを言うと必ず、それやると新薬開発のインセンティブを損なうんじゃないかという指摘がございます。しかし、私、会計学を専攻している者として、これにはどうしても一言、二言申し上げたいと思うわけです。
開発費の回収は薬価加算の理由にならないということを書きましたところですが、今回この準備をする過程で、二〇〇五年から一四年度の売上高営業利益、売上高を一〇〇としたときに営業利益として幾ら残るかということを、製造業の加重平均三・四%でした、それに対して東証一部上場二十七社の製薬企業は一六・三%、約五倍弱でした。大事なことは、この営業利益というのは試験研究費を費用として差し引いた後の数字だということを是非御理解いただきたいと思います。
次のページですが、今度は製薬企業十六社、これは製薬工業会が出しているデータですが、これの財政状態を二〇一〇年三月期から一六年三月期の六年間で見ますと、留保利益は八・五兆円から八・七兆円へ一・二兆円増えています。じゃ、留保利益、全部設備投資等に使ったのか、そうじゃないと。この間、現金預金は一・六兆円から二・七兆円へ、つまり留保利益が増えたのとほぼ同じ額だけ手元の現金預金として持っているわけです。開発費になぜ使わないんですか。もっと薬上げてほしいんだったら、そんなことを言う前にこれなぜ使わないんですか。こんな状態で、お金が足りない、値下げされたらインセンティブが損なわれますなんということが社会的に通用するのかということを是非とも申し上げたいわけです。
最後に、私が非常に感銘を持ったのは、二〇一三年七月四日、ちょっとこういう場で写真入りで紹介するのはいかがかと思ったんですが、自民党の長老の尾辻秀久議員が選挙の出陣式でこういう演説をされているのをユーチューブで聞きまして、メモを取りました。アメリカでは四千万人が医療保険に加入していない、WTOは世界の医療保険制度で文句なしに日本が一番と太鼓判を押した、何で十五番の国、アメリカから世界一の日本が偉そうに言われるんですかと。続きまして、私たちの宝をアメリカの保険会社のもうけの走狗にするためになくすなどという愚かなことを絶対にしてはいけない、私はこの言葉を聞いて本当に感銘を覚えました。
これを受けまして最後に申し上げたいのは、多国籍製薬資本の営利に国民皆保険制度を侵食されてよいのか。国民皆保険制度を財政面から揺るがさないためには、TPPバスから下車するのが唯一最善の道だと私は考えます。結局、今、国会議員の皆様、あるいは国民一人一人、有権者一人一人に問われているのは、尾辻さんがおっしゃる貴重な財産、宝物を未来の世代にしっかりと引き継ぐことができるのかどうなのか、その引き継ぐ責任が問われているというふうに私は考えまして、終わらせていただきます。
○大門実紀史君 大門でございます。
お忙しい中、ありがとうございます。
まず、具体的な中身をお聞きする前に、TPP協定をこの委員会で今審議しているんですけれども、審議、批准する意味について、まずお聞きしておきたいというふうに思います。
アメリカが、もう何度もこの委員会で議論あるんですけど、TPP離脱を明言して、二国間交渉に入るということを言っております。これは日米FTAか、あるいは一旦TPPを見合わせて再交渉をしてアメリカに有利な条件が出てくれば後から入る、これぐらいしか考えられないわけでありますけれども、この状況で先に前のめりに、このアメリカの要求が既に入っている、かなりのまされているこの協定案を国会で批准するというのはどういう意味があるのかということでありますけれども。
実は、昨日、我が党の吉良よし子議員が、これからアメリカが二国間協議を求めてくると、先にこの協定を独り前のめりで批准すると、この協定、醍醐先生からもありましたけれども、この協定がスタートライン、最低ここまでは受け入れますと、そういうラインになって、今以上、協議をやればですね、更に要求をのまされると、今までだってさんざんのまされてきたんだからということになるので、危ないですよと、これは批准しないで一旦白紙に戻して、交渉してくるなら一から交渉すべきだと、国益のためにもという質問をしたんですよね。そうしたら、驚いたことに、安倍総理は、もうかなり状況は変わっているにもかかわらず、それは逆だと、再交渉はしないんだと、これを批准することで再交渉しない意思表示をするんだということを、前にはおっしゃっていたんですけど、まだおっしゃっていて、私、ちょっとぽかんとして聞いたんですけれども。
これが、あのトランプさんが離脱宣言をする以前ならば、あるいはクリントンさんが大統領になっていろいろ背景はあるけどTPPは進めると、しかし再交渉かなという状況ならば、先に批准して再交渉に応じませんよという姿勢を示すとおっしゃるのは分からなくはないんですけれども、今はアメリカは入らないと。総理もアメリカ抜きにTPPはないとおっしゃっているわけですね。だから、アメリカをどうつなぎ止めるかということになるわけで、当然、アメリカの要求を、再交渉に応じて妥協するしかないと、応じるしかないということだと思っていたんですけれども、再交渉をしないと。
もう大変な自己矛盾で何を言っているか分からなかったんですけれども、ひょっとしてもうやけくそで再交渉しないと、アメリカ入らなくていいんだと、ただ安倍内閣の気構えを示したいだけなんだということならば、勝手に一人で記者会見やってくれればいいわけですけれども、もうこの委員会巻き込むことないんですけれども、もう何言っているか分からない状況なんですね。
ちょっと昨日驚いたのは、自民党席からそういう総理の答弁があったことに対して拍手が出ると。私は、何か最近安倍さんが元気に物を言うともう反射的に拍手をする、何かそんなことになっているようなんです。もうちょっとよく考えた方がいいと思うんですよね。本当に自民党、参議院の自民党は特に、やっぱり総理が何を言おうと骨がありましたよ、前は。もう最近どうなっているのか、今やもう尾辻さんと山田さんぐらいで、山田さんはちょっと丸くなりましたけれども、本当にもう何を議論しているか分からないような状況なんですね。
そういう点で、改めてこの協定を批准する意味について、三人の参考人の方に御意見を聞きたいというふうに思います。
○参考人(遠藤久夫君) これは私にとって、申し訳ないんですけれども、私、この国際貿易の専門家ではないので、非常に多角的な話であって、私は、この問題が日本の医療政策にどう影響を及ぼすかということについては責任持ってお答えできるんですけれども、この多角的な話でどうするかというのは、ちょっと考えがまとまっておりませんので、スキップさせていただければと。
○参考人(西尾正道君) 全く困ったものですね。もう論外ですね。
それ以上に、本当に、短期間でほとんど内容を吟味しないで、中を本当に読んでいるんですか、国会議員の人は。とんでもないですよ、これ、このまま行ったら。多分安倍さんも読んでいないでしょう、ちゃんと。とにかく、属国にするような、僕から言わせれば国を売るようなものですね、今のTPPというのは。
これ本当に、それより今やらなきゃいけないことは、トランプさんがとにかくやめようと言っているんだったら、ほかの国がどう動くかということを見てからだって全然遅くないし、その間ゆっくり、どうするかというものをきちっとみんなに、国民に、のり弁当じゃなくてちゃんと情報を出して、正しい判断ができるような、そういう時間的な余裕をせっかくもらったんですから、そういうことをやっぱり僕はすべきだと思う。
本当に、このまま参議院も賛成多数なんといったら、僕は、良識の府なんて言っている参議院が本当に幼稚園児の集まりみたいなものだなというふうに僕は思いますよ、このままだったら。本当に僕は論外だと思います。
○参考人(醍醐聰君) ここはちょっと冷静に考えさせていただきまして、再協議は応じないということと国会で承認するということは論理的に全くこれ分裂していると私は思います。国会で承認するとしたら、これ、再協議という意味は、これ以上日本は悪い状態になるので絶対しませんよということですよね。で、国会承認しますと。承認したら、これフィックストできるんだったらいいんですよ。いいと言ったって、これ別に、本当は良くないんですけど。再協議には応じないという言葉は論理的に分裂はないです。
でも、何度も言っていますけど、承認するということは、附属書も含めて書いてあることを認めます、受け入れますということですよね。じゃ、どういうことが書いてあるかといったら、片道方向じゃないですか、何度も言いますけど。どこを読んでみても、もっと関税を下げる、もっと規制を撤廃しますということ以外どこにもないですよ、これ。今よりもっと悪くなることを約束させられるだけのことですよ。だから、これ全く論理的に分裂しているんですね。ちょっとそういう議論はやめていただきたいなというお話と。
それから、これまでの議論も、じゃどうだったのか。本当に聖域なき撤廃ということはないということをオバマさんが言ったので参加したとおっしゃいますけど、例の西川公也さんが出されるとか言われた「TPPの真実」の中にこういう言葉があります。フロマンがこう言いましたと。二〇一三年二月の日米共同声明の時点では、フロマンは、日本は関税の完全撤廃に合意したはずだと主張しましたと書いてありますよ。フロマン代表は、センシティビティーでも関税撤廃が前提であり、長いステージで対応すべきものだと応じましたと、西川さんがそういうやり取りをしたということを書いていらっしゃるじゃないですか。
安倍首相は確かにおっしゃったかしれません。しかし、交渉って相手のある話でしょう。自分が一方的に言っただけで、何の意味もないじゃないですか。相手がそれに応じてくれて、そこで合意ができて初めて話が、センシティビティーがありましたということを言えるんですけど、フロマンさん、全然これ、そんなの通じていないんじゃないでしょうか。そういう議論で本当に国益を守れたというのは、私は。
それから、ここで協定に応じるときの、じゃ、メリットは、何にも言わないからどうなんだと聞かれたときに、ちょっとまず農業分野のことについて考えるんですけど、よく攻めの農業、輸出力強化と言われます。しかし、事実はどうなのか。日本の農業生産総額は八・四兆円です。農水省が発表している農産物の輸出目標額は最上限値で一千億円です。農業総生産の全体の一%もないじゃないですか。この目標を達成したからといって日本の農業が何か力が付くんですか。こういう事実をもっと私はきちんと押さえて是非とも議論していただきたいなと思っております。
○大門実紀史君 よく分かりました。
具体的な質問をいたしますけれども、二国間FTA、二国間協議に入るということになりますと、私は、米韓の、アメリカと韓国のFTAをよく研究しておく必要があるといいますか、国会みんなで知っておくべきだと思います。
その点でいきますと、先に、じゃ、遠藤参考人、お伺いいたしますけれども、混合診療は今回表立って触れられていないとありますけれども、米韓FTAを見ますと、具体的に混合診療を解禁するということになっていなくて、しかし、そのFTAの中で経済自由区域というのが設けられて、そして営利病院、保険外診療をやれる営利病院、アメリカの資本ですね、そして、特に富裕層を中心にやっているということで、その部分では皆保険が崩れているということがあるわけですけれども、あるいは日本でももう既に国家戦略特区という形で混合診療の審査のスピードを速くするという形ではありますけれども、日本全体でやられていないことがやられるということで、混合診療を何か制度として解禁するという形ではなくて、違う形でアメリカの要望を聞いて実現していくという流れで今来ているんですけれども、そういう点でいきますと、日米のFTAといいますか日米協議に入りますと、当然、直接に混合診療を解禁しろと言ったら大変な問題になりますから、そういう形でより進めてやれるのではないかと。ですから混合診療大丈夫だということには今後ならないんじゃないかと思いますが、遠藤参考人の御意見を伺いたいと思います。
○参考人(遠藤久夫君) 失礼しました。こちらはお答えできますので。
二つのことをおっしゃっていると思います。今後のアメリカとの協議の中で混合診療の圧力が強くなってくるのではないかという問題と、もう一つは国内での特区の問題、特区という形で入ってくるのではないかという話。
これは二つとも重要な課題なんですが、まず前者の問題について、私は先ほどもお答えはしているんですけれども、これまで米国とのバイでかなりいろいろな議論をしてきていると、向こうの主張の中でもほとんど応えていないものも多々あるということもありますので、今回このTPPに入ることによって協議をするという形になると、より向こうの交渉力が強くなるということが私にはちょっと理解ができないので、今後、今までどおりのスタンスでやっていけばいいのかなと、いいだろうというふうに思って、またそれを期待するということであります。
もう一つの特区は、これはなかなか難しい問題。特区というのは、我々研究者からしてみると、とても魅力的な仕組みでもあるんです。非常に限定をして、どうなるのかというのを調べたいというところもあるわけで、うまくいけばそれを広めていくというところもあるので、あながち特区を私は否定するつもりはないのですけれども、ただ、問題は、その限定の仕方と、それからどういう目的でやるのかとか、あるいはその期間をどうするのかとか、それからデータをどういうふうにして解析して、それを政策にどう生かしていくのか、そういうことをきっちり決めた上でやっていく必要がある。つまり、あくまでも実験である、社会実験であるという視点の下でやっていくべきではないかというふうに思いまして、単なる規制の穴を空けるためにやっていくというのは適切ではないと、こんなふうに考えておりますので、一つ一つ慎重な議論が必要だろうと、こんなふうに考えます。
以上です。
○大門実紀史君 米韓FTAでいいますと、先ほどの経済自由区域、特区ですけれども、最初三か所から始まって、六か所、八区域というふうに広がっておりまして、これはやっぱり穴を空けて広げていこう、そこで一つの制度としてはめ込んでいこうという流れの中で広がっているというのはやっぱり注意深く見ておく必要があるのかなと思っております。
今日は医薬、薬価関係でいきますと、米韓FTAでは、まだそこまで行っていないですけれども、西尾先生に、お詳しいようですので、この米韓FTAにおける薬価、医薬品の関係で、かなりこの間、米韓FTA、入った以降、韓国の医薬品が値上がりして、医療機器もですかね、値上がりしておりますけれども、その背景と、もう一つちょっと関心がありましてお聞きしたいんですけれども、アメリカがカナダ、オーストラリア、シンガポールなどと、認可・特許連携制度という言い方をするらしいですけれども、つまり特許権を持った製薬企業がジェネリックの製薬会社に対して特許権侵害を申し立てると、そのジェネリックの製薬会社は医薬品販売ができなくなるという、まあ言い方はいろいろあるみたいですけど、認可・特許連携制度といって、特許制度をはめ込んで安い医薬品を売らせないというようなことがカナダ、オーストラリア、シンガポールとアメリカの間では結ばれてきております。
こういうアメリカの製薬会社が自分たちの高い薬価を守るための新しい仕組みを含めていろんなことが反映されてくるんじゃないかと、日米間でもですね、そういう心配も含めて、米韓FTAにおける医薬品の引上げの背景と、そういう今後の、今言ったような形も含めて懸念される点を教えていただければと思います。
○参考人(西尾正道君) それは、今のことが二つとも絡んでいるんですね。やっぱりジェネリックがなかなか作れなくなるという知的財産権の問題で、それからもう一つ、直接的には薬価がやっぱり上がっている。トータルとして二年間で二倍ぐらいに上がったというふうに聞いております。実際に、僕は、日本の場合はもう韓国の医療規模よりずっと大きいですから、影響はもっともっと大きくなるだろうと思います。
だから、いわゆる知的財産権のその保護期間が最短八年、なおかつジェネリック作る場合には製薬メーカーの許可が要るというようなことからいうと、先ほど言ったように、ジェネリック自体がとにかくなかなか普及しにくくなりますので、実際には薬剤費は高くなりますね。極端に言えば、五百円ぐらいの薬を七万円にしたとかそういうようなことが、例えば投資ファンドの人が社長になってその会社を買い取って、出している薬をそのぐらいにして売ったとか、アメリカなんかではそれは非難して値段は下がりましたけど、そういう実例がやっぱり現実的にあるんですね。
タミフル一錠七万円とかそういうような時代に、僕は、本当に突入し出す、それが規制できない、TPPになっちゃうと。本当に、製薬会社の利益を損なうということでISD条項を使って幾らでも訴えられると。いや、公共性とか社会保障の観点からそういうことはないんだよといっても、それは自分たちが思っているだけで、相手があることですから難しいと思いますよ、実際に。
○大門実紀史君 また遠藤参考人と醍醐参考人にお聞きしたいと思いますが、まあいろんな議論があって、薬価にしろ食の安全にしろ保険制度にしろ、アメリカがずっと長い間、USTRが日本に要求を貿易障壁報告書でずっと出してきて、何だかんだ言っても、もちろん言われたまま全てやってきたという意味じゃありませんが、いろんなやり取りがあった上ですけれども、長い歴史で見ると、結局、保険でも医療でも食の安全でもアメリカの要求を受け入れてきた、農産物もそうですよね。
このことについて政府と大臣と幾らやり取りしても、自分で判断してきたと。それは、判断するのは自分だと思うんですけれども、何を基に判断しているかのところに、アメリカの要望というのはやっぱり長い歴史で見ると反映してきたのは事実だと思うんですけれども、遠藤参考人と醍醐参考人の御意見を簡潔にお聞きしたいと思います。
○参考人(遠藤久夫君) 最後のところだけ質問をもう一度お願いできますか、ちょっと不十分だったので。
○大門実紀史君 アメリカのいろんな要求が、日本の薬価の決め方、食の安全とかに反映してきたのではないかと言っているんです。
○参考人(遠藤久夫君) それは、それをどう判断するかですけれども、いろいろ調べてみると、要求したものは必ずしもアメリカだけではなくて、先ほど醍醐参考人もおっしゃられたように、日本のメーカーも共同で業界としてやっておりますので、どこまでがアメリカの意向なのかというのはなかなか分かりませんが、しかし業界の人たちからいうと、相当要求しているけれども返ってくるのは少しだなという非常なあれがありまして、そう簡単にはいかないだろうという感じがします。
先ほど来言われておるように、日本のメーカーとアメリカのメーカーが共同で主張しているものが大半なんですね。したがいまして、それはアメリカの影響なのかどうかというのは微妙なところで、いずれにしても、日本の利益と、あるいは社会保障制度の存続のために適切なような対応をともかくやっていくしかないということだと思います。
以上です。
○参考人(醍醐聰君) 私は、先ほどから例えばアメリカとかのISDSと言われているのを聞いておりまして、自分の方に質問が向いてこなかったので、ちょっとお答えができなかったんですけど。
大事なことは、実際にISDSがまず発動するかどうかはもちろん大事ですけど、そういう仕組みがあるということが、例えば米韓FTAであの地産地消の問題で、政府がアメリカからそれについてクレームが付くおそれがあるから地産地消という言葉を条例から外せと言ったら九割のところが外しましたですね。あれ、何もアメリカまで実際に訴えたわけじゃないんですよ。でも、変わりました。地下鉄だって公共交通だって、これ安過ぎるということ言われたら困るから値上げしているわけです。
ですから、こういう装置があるということ自身が一つのやっぱり強力な圧力になっているということを注意しないといけないのと、もう一つは、裁判でまさかそんな裁判が通らないでしょうと言うんですけど、どこの裁判所を想定してそういうことを言っているんですかと、日本の裁判所を想定して言っているんじゃないでしょうねということをちょっと私はどうしてもやっぱり申し上げたいと。ちょっと日本とは勝手が違うと。英語で全部これ書かなきゃいけません。本当にそれを訴えるだけでも大変なことですし、そういうところをやはり私は考えてみると、何か直感的に、そこまで日本は言うことを聞くこともないでしょうという考え方は私は楽観に過ぎるんじゃないのかということを事実からも思います。
薬価についても、オーストラリアがあの薬価制度を、本当にこれも手を突っ込まれたのも協議機関に入ったからですね。
失礼しました。
○大門実紀史君 どうもありがとうございました。