国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2006年2月23日 財政金融委員会
              政府与党の圧力で負の遺産をもたらした量的緩和政策批判
○大門実紀史君 大門でございます。
 お疲れさまでございます。もういろいろ議論がありましたので、多くをお聞きするつもりはございません、総裁の御答弁によっては早めに終わるということも思っておりますけれども。
 行き過ぎの超、超が二つぐらい付くぐらいの量的緩和でございましたから、解除すると、是正するという点では当然のことだというふうに思っておりまして、以前から指摘してきましたとおりやり過ぎだということを思っておりましたんで、むしろこのまま続けたら本当に大変なことになってくるんじゃないかというふうに思っておりましたので、そこはそれでいいんですけれども、ただ、今まで何事もなかったかのように、ただこれから解除しますと、それだけでいいのかなと。
 今日も、お聞きしていますと、何かもっともらしい話が続くんですけれども、やっぱり今までの量的緩和が何だったのかということと、日銀として、私は日銀だけの責任と思っていない部分はあるんですけれども、そうはいっても、日銀として反省すべき点とか、あるいはあれはやり過ぎだったんじゃないかとか、総括をですね、この今までの量的緩和策の総括をきちんとやはり先に言われるべきではないかなと。ちゃんとそういう点、立場を踏まえられるべきではないかなというふうに思いますけれども、そういう、反省すべき点とか、あれはまずかったなとか、そういう点は何かございませんか。

○参考人(福井俊彦君) 量的緩和政策を含め、今回の一連の経済を本格的な回復軌道に乗せる過程における金融政策はまだ完結しておりません。したがいまして、総括をする段階にはまだ至っていないと思いますけれども、やはり局面変化は次から次へとむしろいい方向に前進しておりますので、私どもは、金融政策の運営について余裕のある限り振り返りながら、その利害得失いかがであったかということを踏まえながら次の展開を考えると、こういう構図になっております。
 現在までのところ、量的緩和が行き過ぎであったかどうか。我々は行き過ぎであったというふうな結論には至っておりません。そこは大門先生といささか見解がもしかしたら違うのかもしれませんけれども、実際の金融政策の場に当たってまいりました我々からいたしますと、やはり直面、金融不安というものが目の前に迫ったときに、この情報は、金融不安の情報というのは世の中のすべての人に行き渡って持っていただくわけにはいかない部分でございます。その見えない部分も我々はすべて見ながら金融不安は絶対防ぐと、必要な流動性は、過大に見えるかもしれないが、我々としては必要最小限の流動性はきちっとマーケットに供給するということをやってまいりましたし、ゼロ金利の限界ということを痛いほど感じながら、少しでもイールドカーブを低くして緩和効果をマクロ経済にも及ぼしたいということでやってまいりました。
 そういうことをやらないで逆に経済がデフレスパイラルに陥った場合との比較ということは、なかなか比較は困難な問題でございます。幸いにも、デフレスパイラルに陥ることなく危険を回避してここまで来たということでございますので、メリットが全くなかったわけではなくて、やはり効果は相当発揮したと。
 それ以上のことをやったかどうかということは、私どもとしては必要最小限のことをやってきたつもりでございますが、もし過剰があったということであれば十分御指摘いただきたいし、我々も十分反省の材料にしたいというふうに思っています。

○大門実紀史君 ですから、そういうふうに言われると早く終わるわけにはいかなくなるんですけれども。
 実は、この委員会で本当に大変な議論があったわけです、速水さんのころからですね。もう忘れもしませんけれども、今日は与党の皆さんみんな紳士的ですけれども、当時はもう日銀総裁を、もう私なんか聞くに堪えないぐらいもう罵倒するといいますかね、本当にすごい議論があったわけですよね、もっとやれという意味でですね。インフレターゲットの話もありましたけれども。そういう質問の後、私なんかは、むしろ日銀を、圧力に負けるなといって激励の応援をしたりしてきた経過があるわけです。
 その中で、私は、もちろん福井さんにもお聞きしたことありますけれども、そういう圧力は関係ありませんと、独自で判断してきましたとおっしゃいますけれども、結果的にずっと流れを見てきますと、そうはいっても、そういう政治状況を見ながら緩和の、私、量的緩和、その政策が間違っているとは言っているわけじゃないですよ。そのやり方とか規模とかですね、これはかなり押されてやってきたなというのが、結果的につくづく本当に思うわけでございますね。
 そういう点で、規模とか、例えば今日もありましたけれども、二〇〇一年三月には五兆円目標だったんですね。それがすぐ十五兆になり二十兆になり、福井さんになって二十七兆、三十二兆、三十五兆と、こうなるわけですね。今日もありましたけれども、実際には六兆、そうはいってもプラスアルファとしても仮に十兆ぐらいで私は十分にいろんなことができたのに、もう三十五兆までなっていると。
 これは、それが適正な判断だとおっしゃるんならばむしろお聞きしたいんですけれども、三十五兆にどんな意味があるんですか。三十五という数字は何なんですか、そうしたら。

○参考人(福井俊彦君) 三十五そのものは、数字がすべて物語るわけではございません。その増やしていく過程で、例えば三十五兆の直前の流動性レベルは、金融危機が深まる過程においては、一見余分に見える流動性は、資金に余裕のある銀行が全部抱えて出さないという状況ですから流動性としてはカウントできない状況。そこを出発点に我々は毎日の金融市場を運営しなければ資金ショートを起こす銀行が出ると。それでもいいんだとおっしゃる議論であれば全く別でございます。
 それを防ぐためには、総額としては一見大きく見えても、限界的に我々が追加的に供給する資金というのは、そこに、金融機関がその日銀の蛇口に食らい付かなければ流動性の手当てが付かないという危機的な局面があったわけでございます。それを防ぐための必要な流動性を結果として供給してきたということであって、結果の数字が大きいということは私どもも認めますが、その都度の限界的な供給というのは必要最小限に絞りながら、しかし必要な額は信用不安を防ぐためにきちんと出したということでございます。
 どこどこの金融機関がつぶれそうであるからというふうな前宣伝の下に、こういう政策はできるわけではないということは十分お分かりいただいていると思います。

○大門実紀史君 細かく触れませんが、私も何回もこの問題質問していきますので、先ほど福井総裁、同僚議員のときに、三十五という数字そのものには意味がないんだとおっしゃったという意味のことを私言っているわけでございまして、それはそのときいろいろあってといったら、今振り返ったらそうですよ、みんなそうなりますよ。仮に今二十五兆だったかも分からないんです、私から言わせれば。そういう意味で申し上げているんでね。その背景とかその考え方とかに、私は、インフレターゲット、物すごく強く言われる方がいて、違うという理屈の上での指摘もさせてもらったことありますけれども。私は、日銀も、日銀がやってきたこととインフレターゲット論者と言われる方と、私はそんなに、もう五十歩百歩のところがあると。大体、資金需要が高まって通貨供給量って増えるもんですけれども、上からといいますか、川上からやっていくというのは、特にサプライサイダー論者の独特の私、一面性があると思いますけれども。
 それで、結果的に言えば、結果的に言えば、マネーサプライ増えないで、マネーサプライがここで何で増えないんだという大議論もあったことあるわけですよね。そうしたら、今度は違うことでやってきたと、先ほども半分はそうだったけどと。いろんなことがころころころころ変わっているんですよね。
 私は、そういうものが何を生んできたかということで、資料を御用意いたしましたけれども、私は、相当日銀が負の遺産をこの量的緩和で抱え込んだということを指摘しておかなければいけないと、総括としてですね、思います。
 これは日銀に作ってもらった資料ですけれども、まず国債残高ですよね。これはもう見てもらったとおりですけれども、九十八兆円という国債を日銀が抱え込んでいると。私、与党の方すべてそうではなかったと思いますが、あのころの、二、三年前のインフレターゲット論の強い主張は、実際にはデフレ克服というよりも国債消化策と、国債消化と、あるいは銀行の株が大変不安になっていましたから株価対策と。こういう点で強く強く主張されて、日銀も、国債、そして二つ目の金銭の信託というのが銀行株の日銀保有ですけれども、こういうものに踏み込んできたというふうに見ているわけです。
 大体、中央銀行が自分ところの国債をこんなに、九十八兆も持つということ、持っているということ、このことそのもの異常だというふうに思われませんか。

○参考人(白川方明君) 日本銀行は、二〇〇一年の三月に量的緩和政策を採用しまして、潤沢に資金を供給するという政策手法を取ってまいりました。潤沢に資金を供給するということは、負債サイドでこれは預金が増えますので何か資産を買っていく。その場合に、マーケット全体の厚みがあって比較的中立性が高いという資産、それは国債であるということで、潤沢に資金供給を実現する手段として長期国債を買ってまいったということでございます。現在、日本銀行の当座預金の残高あるいはバランスシートの規模、これがGDPとの関係で大変大きくなっていることは、それはそのとおりでございます。
 一方、その買い入れた資産の中で国債がどのぐらいのウエートを占めているかという今度はお尋ねでお答えいたしますと、これはそれぞれの国の中央銀行の資金供給のやり方によって異なっておりまして、例えばアメリカの中央銀行、FRBの場合ですと、買入れ資産の大宗は国債であるということでございますし、あるいは欧州の中央銀行は総体的には国債の割合が少ないということで、これは様々でございます。
 以上でございます。

○大門実紀史君 私、そんなこと聞いているんじゃないんですよ。こういうことが異常じゃないかということをすぱっと聞いているわけですから。
 例えば、金銭の信託は先ほど言いました銀行株の保有ですけれども、これももう二兆円近くなっていると。これ、しかも平成十九年まで持ってですね、それから十年間掛けて売却していくと。まだまだ持たなきゃいけないわけですね、持っていなきゃならないですね。異常ですよ、私から言わせれば。で、国庫納付金も、もう一兆円以上、国に納めるのも減っているわけですね。この一兆円のために予算でやりくりしなきゃいけなくなると、国民の方にしわ寄せが来ているわけですよ。これも仕組みを申し上げると細かくなりますけれども、これ、緩和策の影響ですよね。
 日銀そのものの自己資本比率も、実際には一〇%プラスマイナス二の範囲でというふうになっていますから、それも切っちゃっているわけですね。八を切っちゃっている状況ですよ、今。これもなぜこうなったかといいますと、日銀の自己資本比率の分母は銀行券の発行残高ですから、量的緩和をばあっとやりますよね、そしたら分母が大きくなります。しかも、法定準備金の方がそのままだと分子も小さくなるということで法定準備金を引き上げると。そのことによって国庫納付金が下がるというようなこともあってこんな状況になっていると。
 とにかく、何といいますか、こういうことを、こういうことを何も総括しないで、何もきちっとどうするかと、あるいはこうなったことは何だったのかということを抜きに、抜きにただこれから解除しますといって何かもっともらしい話ばっかりされているのは私はどうかなというふうに思うんです。これだけこの負の遺産を抱えた結果になって、適切な判断で政策展開やってきたということを、私、本当に言えるのかなと思いますが、福井総裁にもう一度お聞きしたいと思います。

○参考人(福井俊彦君) 経済が危機的な状況に陥りますと、世の中の負債の構造が変わります。民間の負債よりも政府の負債が大きくなると。その中で、日本銀行は日本経済を見捨てることなく危機を救うという立場でオペレーションをいたしますと、世の中の負債構造がある程度日本銀行のバランスシートに反映してくると。これはやむを得ない面がございます。
 さりとて、日本銀行のバランスシートを完全に不健全なものにしてはならないと、そのディシプリンはしっかり持っていなきゃいけないわけでございまして、したがいまして、国債につきましても銀行券の発行残高の範囲内ということを厳守いたしておりますし、委員がおっしゃいました、私が就任しましてから、流動性の供給、量というのを増やしました過程では国債の買入れ枠は一文も増やしておりません。
 それから、自己資本につきましても、基準となる自己資本比率はきちんと維持したいという目標はしっかり堅持しておりまして、一時的なフラクチュエーションはあるにしてもこれは必ず回復すると、回復する自信があるという範囲内でやっているわけでございます。

○大門実紀史君 いや、私申し上げているのは、こういう負の遺産を抱えるような政策であったということですよね、ここまでね。しかも、ここまでですよ、規模がね。規模がここまで、国債の倍になっているわけですね、倍近くになっているわけですね。
 そういうことを申し上げているわけで、一個一個こう考えてきましたって、そんな細かい話をしているわけじゃなくって、人間のやることはそんな賢いことばっかりやっているわけじゃありませんから、いろんな影響でいろんな間違いがあって、皆さん政策審議会でそれはまじめな議論されているかも分かんないけれども、結果的に全体として、合成の誤謬じゃありませんけれども、誤った判断もあったんではないかと。私は、どこかできちっとした方向転換があり得たんではないかというふうに思ってお聞きしているわけでございます。
 ですから、そういうふうにおっしゃらないで、やっぱり反省すべき点は反省してこそまた前進もあるわけですから、今までの量的緩和のことをもっときちっと、もっと総括をして、これからのね、解除した後のですね、やらないと、何かあったらまた戻ってきますよ。何かあったらまた戻ってきますよ、これは、こんな方向にですね。そのことをきちっとしてもらいたいというふうに申し上げているわけでございます。
 言いたいことはそれで、要するに、この五年間で見ると、私は、政治の圧力ですね、こういうものとの、これに対して日銀の独立性をよほどきちっと、よほど厳格に保っていかなければいけないということを私自身は見てきた教訓として思っているわけでございますけれども。
 そういう点でいきますと、今回も、自民党の中川政調会長が日銀のことに対して、日銀法を改正する必要があると、そういう言い方をされましたけれども、もうそういうことは私は言うべきじゃないと思っておりますけれども、ああいう発言をどういうふうに総裁はとらえていらっしゃいますか。

○参考人(福井俊彦君) 日本銀行といたしましては、日本銀行法の目的、明確に規定されております、その規定に忠実に我々は誠実な仕事をさしていただきたい。我々としては、自らの情勢判断に忠実に政策運営をやってまいります。で、政府との関係では、十分意思の疎通を図りながらやらしていただきたいというふうに思います。
 日本銀行の独立性のかぎは、日本銀行の金融政策が功を奏して日本経済のパフォーマンスが良くなること、それを通じて日本銀行に対していささかでも余計の信頼をちょうだいできることというふうに思っております。

○大門実紀史君 もう申し上げたいこと終わりましたんで。要するにですね、教訓としては、国債消化策とか株価対策として日本銀行が使われるべきでないと、こんなことは二度とあってはならないということを申し上げて、ちょっと早いですけれども、私の質問を終わります。

○委員長(池口修次君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
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