■2005年10月20日 財政金融委員会(一般質問及び日銀報告への質問) 小泉首相の靖国参拝と東アジア共同体・経済統合について | ||
○大門実紀史君 大門でございます。 今日は、一般質疑とこの後の日銀報告を一つのテーマで質問したいと思います。 東アジア共同体、経済統合という意味の共同体ですけれども、その問題でございまして、この場の一般質疑では、共同体に向けた政治的なスタンスについて谷垣大臣にお聞きをして、後の日銀報告では、その具体的な取組について日銀と財務省の、これは政府参考人で結構でございます、当局の取組を聞きたいというふうに、二つに分けてといいますか、質問したいと思います。 東アジア共同体というのは、お手元に資料を配付いたしましたけれども、いろんな経過があって進んでまいりました。特に、九七年のアジア通貨危機の後、結束が強まったといいますか、いろんな構想が出て、日本もかかわってきております。経済協力、金融支援というところで、あるいはFTA等々の自由貿易圏をつくっていこうという流れの中でいろいろ進んできているというところだと思います。とうとう今度の、今年の十二月の十四日に初めて東アジア・サミットが開催されると、ここまでこぎ着けてきている大事な取組だと思います。 私は、この東アジア共同体というのは、この地域で二度と戦争を起こしてはいけないというふうな気持ちと、やはり経済的に密接に連携している国というのはかつて戦争を起こした例はまずないという点でも、この東アジア共同体、経済統合に向けた動きというのは注目してまいりましたし、今年、中国に行ったときも、そういうことを関心持って質問でも取り上げてきたところでございます。 また、今年は、小泉総理が初めて所信表明の中で、一月二十日ですね、東アジア共同体の構築を目標として宣言をされると。これは日本政府としては初めてのことでございます。積極的な役割を果たしていきたいということも総理が言われて、画期的な表明をされたというふうに、私は大変評価をしていたところです。 ところが、どうしても触れなきゃいけないんですけれども、よりによって、十一月にAPEC、十二月に、今申し上げた初めての東アジア・サミットが開かれるというような前に、総理が靖国神社を参拝されるというようなことが起きました。 今日は靖国神社そのものの議論に入り込むつもりはございません。何が、どういう影響が起きていくのかという点で、特にアジアとの経済関係に対して心配する声がいろいろ上がっておりますし、この東アジア共同体について言っても、中心は日中韓がイニシアを取らなければ進まないのは分かっているわけですから、進展が危ぶまれると。例えば、この東アジア・サミットの中で首脳会談が開かれるかもしれないという話がありましたけれども、それもどうなるか分からなくなってきたというふうな状況だと思います。 私、常識的に考えて、総理が所信表明で初めて東アジア共同体の構築を目標にすると宣言をされたということとこの靖国神社参拝というのは、全く支離滅裂といいますか、全然常識外、何を考えてこんなことになったのかと思いますが、谷垣大臣はいかがとらえておられますか。 ○国務大臣(谷垣禎一君) 東アジア共同体の構築ということにつきましては、私も、我が国が目指さなければならない大きな方向であるというふうに思っております。 そして、委員が資料をおまとめになりましたけれども、私自身、この九八年の新宮澤構想が出た当時、ちょうどアジア通貨危機が起こったときでございますが、あの当時は宮澤大臣の下で政務次官をしておりまして、IMF・世銀総会等にも出て、当時の雰囲気も若干経験をいたしました。 それから何年かたちまして今の仕事に戻ってまいりまして、さっきおっしゃったASEANプラス3、ASEANに日中韓ですね、こういうような会議も相当何度も出席をしてまいりまして、当時に比べると、経済連携、それから金融面、それから国境を越える問題等々について随分議論が進んできたなと思っているところでございまして、何というんでしょうか、あのアジア金融危機の教訓をやっぱりよく受け止めて、新しい秩序をつくっていこうという機運はこの地域に非常に大きくあると思っておりまして、東アジア共同体をつくっていくという方向は財務省としての大きな課題でありますとともに、政治家として私も必要な方向であると、このように考えているところでございます。 そして、今、靖国についておっしゃいましたので、これについては余り議論に入らないということでございました。 総理は私的参拝だと、私自身、総理から直接お伺いしましたのは、一国民として心を込めて参拝をしたということでございまして、やはり、総理は公人でいらっしゃいますけれども、私的な行為をする自由もお持ちではないかというふうに思っておりまして、そうである以上、余りそのことを大きくフレームアップする必要はないのではないかと思っております。 ○大門実紀史君 議論に入り込まないというのは、靖国問題そのものに入り込まないという意味で、ただ、この経済に関して言いますと、大変この問題で心配をされているところでございます。 私は、総理が、私的といいますか心の中で何を考えておられるということは全く興味がございません、別に理解する義理もありませんし。問題は、政治家ですから結果責任ですよね。それによって何がもたらすかという結果責任の問題で非常に危惧をしているところでございます。 ちなみに聞いてみたいんですけれども、谷垣大臣は総理になられたら靖国神社参拝はされますか。 ○国務大臣(谷垣禎一君) 総理になったわけでもありませんので、余り僣越なことは、私は控え目でございますので今まで申し上げないでまいりました。 ○大門実紀史君 私は、答えられないというのが非常に正常だと思うんですよね。 何といいますか、総理になっても、何が何でも、やりが降ろうが鉄砲が降ろうが弾飛んでこようが参拝しますという方が本当にちょっと尋常じゃない話になっていると思いますので、なったときには正常な判断をしていただきたいと申し上げておきます。 一つ申し上げておきますけれども、この東アジア共同体との関係でいきますと、東アジア共同体という言葉、これ、中国語と韓国語でいきますと東亜共同体と言うんですね。かつて日本が、戦中ですか、提案したのが、朝鮮を併合して満州国を建国して、シナといいますか中国に対して提案したのが同じ名前の東亜協同体なんです、協同の協が違いますけれども。それが、中国側が拒否したものですから、その後、東亜新秩序と、で、東南アジアに戦争を始めて大東亜共栄圏と、こう発展していったわけですよね。その大東亜共栄圏の思想を今でも間違○大門実紀史君 それでは、東アジア共同体構築に向けた質問の第二部をお話をしたいと思います。 日銀のスタンスと財務省当局の具体的な取組について、質問というよりも学習会のつもりでいろいろ御見解をお聞きしたいというふうに思っております。 現在、東アジア共同体に向けたアプローチは、先ほどの資料に、下の方ですけれども、いろいろ書いてございます。別にこの貿易関係が土台で金融が上部構造という意味ではありませんが、両面があるという意味で資料を載せてあります。特に、この金融協力の方が、通常、こういう域内協力というのは貿易関係が先行して金融が後から付いてくるというケースがかなり多いんですけれども、このアジアの場合は、金融協力が同時並行といいますか、若干先行している場合もあるかなという進み方だというふうに思います。それは、それだけ、貿易の方はそれぞれ輸入品にかかわる国内分野から反発が起きるとかいろんなことが起きますので、時間も掛かる部分ありますが、この金融の方は政府サイドで決められるというところからスピードが速いという点もあるし、逆に言えば、政策判断が重要な部分だと思います。 この地域金融協力の部分に絞ってお伺いをしたいというふうに思いますけれども、まずこのスキームを先に、これは担当は財務省ですから説明してもらってから、その後、日銀に質問するというふうにした方がいいと思います。 まず、チェンマイ・イニシアチブというのは何なのかということをだれでも分かるように説明をしていただけますか。 ○政府参考人(井戸清人君) 御説明申し上げます。 東アジアにおけます域内金融協力の重要性につきましては、アジアの通貨危機を契機といたしまして、域内の当局者間で広く認識をされる状況に至ったわけでございます。その結果、二〇〇〇年の五月にタイのチェンマイで開催されましたASEANプラス3、プラス3とは日本、中国、韓国でございますが、このASEANプラス3の財務大臣会議におきましてチェンマイ・イニシアチブが合意されたわけでございます。これは、東アジア域内における通貨危機の予防及び対処のために、ASEANプラス3各国の間で二国間の通貨交換、いわゆるスワップという形式によりまして、短期的な資金の融通を行うということを目的といたしているわけでございます。 その後、二国間の間で通貨交換取決めが順次締結されまして、現在では日本、中国、韓国及びASEAN五か国の計八か国間で、全体といたしまして五百三十五億ドルのネットワークが形成されているところでございます。本年五月にトルコのイスタンブールで開催されました今年のASEANプラス3財務大臣会議におきまして、このチェンマイ・イニシアチブを更に強化していこうということが合意されております。現在、事務当局の間でその実現に向けて様々な検討を行っているところでございます。 ○大門実紀史君 そういうものがチェンマイで決まったということでございます。 要するに、いざというときの、通貨危機の反省から、いざというときの介入資金をお互い融通し合うという仕組みでございますよね。スワップというのは、介入資金を借りたのを反対取引をして返すと、こういうことでございますよね。そういうものがチェンマイ・イニシアチブということです。 一つだけお聞きしておきたいんですけれども、このチェンマイ・イニシアチブは金融協力では初めての画期的な取組だと私、思いますけれども、ただIMFのプログラムの枠内で使うというふうになっておりまして、実際に使えるのは、各国の二国間でいうと、この枠内でいくと一〇%だけと。つまり、IMFが金融支援を決めるまでのつなぎ資金といいますかね、そういう位置付けがあって、実際にはまだまだもっと使えるようにということ、あと機動性が良くないという話もございますよね。これが十一月ですか、あるいは、ああ十一月ですかね、APECのときですかね、開かれるASEANプラス3の財務大臣会議のときに、これをもっと使いやすくしようというふうなことが提案されるんではないかというふうな話がありますけれども、そういうことはあるんでしょうか。 ○政府参考人(井戸清人君) おっしゃるとおり、現在、基本的にはチェンマイ・イニシアチブを発動する場合にはIMFのプログラムがあるということが、若しくは締結されるだろうということが前提となっております。そういった意味では、IMFの支援を補完するというのが基本的役割でございますが、他方で、委員御指摘のとおり、そういう構造的な問題でない、取りあえずの短期の対応としては、これまでは一〇%だったわけでございますが、今年のASEANプラス3財務大臣会議でこれが二〇%に引き上げてございます。今後、随時各国間の取決めはそうした方向で見直されることになると思います。 ASEANプラス3の財務大臣会議は、大体毎年、アジア開発銀行の総会と同時に開催されていますが、春に開催されるわけでございますが、今後、当然ASEANプラス3の首脳会議等でも議論されることがあるかと思いますし、私どもとしては、来年のASEANプラス3財務大臣会合に向けて更にいろいろ議論を進めてまいりたいというふうに思っております。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。 日本がイニシア取って、その辺の改善を是非進めてもらいたいと思います。 もう一つ、下にあります「アジア債券市場の育成」、これも簡潔に説明していただけますか。 ○政府参考人(井戸清人君) アジア債券市場育成イニシアチブと申しますのは、二〇〇三年の八月に、同じくASEANプラス3の財務大臣会合において合意されたものでございます。これは、アジア域内で債券市場を育成するということによりまして、アジア域内の貯蓄をアジアに対する投資へとよりよく活用できるようにしたいということがその目的でございます。 このために、具体的にはアジア域内で多様な通貨あるいは機関の債券をできる限り大量に発行しまして、市場に厚みを持たせることで、債券発行企業あるいは域内の投資家の双方にとって使いやすい債券市場の育成を行いたいというふうに思っております。当然のことですが、こうした債券市場ができますと、アジアにおいて、現地通貨建てということで為替リスクがない、かつ長期の資金を使った投資が可能となるわけで、アジア地域の通貨の安定にも資するものというふうに考えております。 これまで作業部会で具体的な検討をいろいろ進められておりまして、例えばバスケット通貨建債権の研究を始めるというような、将来のアジアにおける国際債権市場の発展に向けた検討を始めるということについて最近では合意が行われているところでございます。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。 これは要するに、これも九七年のアジア通貨危機のときの反省があって、あのときはアジアの国が外貨で借りて、短期で借りて長期で国内通貨で貸出しをしたためにミスマッチが起きた、それで資本収支が悪化してああいうことになったというのも一つの原因だということでやられておるわけですね。そういう反省が込められてこういうものが付けられて今努力が始まっているという枠を踏まえて、日本銀行福井総裁にお伺いしたいんですけれども、日銀としてはこのアジアの地域内の金融協力にどういう努力をされているのかということと、この金融協力、先ほどあったようにアジア諸国には大変メリットがあると思いますが、日本自身にどんなメリットがあるのか。どういう努力をされてきたのかというのと日本自身のメリットですね、この二つについて教えてください。 ○参考人(福井俊彦君) お尋ねの点につきまして、日本銀行の基本的な認識でございますけれども、東アジア諸国、アジア、特に東アジア諸国、これは日本も含んででございますけれども、世界全体の中で見ると、この東アジア諸国というのは最も成長率が高く、この先にわたっても潜在的な成長能力の高い地域でございます。かつまた、単に成長率が高いというだけではなくて、この地域に属する諸国間において分業関係がますます濃密に築かれてきていると、つまり、相互依存関係というのがますます濃密になってきているということがございます。日本もその中に入っておりまして、日本はやっぱりこうしたアジア諸国との相互依存関係抜きに今後の日本経済の健全な発展は期しがたいところまでもう来ているというふうに思います。 それを前提として、今度はお金の面を考えたときに、また改めて世界を見渡しまして、この東アジア諸国というのはやはり世界の中で最も貯蓄率の高い地域でございます。今後、高齢化社会の進展の影響というのはアジアにだってあると思いますけれども、しかし、将来を見渡しても相対的に貯蓄率の高い地域であり続けるだろうと、こういう感じございますが、いかんながら、この貯蓄、せっかく高い貯蓄が域内で有効に活用されていないと。つまり、実体経済の面での成長、相互依存関係の強まりの割には持っているお金が十分域内で生かされていないという現実がございます。東アジアの九七年の危機にしても、持てる貯蓄を十分活用しないで、経済発展のための必要な資金をかなり大きく域外の資本に依存したと、そして、域内の経済に一たび問題が起こると外から入ってきた資本が不規則な出入りを起こすことによって傷口を一層大きくするというふうなことがあった。これは九七年の危機だと思います。 したがいまして、そのときに、もう一つの命題としては、IMFがそういったときに重要な役割を果たしてくれるんですけれども、それをまた補完する域内の協力メカニズム、つまり通貨金融システム安定のための協力体制が要ると、こういう今二本立ての認識が基礎になっているというふうに思います。 日本銀行といたしましては、この二つの中では、原点に返ってやっぱり域内の貯蓄を有効に活用していくというのがこれから最も重要な点だと思っておりまして、そのためには、この域内のマーケットがきちんと整備されることと信用仲介メカニズムがきちんと整っていくということが重要であり、なかんずく、やっぱり債権市場を、域内の債権市場をもっと機能度の高いものにしていくということは非常にかなめの部分を成すんではないかというふうな認識を持っております。 したがいまして、日本銀行自身で今注力しておりますのは、東アジア、それから、これオセアニア、オーストラリア、ニュージーランドも含んでおりますけれども、十一の中央銀行をメンバーとする東アジア・オセアニア中央銀行役員会議というのを持っておりまして、EMEAPという俗称を付けておりますけれども、ここの活動にかなりウエートを置いております。 この活動、このEMEAPという会議は一九九一年に日本銀行が呼び掛けて設立したフォーラムでございますが、これは域内の経済情勢とか金融・為替市場、銀行監督、決済システム等のあらゆるテーマについて幅広く意見交換をし、考え方を共有するという場なんでございますけれども、最近は、アジアの債権市場育成を目指して、このすべてのメンバーがアジアの債権に共同して投資を行うというアジア・ボンド・ファンドというものを創設いたしました。このファンドがうまく機能することによってアジア各国の債権市場が発展する起爆剤にしようと、こういうファンドをつくったわけでございます。このプロジェクトを日本銀行が主導し、日本銀行自身もここに投資を行ってこの活動を今広げつつあるというところでございます。 もちろん、今財務省からお話のありましたASEAN十か国と日本、中国、韓国によるASEANプラス3の各種の会議にも参画をさしていただいておりまして、こちらの方は通貨危機の防止などを目的とするフレームワークに日本銀行も参加をさしていただいております。チェンマイ・イニシアチブとか、同じく、そちらのベースで債権市場育成を目指すアジア債権市場育成イニシアチブにも関与をさしていただいております。 こういうわけで、この二つの大きなテーマ、今後とも積極的に推進したいと思いますけれども、もう一つは、アジア諸国の中央銀行の持っている様々な金融のノウハウのレベルも上げていく必要があるということで、日本銀行といたしましてはアジア諸国の中央銀行との間で個々に様々な技術協力を推進しているということもございます。基礎的な能力を高めながら、そういう大きなプロジェクトの成果を上げていこうと、こういう仕組みでございます。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。学習会と申し上げましたけれども、時間が少ないんで、講演にならないように簡潔にお願いしたいと思います。 いろいろ共通通貨、通貨バスケット、円の国際化、それぞれ聞きたいと思っているところでございますけれども、時間ないんで、共通通貨の可能性ですね。これはロバート・マンデルさんも、二十年後にはドルとユーロとアジア通貨圏ができるんではないかという話もありますが、二十年か五十年か分かりませんけれども、方向として、アジアの共通通貨の可能性といいますか、そういうものをどう見ておられるかというのと、もう通貨バスケットはややこしいから省きます。 円の国際化の話もあります。これは、実はそれほど円の国際化が今現実味があると思いませんけれども、モルガン・スタンレーが経済レポートを出していますが、要するに、人民元が切上げをされてフロートに移れば、韓国のウォンと台湾ドルは人民元の方に連動していくだろうと、円の方には、円と連動は来ないだろうと、人民元が主導になっていくんじゃないかというのがありますし、中国科学院のヒー・ファンさんでしたか、の論文によると、人民元がこれからアジアのイニシアを取っていくんだと、そうしなければならないんだということも含めてですけれども、それは中国の経済発展といいますか、経済規模がこれからずっと大きくなるとそれの取引との関係で必ずそうなるという話もあります。 ですから、共通通貨の問題と円の国際化というのがどこまで現実味があるのか、この二つの点を、もう時間、私は四十三分までですから、その範囲で教えてもらえればと思います。 ○参考人(福井俊彦君) それでは、極めて簡単に二つお答えを申し上げます。 一つは、いずれの通貨がイニシアチブを取ることになるにせよ、土台として最適通貨圏の条件をアジア域内において整えていくということが大事だと。三つぐらいあえてその中身を申し上げれば、一つは、やっぱり日本を含むアジア各国の経済的な相互関係、相当濃密になってきていますけれども、これが最適分業などを通じて一層緊密になっていくと、これが第一です。第二は、今努力しているアジアにおける金融資本市場が一層整備されて、これ域内の資本の移動がもっと自由になって資本が生きた形で使われるようになること。三つ目は、アジア諸国の経済運営に対する内外の信認がもっと確立していくこと。これが一つの通貨圏というものを意識されるようになっていく基礎的な土台だと思います。 その中で、まあ、円か人民元かその他通貨かといういろんな問題があります。ここはいい意味で競争していけばいいと、こう思うんですけれども、円について言えば、国際的地位が更に高まっていく余地は十分あると。我々の努力次第だし、国民の認識次第だというふうに思います。円が国際的により広く使われるためと、それは、何といってもこれから日本経済の信認をしっかり高めていく、そして効率的で安定した金融資本市場をつくり上げていく。つまり、アジア全体の市場育成と言いましたけれども、その中でコアとなる機能は日本の金融資本市場を通じてだと、そして金融市場全体に通ずるインフラを提供していく能力を日本が持ち続けると、これが非常に大事だと思います。その結果として、円の国際的利用に一たび弾みが付けば、我々は経済の活性化と相まっていい循環をつくっていくことができるだろうと。 これからは大変チャレンジングな知的なゲームが始まる。経済の大きさだけで決まるというふうには、私は一切思っておりません。 ○大門実紀史君 終わります。 ってないと宣伝しているのが靖国神社でありますし、大東亜共栄圏というのは地理的に言うとこの東アジア共同体とほぼ一致するわけですよね。 そういうこともよく考えて、この東アジア共同体問題、何といいますか、そういう過去の忌まわしいイメージを相当払拭した上でないとこういうことは東アジアの中では進まないという歴史的な背景とかそういう認識を持たないで、簡単に進めなきゃと言いながら靖国参拝をするというのは本当に、何といいますか、良識に欠けている話だというふうに思いますので、機会があれば諭していただきたいというふうに思います。 東アジア共同体そのものの話をしていきたいと思いますけれども、今ございましたとおり、いろいろ機運が高まってきておりますね。どっちかというとデファクトといいますか、事実が先行してきたという経過はありますけれども、私はここまで気運が高まってきたこの根底には、まだいろんなものがあるというふうに思っております。 谷垣大臣は、ここまでどうしてこう機運が高まってきたかという点で何かお感じのことあれば、聞かせていただきたいと思います。 ○国務大臣(谷垣禎一君) 一つは、先ほど申し上げましたように、アジア金融危機のやはりダメージというのはこのアジア地域にとって大きかったわけですから、やはりあのときにみんなでいろいろ共同しながら乗り越えていく方法について議論が深まってきた、やはりその流れを推し進めるべきだという、共通の理解と言って私はいいと思うんですけれども、この地域にあるだろうと思います。 それからもう一つは、やはり私ども、今G7というようなことで財務大臣同士あるいは中央銀行総裁も含めて議論をしているわけでございますが、G7はいわゆる先進国経済でございますけれども、なかなかそれだけでは、例えば人民元をどうするかというような問題をG7だけで議論しても結論が出るわけではありません。ということは、やはりそれだけ経済の広がりが、あるいは結び付きがこの地域についても現実的に進行している、こういうことがあるのではないかと思っておりまして、こういったことが、今委員のお言葉で言うと事実が先行してきたとおっしゃいましたけれども、いろいろな事実上連携が進んできたという背景にあるんではないかと思っております。 ○大門実紀史君 私は、九七年の通貨危機のことから思いますと、何といいますか、アメリカ、この東アジア共同体というのはASEANの諸国はアメリカを抜いてやろうというのが今のところ多数派でございまして、その原因は、APECありましたけれども、APECでは駄目だったという九七年のアジア危機の教訓があると。なおかつ、あのときにマレーシアのマハティールさんなんかは、特に思い込みなのか確信なのか分かりませんけれども、あのときの通貨危機というのはアメリカの金融資本とIMFが結託してやったんだというふうな不信感も確かにありますし、その後のIMFプログラムが非常に受けが悪かったということもあって、そして加えて言うならば、ドルとの関係がありますね。とにかくドルに依存して、米国債買って、そのお金がアメリカにまた還流されていると、ドルはいつ暴落するか分からないと。だから、ドルとの関係を距離を置きたいといいますか、ドル暴落を回避したいと、様々なアメリカとかドルとの関係も、ドル依存から脱却したいという関係も加えて強くあるんではないかと、そういうことも各政府が発言をしております。 私、面白いなと思ったのは、外務省の田中均審議官、退官されましたですけれども、例の平壌宣言まとめられた方ですけれども、東アジア共同体の必要性を三点にわたって指摘されております。 一つは、日本の中長期的な国益にかなうということと、中国と協力していくシステムをつくる必要があると。これが東アジア共同体の中で発展することが必要だと。 もう一つ面白いなと思ったのは、今いろいろナショナリズム問題が起こっております。中国でも日本でもそうですね。こういう標的がないナショナリズム、非常に不健全なナショナリズム、こういうものを抑える、抑えていくといいますか、健全に発展させるためにも東アジア共同体というのは一つの重要な運動なんだというふうに田中均さんが言われておりまして、これは私も同感でございます。 そういう中で、今、日本政府のスタンスが、私いろいろ聞いてみると、もう一つよく分からないといいますか、中途半端ではないかなと思う点がありますので、お聞きしたいのは、さっき申し上げたアメリカとの関係なんですけれども、アメリカはアーミテージさんが四月に朝日新聞とのインタビューで東アジア共同体についてこういうふうに言っています。要するに、東アジア共同体というのは問題だと、誤りだと、そういう方向が出ること自体懸念しているということをおっしゃっています。ですから、アメリカ抜きの東アジア共同体に対して非常に懸念を示しておられるわけですね。 先ほど言いましたとおり、ASEAN諸国はアメリカとの関係を一定距離は置きたいと思っておりますので、なかなかアメリカを入れてというふうにはならない。これはいろいろ日本が間に立ってせめぎ合いがあったわけですが、なってないわけでございます。 日本の立場としては、このアメリカとの関係も大事にしなきゃいけないと、ASEAN、東アジア共同体で中国がイニシアを取り始めていますから、中国に余りイニシアも取られたくないと、なおかつアメリカの顔色もうかがわなきゃいけないと、こういう点で非常に中途半端な対応になってきているんではないかと。 特に私思いましたのは、二〇〇二年ですかね、小泉総理がシンガポールでコミュニケ案を提唱されていますけれども、ここにASEANプラス3だけではなくてオーストラリアとニュージーランドも入れるべきだという提案をされて、これは見事にASEAN諸国から支持を得られなかったわけです。ただ、今度アジア・サミットには入ってきますけれども。つまり、日本は何とかAPECレベル、できればアメリカもオブザーバー参加さしていくような、そういうことを考えていると、ASEANプラス3はそういうことを考えてないと、日本はアメリカを見てそういうことを考えていると、中国はASEANを大事にしてイニシアを取っていこうとしているという中で、日本はどうもアメリカとASEANの両にらみで、スタンスが非常に中途半端な気がいたします。この辺はどういうふうにとらえておられますか。 ○国務大臣(谷垣禎一君) 今、大門委員のおっしゃったことが一つポイントであろうと思います。 ただ私は、大門委員が日本が中途半端だとおっしゃったのは、必ずしもそういうふうには思っておりませんで、私は、日本の国際関係を考えますときに常にありますのが、一つは太平洋を挟んだアメリカとの関係であり、もう一つは、これはもちろん中国だけではありませんけれども、ASEANも含んだアジアとの関係をどうしていくかという問題を日本は常に持っているわけでありまして、一方だけに偏すればいいというふうには私は思っておりません。 ですから、東アジアの例えば金融面、経済面の協力につきましても、委員がおっしゃいましたように、かつてのアジア金融危機のときのIMFの対応というようなものに対しまして、率直に言ってアジアの中にある意味での違和感といいますか、そういうものがあったことも事実でございます。ですから、IMFとか、これはIMFとアメリカはもちろん違うわけですが、IMFとかアジアだけでひとつ解決をしたいという機運があったことも、委員の御指摘がございましたけれども、そういう面があったと思います。 ただ私は、そういう方法だけで必ずしも問題がうまく解決していくかという点については疑問に思っておりまして、IMFの専務理事は今スペインからお出になったデ・ラトさんですが、あの方が就任直後日本においでになりましたときも、委員がおっしゃったようなアジアではIMFに対して何となく違和感と申しますか、すんなり溶け込めない雰囲気があるということをよく意識してほしいと、アジアとの対話ということに意を用いてほしいということをデ・ラトさんには申し上げて、それで九月にシンガポールでIMFはアジアとの対話セミナーというのを開きました。 私も、本来であれば出席してそういう今申し上げたような問題意識から発言したかったんですが、たまたま選挙と重なりましたので、残念ながら伺えませんでしたけれども。やはりアジアで経済金融秩序をどうつくっていくかというときに、一方で太平洋を挟んだ、APEC並みとおっしゃいましたけれども、アジア太平洋という視点をどうしていくかということがどうしても必要、特にそういう場合にはアメリカとの関係、特に世界の経済のインバランスというものを考えましたときに、やはり今、経常収支国、アジアでは日本も経常収支国でございますけれども、大きな経常収支国であり、しかも巨大な外貨準備も恐らく、余り予想ばっかり言ってはいけませんが、恐らく日本を追い抜くぐらい外貨準備もたまっていると。要するに、インバランスという場合、アメリカと中国の関係がいい関係だと、極端に言えばそう言ってもいいぐらいでございますから、やはり米中双方をにらまないとなかなかこの辺は解決できないという問題があろうかと思っております。 したがいまして、アジアでいろいろ議論を進めていくことももちろん大事でございますが、複眼的にそこは考える必要があるのではないかと私は思っております。 ○大門実紀史君 間もなく時間ですので、申し上げたいのは、私も、アジアかアメリカか二者択一ではなくて、ただ、どうしてもアメリカ一辺倒的な、アメリカの方に顔色をうかがうようなことが続いておりますし、中曽根元総理は、中曽根元総理というのは東アジア共同体評議会の責任者ですね、日本側の窓口の責任者ですけれども、こんなことをおっしゃっているんですね。要するに、憲法を変えて、平成憲法と東アジア経済協力機構と日米安保条約と、こういうものがミックスされた日本が二十一世紀に出現するということを言われているわけですけれども、これ、まともに中国や東南アジア諸国に伝わりますと、日本はそんなことを考えているのかという強い批判を浴びるようなことだと私は思います。 いずれにせよ、軸足を、どちらかということは言いませんが、軸足をアメリカ一辺倒からもう少しアジアに移して考えていかないと、東アジア共同体は難しいんではないかというふうに思います。 具体的なことは次の日銀報告のときにお聞きしたいと思います。 ありがとうございました。終わります。
○大門実紀史君 それでは、東アジア共同体構築に向けた質問の第二部をお話をしたいと思います。 日銀のスタンスと財務省当局の具体的な取組について、質問というよりも学習会のつもりでいろいろ御見解をお聞きしたいというふうに思っております。 現在、東アジア共同体に向けたアプローチは、先ほどの資料に、下の方ですけれども、いろいろ書いてございます。別にこの貿易関係が土台で金融が上部構造という意味ではありませんが、両面があるという意味で資料を載せてあります。特に、この金融協力の方が、通常、こういう域内協力というのは貿易関係が先行して金融が後から付いてくるというケースがかなり多いんですけれども、このアジアの場合は、金融協力が同時並行といいますか、若干先行している場合もあるかなという進み方だというふうに思います。それは、それだけ、貿易の方はそれぞれ輸入品にかかわる国内分野から反発が起きるとかいろんなことが起きますので、時間も掛かる部分ありますが、この金融の方は政府サイドで決められるというところからスピードが速いという点もあるし、逆に言えば、政策判断が重要な部分だと思います。 この地域金融協力の部分に絞ってお伺いをしたいというふうに思いますけれども、まずこのスキームを先に、これは担当は財務省ですから説明してもらってから、その後、日銀に質問するというふうにした方がいいと思います。 まず、チェンマイ・イニシアチブというのは何なのかということをだれでも分かるように説明をしていただけますか。 ○政府参考人(井戸清人君) 御説明申し上げます。 東アジアにおけます域内金融協力の重要性につきましては、アジアの通貨危機を契機といたしまして、域内の当局者間で広く認識をされる状況に至ったわけでございます。その結果、二〇〇〇年の五月にタイのチェンマイで開催されましたASEANプラス3、プラス3とは日本、中国、韓国でございますが、このASEANプラス3の財務大臣会議におきましてチェンマイ・イニシアチブが合意されたわけでございます。これは、東アジア域内における通貨危機の予防及び対処のために、ASEANプラス3各国の間で二国間の通貨交換、いわゆるスワップという形式によりまして、短期的な資金の融通を行うということを目的といたしているわけでございます。 その後、二国間の間で通貨交換取決めが順次締結されまして、現在では日本、中国、韓国及びASEAN五か国の計八か国間で、全体といたしまして五百三十五億ドルのネットワークが形成されているところでございます。本年五月にトルコのイスタンブールで開催されました今年のASEANプラス3財務大臣会議におきまして、このチェンマイ・イニシアチブを更に強化していこうということが合意されております。現在、事務当局の間でその実現に向けて様々な検討を行っているところでございます。 ○大門実紀史君 そういうものがチェンマイで決まったということでございます。 要するに、いざというときの、通貨危機の反省から、いざというときの介入資金をお互い融通し合うという仕組みでございますよね。スワップというのは、介入資金を借りたのを反対取引をして返すと、こういうことでございますよね。そういうものがチェンマイ・イニシアチブということです。 一つだけお聞きしておきたいんですけれども、このチェンマイ・イニシアチブは金融協力では初めての画期的な取組だと私、思いますけれども、ただIMFのプログラムの枠内で使うというふうになっておりまして、実際に使えるのは、各国の二国間でいうと、この枠内でいくと一〇%だけと。つまり、IMFが金融支援を決めるまでのつなぎ資金といいますかね、そういう位置付けがあって、実際にはまだまだもっと使えるようにということ、あと機動性が良くないという話もございますよね。これが十一月ですか、あるいは、ああ十一月ですかね、APECのときですかね、開かれるASEANプラス3の財務大臣会議のときに、これをもっと使いやすくしようというふうなことが提案されるんではないかというふうな話がありますけれども、そういうことはあるんでしょうか。 ○政府参考人(井戸清人君) おっしゃるとおり、現在、基本的にはチェンマイ・イニシアチブを発動する場合にはIMFのプログラムがあるということが、若しくは締結されるだろうということが前提となっております。そういった意味では、IMFの支援を補完するというのが基本的役割でございますが、他方で、委員御指摘のとおり、そういう構造的な問題でない、取りあえずの短期の対応としては、これまでは一〇%だったわけでございますが、今年のASEANプラス3財務大臣会議でこれが二〇%に引き上げてございます。今後、随時各国間の取決めはそうした方向で見直されることになると思います。 ASEANプラス3の財務大臣会議は、大体毎年、アジア開発銀行の総会と同時に開催されていますが、春に開催されるわけでございますが、今後、当然ASEANプラス3の首脳会議等でも議論されることがあるかと思いますし、私どもとしては、来年のASEANプラス3財務大臣会合に向けて更にいろいろ議論を進めてまいりたいというふうに思っております。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。 日本がイニシア取って、その辺の改善を是非進めてもらいたいと思います。 もう一つ、下にあります「アジア債券市場の育成」、これも簡潔に説明していただけますか。 ○政府参考人(井戸清人君) アジア債券市場育成イニシアチブと申しますのは、二〇〇三年の八月に、同じくASEANプラス3の財務大臣会合において合意されたものでございます。これは、アジア域内で債券市場を育成するということによりまして、アジア域内の貯蓄をアジアに対する投資へとよりよく活用できるようにしたいということがその目的でございます。 このために、具体的にはアジア域内で多様な通貨あるいは機関の債券をできる限り大量に発行しまして、市場に厚みを持たせることで、債券発行企業あるいは域内の投資家の双方にとって使いやすい債券市場の育成を行いたいというふうに思っております。当然のことですが、こうした債券市場ができますと、アジアにおいて、現地通貨建てということで為替リスクがない、かつ長期の資金を使った投資が可能となるわけで、アジア地域の通貨の安定にも資するものというふうに考えております。 これまで作業部会で具体的な検討をいろいろ進められておりまして、例えばバスケット通貨建債権の研究を始めるというような、将来のアジアにおける国際債権市場の発展に向けた検討を始めるということについて最近では合意が行われているところでございます。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。 これは要するに、これも九七年のアジア通貨危機のときの反省があって、あのときはアジアの国が外貨で借りて、短期で借りて長期で国内通貨で貸出しをしたためにミスマッチが起きた、それで資本収支が悪化してああいうことになったというのも一つの原因だということでやられておるわけですね。そういう反省が込められてこういうものが付けられて今努力が始まっているという枠を踏まえて、日本銀行福井総裁にお伺いしたいんですけれども、日銀としてはこのアジアの地域内の金融協力にどういう努力をされているのかということと、この金融協力、先ほどあったようにアジア諸国には大変メリットがあると思いますが、日本自身にどんなメリットがあるのか。どういう努力をされてきたのかというのと日本自身のメリットですね、この二つについて教えてください。 ○参考人(福井俊彦君) お尋ねの点につきまして、日本銀行の基本的な認識でございますけれども、東アジア諸国、アジア、特に東アジア諸国、これは日本も含んででございますけれども、世界全体の中で見ると、この東アジア諸国というのは最も成長率が高く、この先にわたっても潜在的な成長能力の高い地域でございます。かつまた、単に成長率が高いというだけではなくて、この地域に属する諸国間において分業関係がますます濃密に築かれてきていると、つまり、相互依存関係というのがますます濃密になってきているということがございます。日本もその中に入っておりまして、日本はやっぱりこうしたアジア諸国との相互依存関係抜きに今後の日本経済の健全な発展は期しがたいところまでもう来ているというふうに思います。 それを前提として、今度はお金の面を考えたときに、また改めて世界を見渡しまして、この東アジア諸国というのはやはり世界の中で最も貯蓄率の高い地域でございます。今後、高齢化社会の進展の影響というのはアジアにだってあると思いますけれども、しかし、将来を見渡しても相対的に貯蓄率の高い地域であり続けるだろうと、こういう感じございますが、いかんながら、この貯蓄、せっかく高い貯蓄が域内で有効に活用されていないと。つまり、実体経済の面での成長、相互依存関係の強まりの割には持っているお金が十分域内で生かされていないという現実がございます。東アジアの九七年の危機にしても、持てる貯蓄を十分活用しないで、経済発展のための必要な資金をかなり大きく域外の資本に依存したと、そして、域内の経済に一たび問題が起こると外から入ってきた資本が不規則な出入りを起こすことによって傷口を一層大きくするというふうなことがあった。これは九七年の危機だと思います。 したがいまして、そのときに、もう一つの命題としては、IMFがそういったときに重要な役割を果たしてくれるんですけれども、それをまた補完する域内の協力メカニズム、つまり通貨金融システム安定のための協力体制が要ると、こういう今二本立ての認識が基礎になっているというふうに思います。 日本銀行といたしましては、この二つの中では、原点に返ってやっぱり域内の貯蓄を有効に活用していくというのがこれから最も重要な点だと思っておりまして、そのためには、この域内のマーケットがきちんと整備されることと信用仲介メカニズムがきちんと整っていくということが重要であり、なかんずく、やっぱり債権市場を、域内の債権市場をもっと機能度の高いものにしていくということは非常にかなめの部分を成すんではないかというふうな認識を持っております。 したがいまして、日本銀行自身で今注力しておりますのは、東アジア、それから、これオセアニア、オーストラリア、ニュージーランドも含んでおりますけれども、十一の中央銀行をメンバーとする東アジア・オセアニア中央銀行役員会議というのを持っておりまして、EMEAPという俗称を付けておりますけれども、ここの活動にかなりウエートを置いております。 この活動、このEMEAPという会議は一九九一年に日本銀行が呼び掛けて設立したフォーラムでございますが、これは域内の経済情勢とか金融・為替市場、銀行監督、決済システム等のあらゆるテーマについて幅広く意見交換をし、考え方を共有するという場なんでございますけれども、最近は、アジアの債権市場育成を目指して、このすべてのメンバーがアジアの債権に共同して投資を行うというアジア・ボンド・ファンドというものを創設いたしました。このファンドがうまく機能することによってアジア各国の債権市場が発展する起爆剤にしようと、こういうファンドをつくったわけでございます。このプロジェクトを日本銀行が主導し、日本銀行自身もここに投資を行ってこの活動を今広げつつあるというところでございます。 もちろん、今財務省からお話のありましたASEAN十か国と日本、中国、韓国によるASEANプラス3の各種の会議にも参画をさしていただいておりまして、こちらの方は通貨危機の防止などを目的とするフレームワークに日本銀行も参加をさしていただいております。チェンマイ・イニシアチブとか、同じく、そちらのベースで債権市場育成を目指すアジア債権市場育成イニシアチブにも関与をさしていただいております。 こういうわけで、この二つの大きなテーマ、今後とも積極的に推進したいと思いますけれども、もう一つは、アジア諸国の中央銀行の持っている様々な金融のノウハウのレベルも上げていく必要があるということで、日本銀行といたしましてはアジア諸国の中央銀行との間で個々に様々な技術協力を推進しているということもございます。基礎的な能力を高めながら、そういう大きなプロジェクトの成果を上げていこうと、こういう仕組みでございます。 ○大門実紀史君 ありがとうございます。学習会と申し上げましたけれども、時間が少ないんで、講演にならないように簡潔にお願いしたいと思います。 いろいろ共通通貨、通貨バスケット、円の国際化、それぞれ聞きたいと思っているところでございますけれども、時間ないんで、共通通貨の可能性ですね。これはロバート・マンデルさんも、二十年後にはドルとユーロとアジア通貨圏ができるんではないかという話もありますが、二十年か五十年か分かりませんけれども、方向として、アジアの共通通貨の可能性といいますか、そういうものをどう見ておられるかというのと、もう通貨バスケットはややこしいから省きます。 円の国際化の話もあります。これは、実はそれほど円の国際化が今現実味があると思いませんけれども、モルガン・スタンレーが経済レポートを出していますが、要するに、人民元が切上げをされてフロートに移れば、韓国のウォンと台湾ドルは人民元の方に連動していくだろうと、円の方には、円と連動は来ないだろうと、人民元が主導になっていくんじゃないかというのがありますし、中国科学院のヒー・ファンさんでしたか、の論文によると、人民元がこれからアジアのイニシアを取っていくんだと、そうしなければならないんだということも含めてですけれども、それは中国の経済発展といいますか、経済規模がこれからずっと大きくなるとそれの取引との関係で必ずそうなるという話もあります。 ですから、共通通貨の問題と円の国際化というのがどこまで現実味があるのか、この二つの点を、もう時間、私は四十三分までですから、その範囲で教えてもらえればと思います。 ○参考人(福井俊彦君) それでは、極めて簡単に二つお答えを申し上げます。 一つは、いずれの通貨がイニシアチブを取ることになるにせよ、土台として最適通貨圏の条件をアジア域内において整えていくということが大事だと。三つぐらいあえてその中身を申し上げれば、一つは、やっぱり日本を含むアジア各国の経済的な相互関係、相当濃密になってきていますけれども、これが最適分業などを通じて一層緊密になっていくと、これが第一です。第二は、今努力しているアジアにおける金融資本市場が一層整備されて、これ域内の資本の移動がもっと自由になって資本が生きた形で使われるようになること。三つ目は、アジア諸国の経済運営に対する内外の信認がもっと確立していくこと。これが一つの通貨圏というものを意識されるようになっていく基礎的な土台だと思います。 その中で、まあ、円か人民元かその他通貨かといういろんな問題があります。ここはいい意味で競争していけばいいと、こう思うんですけれども、円について言えば、国際的地位が更に高まっていく余地は十分あると。我々の努力次第だし、国民の認識次第だというふうに思います。円が国際的により広く使われるためと、それは、何といってもこれから日本経済の信認をしっかり高めていく、そして効率的で安定した金融資本市場をつくり上げていく。つまり、アジア全体の市場育成と言いましたけれども、その中でコアとなる機能は日本の金融資本市場を通じてだと、そして金融市場全体に通ずるインフラを提供していく能力を日本が持ち続けると、これが非常に大事だと思います。その結果として、円の国際的利用に一たび弾みが付けば、我々は経済の活性化と相まっていい循環をつくっていくことができるだろうと。 これからは大変チャレンジングな知的なゲームが始まる。経済の大きさだけで決まるというふうには、私は一切思っておりません。 ○大門実紀史君 終わります。 |
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