国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2005年8月1日 郵政民営化特別委員会
              民営化は、世界の流れに逆行し金融弱者「排除」広げる
○大門実紀史君 連日、長時間にわたり、皆さん大変お疲れだと思いますが、御苦労さまでございます。
 今日は竹中さんに、大臣というよりも経済学者としての見解をお伺いしたいと思います。たまには担当大臣ということをお忘れになって、自由に見解を述べていただきたいと思います。
 イギリス、アメリカ、欧米などで社会問題になっている金融排除の問題です。
 金融排除問題というのは、低所得者あるいは少額しか預金を持たない方々が金融機関に口座を持つことを拒否される、あるいは高い口座維持手数料があるために預けられないという問題です。そういう金融サービスから排除される人が大量に今欧米では生まれているということで、アメリカ、イギリスでは一五%から二割を超える世帯が口座を持てないと。これはドイツやフランスでも問題になっております。
 銀行口座が持てないということはもう大変なことでございまして、給与の振り込み、現金化ができない、あるいは社会保障給付が受け取れないと、基礎的な金融サービスが受けられないということで、欧米の、ヨーロッパ等々の位置付けではもう重大な社会的疎外だということで、各国とも社会問題として対策に乗り出しているところです。
 細かく触れませんが、この委員会でも取り上げられました。イギリスはブレア政権になって、〇三年の四月からすべての国民に口座を開設する、あるいは金融機関が口座をちゃんと開くように三百六十億円投資をするということとか、アメリカでも一部の州法では口座を開設拒否しちゃいけないという法律を作るとか、いろいろ対策が取られております。
 竹中大臣はこの問題について、民主党の櫻井議員の質問のときに、金融排除はそれぞれの国の事情があると、あるいは所得格差、金融機関の姿勢、原因はいろいろだと、国それぞれ原因いろいろといいますか、そういうふうな答弁をされてきたわけですけれども、私はこれ、学者として、経済学者としてきちっと分析をしてもらいたいなと思いますので、二つの点でまとめてお聞きします。
 なぜ、いろんな異なる国で九〇年代以降同じような現象が起きたのか。もう一つは、日本で金融排除は起きていないのか、あるいは今後起こる可能性がないのか。この二つのことをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君) 大門委員が学者として答えろと言うときは大体厳しい質問であるという経験則があるんでございますけれども。
 まず、なぜ、異なる国で九〇年代以降やっぱり時を同じくして出てきたのではないかという御指摘、これはその背後にはやはり要因があると考えなければいけないのだと思います。九〇年代以降、やはり情報通信革命、金融革命、グローバル化に象徴されるようにいろんな、いわゆるフロンティアがどんどん開けていく時代になると。フロンティアの時代というのはやはりなかなか厳しい時代なんだと思います。一生懸命競って前に行かないと取り残されると、そういう状況が世界じゅうで生じているということは私はあるかと思います。したがって、その所得格差がともすれば拡大しやすいような、そういう状況にあるということが背景としては私はやはりあるのだというふうに思っております。
 同時に、国民の生活水準が高まって、かつては金融手段を持たなくても生活をしていけたという人が、必ずしもやっぱりそうではなくなったと。やっぱりすべての人に金融手段が必要になってきたという、ある意味で生活水準の高まり、これ技術の革新が背景にありますが、そういう問題もございましょう。そういうことがあると思います。先般申し上げたのは、そういう事情がその国によってやっぱり異なっているのではないのだろうかということでございます。
 イギリスの場合も、前回、委員から御議論あったかもしれませんが、今まで為替で受け取っていたものが口座振り込みに年金等々がなって、やはりその分、ある意味で、口座を使うという意味で社会全体は技術が便利になったわけですけれども、便利になったがゆえにある程度の水準を皆さん求められるようになったと、そういう点もあろうかと思っております。要因としては、そういうフロンティアの時代というのが背景にあると思っております。
 日本ではどうなのかということでございますが、そうした点、世界の傾向でありますから、日本においても注意して見ていかなければいけない状況であるというふうに私も思っております。
 ただし、今、日本において、例えば口座維持手数料が非常に高くてその多くの方が口座が開けない状況かというと、それは決してそういう状況ではないというふうに私は認識をしております。民間の金融機関でも口座手数料のないところがたくさんあるわけでございますし、日本において、現状、顕在化しているという状況ではないと思います。
 しかし、今後どうかというふうに問われますと、これはやはり今、日本もそういった世界の経済の潮流の中に置かれておりますから、そういうことに対しては、政府としては十分な目配りをしていかなければいけない。これはまあ金融行政全体の中で、今後しっかりと見て判断をしていかなければいけないと思っております。

○大門実紀史君 日本でも近い将来金融排除が、既に静かに進行している、また起こる可能性を政府の研究会が既に指摘しております。
 二〇〇〇年六月十六日に出ましたけれども、郵貯の事業経営に関する将来ビジョン研究会最終報告というのがございました。メンバーは学者の、研究者の方々ですけれども、座長さんが岩田一政さん。大臣よく御存じですよね。東大の教授で、内閣府の政策統括官でしたかね、やられておりまして、小泉内閣、竹中大臣の政策スタッフだった方です。で、今、日本銀行の副総裁でございますけれども。
 この報告は私、是非皆さん読んでもらいたいなと思うんですけれども、これからの郵貯の在り方とか改革の方向を提言したなかなかいい報告、提言でございます。
 この中の「金融ビッグバンと小口個人」の項目に、要するに、なぜそういうものが起きたかというと、金融ビッグバンの進行だと。金融ビッグバンが進行して、つまり、金融の自由化、金融の国際化が進んで、これが九〇年代各国で、日本よりも先行していましたから、こういう金融排除が起きたと。で、日本でも金融排除の可能性を既に五年前に、五年前に指摘をされているわけです。
 で、この中で、郵貯の今後の役割について書かれた部分があります。是非総務省から紹介してほしいんですけれども、「金融サービスにおける小口個人の利益確保の方法」という部分があります。その中で、郵貯の今後の役割についても書かれております。是非総務省の方で、この部分だけで結構ですから、読んで御紹介をお願いしたいと思います。

○政府参考人(鈴木康雄君) お答えを申し上げます。
 今委員御指摘の研究会の報告書の該当部分でございますが、金融サービスにおける小口個人の利益確保については、欧米諸国においても、重要な政策課題であるとの認識の下、郵便局ネットワークの有効活用を含め様々な取組が行われている。
 我が国の金融システムにおいては、金融ビッグバン等が進展する中、民間金融機関が今後、不採算地域からの店舗撤退、顧客選別の強化等、従来以上に効率性を重視した金融サービスの提供を進める方向にある一方で、郵便貯金は、従来から、全国を対象としてサービス提供を行うことによる規模の経済、三事業を兼営することによる範囲の経済等を生かした効率的な経営を行い、独立採算の下で地域間格差のない金融サービスの提供を既に実施してきている。
 したがって、郵便貯金が民間金融機関に比べて効率的に基礎的金融サービスの提供を確保することができるという状況において、郵便貯金がこれまで果たしてきた小口個人の利益確保という役割が今後ますます重要なものとなると考えられる。
 以上でございます。

○大門実紀史君 この文書は、これぞ郵貯の生きる道というふうな、なかなかいい提言なんですね。もう少し格調高く読んでいただきたかったなと思うんですけれども。
 書いてあることは、日本より金融ビッグバンの進んだ欧米で金融排除が先行して社会問題化していると。日本でも進行しているんだけれども、日本は郵貯があるから、郵貯があるから、基礎的金融サービスを提供してきて小口個人の金融弱者を守ってきたと。これからますますその郵貯の役割は重要になるという、これは政府の研究会の当時の指摘でございます。竹中さんはこの指摘をどういうふうに受け止められるか、お願いいたします。

○国務大臣(竹中平蔵君) 委員御指摘のように、大変重要な御指摘だと思います。これ郵政を、郵貯、郵政が今そういうふうな役割を果たしているということでございますが、私は民営化されてもこういう機能は間違いなく果たしていけると思っているということを繰り返し申し上げているつもりでございます。
 実はこの中で、郵政は従来から、従来からサービス提供を行うことによって、規模の経済と範囲の経済があると書いているわけです。規模の経済がある以上、民営化されてもこれは縮まらない、範囲の経済がある以上、これは民営化されても三事業は多分一体化されていくだろうと、そういうこともこの報告は意味しているんだと思います。

○大門実紀史君 私はそうはならないと思うんです。
 要するに、民営化というのは民間企業になることですから、竹中大臣何度もおっしゃっているように経営判断です。経営判断は何に基づいてやるかというと、これは資本利益率とかそういうことが物差しになるわけですから、そうはならないと思って質問しているわけですけれども。
 この中にも書いてありますけれども、日本で金融排除は存在しないというふうなことを竹中さんはおっしゃいましたが、静かに進行しているんではないかと思いますし、金融機関の撤退という点ではもう急速に進行しているのは既にこの委員会で何度も取り上げられてきたとおりでございます。
 資料一を見ていただきたいんですけれども、郵貯の預金者の利用世帯というのは四千二百万世帯、国民の八五%が利用しています。うち百万円以下の層が四割、三百万円以下では約七割です。金融弱者問題というのは実はこの層です。三百万円以下とか百万円以下とか、この層のことです。一千万円以下というようなばくっとしたものではございません。この層が実は金融弱者の問題です。
 そして、その下の方の図、見てもらうと、民間銀行の三百万円以下の貯蓄を九八年から二〇〇五年までカウントを取りました。つまり、日本の金融ビッグバンは九八年から始まったと言われておりますので、九八年から取ったわけです。小口の口数で八千百万口、金融構成比で四・八%減少しているわけで、あっ、金額構成比でですね、減少しているわけです。
 なぜ小口が減っているのかと。これは、一つはやっぱり不況で低所得の方が増えたというのもあると思いますけれども、二枚目の資料に、これはUFJホールディングスの株主に対する説明資料ですけれども、挙げておきました。要するに、預金の少ない人ほど銀行としては口座維持にコストが掛かるんです。もうからないんです。これを株主に説明するための資料です。〇二年では一千四百万人クラスでは赤字だと、しかし〇七年には千八百万人クラスでも黒字にいたしますと、これを株主に説明している資料でございます。ここに金融排除の供給側の原因があります。供給側の原因があります。
 ですから、国それぞれ、何といいますか、景気のいい国でも、景気が良かった国でも、二極化が進んだというのもありますが、そういう国でも金融排除が起きましたけれども、共通の原因がこの金融機関が口座を維持するところに生じるコストの問題です。ですから、世界共通のいろんな国で同時に起こったと、日本でもこれから起こり得るというふうに思います。
 Aの方は、具体的に、外国に比べたらまだ少額かも分かりませんが、残高をそれぞれ差別化して取ろうと、取っていこうとしているというのがAのところでお分かりだというふうに思います。郵貯があるから競争上手数料を控えているという側面があります。外国の例を見ても、郵貯サービスがなくなったところでは手数料がずっと引き上げられました。アメリカのシティバンクなんかは五十万円以下の貯金だと毎月、毎月二千円の口座維持手数料を取っております。もうこれはペナルティーみたいなものですね。口座作るなと言っているようなものでございます。
 先ほどの政府の研究会報告に基づいていえば、やっぱり郵貯が民間銀行になればこういう方向になるというのは明らかではないかと、今回の民営化以降この方向に進んでいくんではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 先ほど申し上げましたように、いろんな国の事情があり、またいろんな銀行がそれぞれ自分が特化すべき分野を考えていろんな経営戦略を立てているんだと思います。しかし、日本の現状を見ますと、これは日本のいわゆる四メガバンクというところが、四メガバンク、これすべての四メガバンクが無手数料タイプの預金、普通預金を提供しているというふうに認識をしております。もちろん、それとは別に、より金利は高いけれども、金利を高くする代わりに手数料も取るというようなものも、これはいろんな、これは消費者のチョイスのために増えてきておりますけれども、日本では無手数料タイプのものが四メガバンクではすべてにおいて提供されているのが、これが現状であろうかと思っております。
 何よりも、先ほどの報告書に戻りますけれども、これはやっぱり規模の経済、範囲の経済がこの郵貯のビジネスモデルにはあるわけですね。規模の経済があるということは規模を小さくすると不経済だということですから、これはその意味ではそういうような排除は今の郵貯のようなビジネスモデルではむしろ生じないということをこの報告書は示しているのではないのでしょうか。
 これは、委員が御懸念のようなその目配りをこれは金融行政全般としてしていかなければいけないというのは、私も全くそのように思います。しかし、今この時点で日本の問題が非常に深刻化しているというふうには思っておりませんし、これは郵政の、郵貯を民営化しても、私は、郵貯はそういった意味で引き続き大変重要な役割を果たしていく存在になるというふうに思っております。

○大門実紀史君 規模の経済とおっしゃったのはあれのことでしょうか。いわゆる民間になってもネットワークの価値があると、そういうことをおっしゃっているわけですか。

○国務大臣(竹中平蔵君) ここに書いてある。

○大門実紀史君 それは、民間じゃないから価値があると言っているわけで、大臣おっしゃっているのは、民間の金融機関がそういうネットワークの価値があるんだったらなぜ撤退しちゃうんですか、これだけ。そうでしょう。だから、民間の論理とはそうではないと。民間のネットワークと郵貯のネットワークを混同されては困りますと申し上げたいというふうに思います。
 私は、だから今日は、そういう答弁じゃなくて、普通に経済の問題として考えて、経済学者としてそういうことは起こり得ると。私、学者の方だれも否定してないんですね。こういう金融排除が生じる可能性があると、危険性があると、そういう点で率直な御意見をお聞きしたかったわけです。
 竹中さん、今年が国連の国際マイクロクレジット年というのを御存じでしょうか。あるいは、WSBI、世界貯蓄銀行機構と世銀が一緒に共同開催した年次総会ですか、そこで金融アクセス問題の解決に関する決議というようなものを出されています。今年はそういう年だというのを御存じでしょうか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 話は聞いております。詳細に存じ上げているわけではございませんが、そういういろんな動きがあるということは承知をしております。

○大門実紀史君 ちょっと御紹介をいたしますと、要するに、世界的に問題になっているということなんですよ。途上国、もちろん先進国の低所得者の金融排除の問題が世界的に国連でも議論されているというところで、金融排除をなくすキャンペーンというのがマイクロクレジット二〇〇五でございます。これはマイクロファイナンスという意味も込められています。ただ貸すだけではなくて口座の問題も入っております。
 先ほど言いました世界貯蓄銀行機構と世銀の金融アクセス問題解決決議というのは、去年の十月の終わりにベルギーで開催された年次総会ですけれども、ここでも金融サービスへのアクセスは基本的な人権だというふうに位置付けて、金融排除をなくす新たな目標を掲げたと、で、いろいろ取組をやろうということでございます。
 ホルガー・ベルント総裁の冒頭講演というのは、かなりみんなに感銘を与えた講演です。何を言っているかというと、二つありますけれども、中心点は、株主の利益を追求するだけが銀行の唯一のモデルではない、基本的金融アクセスの欠如は金融排除に帰着すると。もう一つは、ヨーロッパの諸国の金融サービスは身近な金融機関、中でも、過疎地域にも低所得者の人々にも差別のないサービスを提供している郵便局の金融サービスが継続的に維持されることによってのみ保障されているのが現状であるというふうに、こういう金融排除の先進国は、こういうことをもう分析してそれで取組をしているところでございます。
 ちなみに、ホルガー・ベルントさんは立派な経済学者でございます。そういう正に経世済民ですね、貧しい人たちのためにいろんなことを行うというふうな経済学者でございますから、是非、学者たるもの、みんなこうあってほしいと私は思うわけですけれども。
 世界的にこういう金融排除をなくすキャンペーンが、国際キャンペーンが行われているときに、よりによって郵政民営化を提案している日本というのは、私は世界の流れに大きく逆行していると思うんですけれども、その辺の認識はお持ちでしょうか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 先ほども申し上げましたように、九〇年代以降の経済の局面の変化に合わせて、日本におきましても金融排除の問題についてはこれからしっかりと見ていかなければいけないと思います。私もそういうことは起こり得ると、経済学者が認めているとおっしゃいましたけれども、私もそういうことは起こり得ると思っております。だからこそ、そういうことをしっかり見ていかなければいけないというふうに申し上げているわけでございます。
 一方でしかし、市場の活力を活用してより良いサービスをつくっていかないと、そして活性化していかないと、この人口減少社会にどう乗り切れるのかというような日本の負っている課題もございます。私は、郵政民営化は民営化としてしっかりと実現して、さらに、今大門委員がおっしゃったような視点も踏まえて、これはより広い金融行政の話ですから、より広い金融行政の中でその金融排除の問題については目を光らせていく必要があるというふうに思っております。

○大門実紀史君 終わります。
戻る▲