国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■154-参-財政金融委員会-25号 2002年07月18日
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。
 最初に竹中大臣に、景気、特に消費の動向についてお聞きしたいというふうに思います。
 午前中に景気の問題ありましたけれども、要するに、先行きがまだまだ見えない最大の原因は総需要がやっぱり低迷していると、特に消費のところが、消費低迷の問題だというふうに思います。月例経済報告でも消費は横ばいということですし、五月の家計調査を見ましても実収入も消費支出も前年同月比でマイナスになっているということで、依然、消費については予断を許さない事態にあるというふうに思います。
 そこで端的にお聞きしたいんですが、竹中大臣としては、今の個人消費、家計消費が改善しない具体的な理由はどういうふうにとらえておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君) 消費は言うまでもなく総需要の中で最も非常に大きなウエートを占めるわけで、その動向が経済を規定するわけですから、我々も大変大きな注目を常に払っているわけであります。
 しかし一方で、消費の統計というのはなかなか把握しづらいものがありまして、家計消費、有力でありますけれども、これは家計簿を付けているところだけでありますから、そういった統計の把握の問題等々もあって、実態の把握は難しい。更に加えて言うと、その消費を決める要因は何かというと、これは非常に複雑多岐であると。
 でも、あえて委員のお尋ねでありますので消費低迷の最大の要因は何だろうかということを考えると、これはやはり将来の所得に対する期待所得、それに対してなかなかまだ消費者は明るい展望が持てないでいると、そういうことになるのではないかと思います。自分の会社がこのグローバルな競争の中でどのぐらいちゃんとやっていけるのか、ひいてそれは自分自身がどのように所得を稼いでいけるのか、その生涯所得を念頭に今の生活水準を恐らく人々は決めるということになると思いますので、消費水準を決めるということになると思いますので、そういった点を将来に明るい展望が開けるような形で経済のシステムそのものをやはりしっかりとさせていくということが消費活性化の何といっても基本であるというふうに認識をしております。

○大門実紀史君 私もおっしゃるとおりだというふうに思います。一つは将来不安、後でちょっとその部分で御質問させていただきたいと思いますが、言われました期待所得の低下と、もう一つは、直接的にはやっぱり可処分所得が低下、実際しているわけなんですけれども、そのことも非常に直接的に消費を抑えている原因になっているというふうに思うんです。
 それで、資料を配らせていただきましたけれども、もちろん、先ほど大臣言われたとおりに、統計上の問題で消費を把握するのは確かに難しい部分がありますが、そうはいっても、今ある政府が出している統計の中で物を考えるしかないわけですから、資料1のところに、これは総務省の家計調査年報を数年間まとめてみました。
 この特徴がかなり、これは九六年から二〇〇一年ですが、九六年以前とかなり違う傾向を示しておりますので少し御説明したいと思うんですが、実収入は、比べますと約五%減少している。可処分所得もやはり約五%ぐらい減少しています。その中で、税と社会保険料、これもやはり五%ぐらいトータルでは減少しています。
 中身でいきますと、当然実収入が減少しているわけですから、減税もありましたけれども、直接税負担としては一六・五六%もこの数年間で減少しています。ただ、社会保険料負担の方は独自に七%近く上がっているんです。通常、実収入が減れば社会保険料負担額も減少するはずなんですけれども、不況で各保険財政の収入が減ったということで保険料引上げがやられてきましたので、こういう中でも社会保険料負担が独自に上昇していると。結局、そのために可処分所得が減少しているというふうな、そういう構図になっています。
 一方で、保険医療費、これは九七年の自己負担増が大きいわけですけれども、これは一一・四%も上昇ということで、こういうことを原因にして、消費支出がやはり四・七五%減少ということに大きな影響を与えているんではないかというふうに思います。
 申し上げたいのは、九六年以前の数字、ちょっと細かくなるので載っけておりませんが、その以前と九六年、つまり九七年の例の九兆円の負担増と言われましたけれども、それ以降とかなり家計の中のいろんな可処分所得が減少する要因が変わっているという特異な状況に、九六年以降、九七年を挟んでなっているというのが調べてみて分かりました。
 ところが、この間、厚生労働委員会あるいは昨日の党首討論でも議論になっておりますけれども、いわゆる医療保険の改定だけで一・五兆円の負担増、それに更に雇用保険料、あと介護保険、更に年金の物価スライド凍結ということで、昨日、我が党の志位委員長が数字的にはお示ししましたけれども、もちろん全部決まった、確定しているわけではありませんが、どう見ても三兆円前後の社会保障関係で負担増になるというふうなことです。
 私は九日の日に厚生労働委員会に質問で立ちまして、この負担増が来年の景気に、消費にどういう影響を与えるのかということを坂口大臣に質問をいたしました。あるいは昨日は、先ほど言いました志位委員長が小泉総理に、三兆円の負担増が来年どういう消費に影響を与えるか、景気に与えるかという質問をいたしましたけれども、坂口大臣も小泉総理もそのことにはまともにお答えにならないで、なぜ今回負担増をお願いしているかと、その必要性と理由ばかり述べられて、結局かみ合わなかったんですけれども。
 是非、竹中大臣は経済全体を見るお立場ですから、私の質問の意味をお分かりだと思いますが、ちょっと置いておいて、なぜ今回の負担増か置いておいて、これが消費にどういうふうな影響を与えるかということではどういうふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君) 委員、非常に多くの重要なことを御指摘になりましたので、申し上げたいこと多々あるのでありますが、直接のお尋ねはこれがどのように消費に影響を与えるであろうかということでありますので、恐らく短期的な影響ないしは直接的な影響と間接的な影響、そういうものを議論しなきゃいけないと思います。
 それと、その影響を何と比較すべきかということなんですけれども、これを行わなかった場合に何が起こるかということとの比較も本来は行わなければいけないのだと思います。
 結論から言うと、こういう直接的な数字に対して、今申し上げたような結果を全部数字で出すというのは技術的に大変困難であります。唯一、比較的簡単に行えるのは、これの直接的な影響ということでありますが、これは、この分、可処分所得に対して直接的な影響があって、短期的に消費がマイナスの影響を受けるというようなことは、これはもう私自身も否定するつもりはありません。それによる影響というのは私たちも中期の経済試算の中で当然のことながら考えております。
   〔委員長退席、理事円より子君着席〕
 これは、ここに挙げておられる、この間、志位委員長がやられた数字そのものの精査は別途やらせていただく必要があると思いますが、数兆円ないしは二兆とか、医療費の負担だけで多分一・五兆円ぐらいだと思いますが、一・五兆円に関して言うならば、これはGDP比の〇・三%ぐらいでありますから、これの分に乗数が掛かった分に対してのマイナス効果が当然のことながら起こるということは覚悟しなければいけないと思います。
 ただ、この際に是非二点申し上げておきたいのでありますが、じゃそれをやらなかった場合に何も影響はないかというと、そうではないということだと思います。負担を増やさなかった場合に、それを保険料でカバーしたらやはり同じようなマイナスの影響が出るわけだし、財政の悪化をほうっておいたら、これは直接短期ではないけれども間違いなく間接長期に更に深刻な影響が起こるということも必要だと思いますし、その意味では、比較考量するに当たってはもう少しきちっとした議論をしなければいけないということがやはり基本的なポイントだと思います。
 もう一つのポイントは、これはこの委員会でも何度かお話をさせていただきましたが、日本は既に持続可能ではないほどの大きな公的な部門の赤字を持っておりまして、これはやはり、「改革と展望」で示したように、やっぱり十年程度で減らしていかなければいけないんだと。平均しますと、GDP比〇・四%から〇・五%ぐらいのお金を公的な部門が吸い上げて公的な部門を健全化していくということは、これはどうしてもやらなければいけないことだと思います。平均値で年〇・四とか〇・五ということは、景気が比較的上向くときには、それより更にお金を吸い上げるということを当然やらなきゃいけない。一%近くやらなきゃいけないのかもしれません。それはやっぱりマスト、やらなければいけないということだと思います。
 その中で、今申し上げたように、例えば一・五兆円というのは〇・三でありますから、その中で吸収し得る範囲というふうに考えて、これは耐えなければいけない。その分、別途活性化のための、経済活性化のための税制の改革でありますとか、特区を含む活性化戦略を併用することによって民需でその分を出して、公的な若干のマイナスを補っていくような運営を、マクロ経済の運営をしていこうとしているのだと、そのように御承知をいただきたいと思います。

○大門実紀史君 大体前半の方は私の認識と大臣の認識一致するわけなんですけれども、直接的な影響はやっぱりマイナスで出ると思うんです。
 その間接的な部分ですけれども、制度的に持続可能なものになるかどうかというところなんですが、私は厚生労働委員会で実際に質問したんですけれども、実は今回の案というのは取りあえず負担増というのが大きくて、それによって、例えば医療保険なんかも、抜本的にこういう見通しが付くんだという案ではないというのは実は政府も認めておられるところがございまして、間接的な比較検討はもちろん必要ですが、今回どうも負担増だけお願いするというところが、自民党の、与党の皆さんからもかなり批判が出ているところです。
 もう一つは、ほかの活性化戦略との関係といいますか、経済全体の活性化との関係、また御質問したいと思いますけれども、取りあえず負担増と消費との関係ですが、おっしゃったとおり、私、かなりのマイナス面が短期的には出てくるのではないかと。これが心配なのは、竹中大臣と一度予算委員会で御議論させていただきましたけれども、消費がこれ以上本当に底割れしてしまったらデフレスパイラルの危険性もないことはないというふうな、これ以上底割れしたら非常に怖いところに落ち込むというところがあると思うんですよね。そうならないかどうか、やっぱり心配をしているわけです。
 その点で塩川大臣にちょっとお聞きしたいんですが、まだ具体的にはなっていないようですが、来年予定されております減税も、企業減税はあるんですが、個人には、上がっているメニューは割と増税が多いんですよね。
 財務省にお聞きして、来年どれぐらい個人の部分で負担増になるのかというふうにお聞きしましたら、総理が御指示があって、来年度改正の主な事項の中に入っておりますのは配偶者特別控除、特定扶養控除等の人的控除の見直しの部分ですと。これだけだと一兆円ぐらいですかねというお話を聞いたんですけれども。そのほかにも例えば消費税の免税点の制度の見直しがありますが、これは個人業者にも影響するわけですから、個人負担が増える部分が、先ほど申し上げました社会保障の部分だけじゃなくて、この税金の部分でも、税制改正との関係でも出てくるというふうに思うんです。
 幾ら来年増税、個人の部分の増税で負担増になるかという数字はまだ出ていないと思いますけれども、その辺を、今一方で出ている社会保障の負担増と来年の増税による負担増と、このバランスということを政府全体としてどういうふうに今お考えになっているか、塩川大臣のお考えを聞きたいと思います。

○国務大臣(塩川正十郎君) 申すまでもなく、来年は社会保障費の当然増というのは相当増えてくるということですね。これの財源手当てというものをどこで求めるかということが実は私たちの一番大きい関心なんでございまして、そのためには、こういう人的控除といいましょうか、そういうところの、広く薄くの薄くはできたんだから、広くの方を少しカバーさせてもらいたいと。また、消費税の免税点についても、益税の不公平がもう世間的な大きい声になっておりますので、これを是正するということ等をやって、それで当然増の財源はある程度こういうところで賄っていきたいと。
 そういう感覚的な、数字はまだつかんでおりませんのでなにしますけれども、そういうふうに実は思っておりまして、私は、この人的控除とかそういうようなものを、直ちにそれを、何というのか、それ以外の、個人の受益に関すること以外の面に余り使いたくないと。個人のやっぱり受益と関係のある、そういう分野にこれを振り向けていきたいというのが、これは私の考えです。

○大門実紀史君 どこに使っていくかというのももちろん大事なことだと思いますが、取りあえず負担増の部分で今日はお聞きしているわけですけれども。
 金額を幾らというふうに私も全部確定していないところで申し上げるのはあれですが、少なくとも、合わせると、社会保障の方と合わせると四兆から五兆の規模ぐらいの、これは来年の四月に一遍なのか、来年の十月に来るのかというふうなことはありますけれども、来年一年で見ると相当の、このままですよ、財務省と厚生労働省がそれぞればらばらにといいますか、それぞれ自分のところのことで負担増となると、国民の財布というのは一つですから、負担を受ける方は一つですから、来年一年で見ると、このままいけば数兆円規模ぐらいの負担増が掛かる。実際そういうメニューを今出されていると思うんです。
 これは、九七年のときがそうだったんですが、あのときも、医療改定の方と特別減税の廃止、消費税の増税、決められた時期がばらばらですし、それぞれ縦割りで、大蔵省と厚生省が考えてばらばらに、しかも時間差で決めて、かぶった時期がほぼ半年ぐらいで国民にかぶってしまったと。これを繰り返さないことが、二の舞になってはいけないと。そうなると、竹中大臣も心配されていたように、消費が本当に九七年と同じようにまたがくんと落ちる、こういうことは決してあってはいけないと。もしそうなったら、先ほど言われましたけれども、財政赤字の問題から各保険財政から、すべてもう元も子もないといいますか、景気が更に落ち込んだら本当にパンクしてしまうわけですよね、悪循環に陥ってしまうわけですよね。そういう点では、そういう九七年の事態は避けるべきだというふうに思っているんです。
 その辺はまだ先ほどのお話でもはっきりしていない部分はあると思いますが、諮問会議といいますか政府全体で、そういう負担増の大枠の数字が出てきて、それが景気に、消費にどういう影響を与えて、マクロ的に与えて、それがまた税収を落ち込ませるわけですから、そういう全体を見た提案をされていくべきだというふうに思いますが、これから案がまとまっていって数字がはっきりしていく上で、その辺はこれからの運営としてどうお考えですか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 御指摘のように、財政のバランスとマクロ経済の整合性を考えていくのが諮問会議の重要な役割であろうと思いますので、正に、ちょっと午前中の議論でも申し上げた予算の全体像の議論の中で、そういう議論を踏まえて、更にそれをより正確な数字として、年末に掛けて「改革と展望」の議論の中でやっていくという姿勢でおります。
 ちょっと、幾つか事実関係だけまず指摘をさせていただきたいんですが、まず、経済全体の動きに比べて民間消費が特に低い伸びであったという事実はないと。これは、経済全体が低迷する中で、消費もそれに合わせてきたというふうに考えるべきであろうというのが第一点で、例えば、特に九八年とか二〇〇一年はマイナス成長で、GDPはマイナス成長であったわけですけれども、民間消費はプラスであったというような年もあります。
 だから、民間消費が極端に落ち込んできたというようなことでは必ずしもないという事実の点を申し上げた上で、ちょっと今の大門委員の指摘に対しては二点申し上げたいと思います。
 重要な点は、政府のネットのバランスがどのようになるのかということがまず第一のポイントだと思います。
 九七年の例を御指摘になりましたが、これはネットでおおよそ九兆円、九兆円ですからGDPの二%近くという大きな吸い上げであった。これはそれで非常に大きなものであったと思います。今回は、例えば今、税制改革の中で一部負担増が出るのではないかというふうな御指摘もありましたけれども、税収中立で考えるならば、負担が増えるところがもしあれば、減るところが必ずあるわけですから、それはネットの負担増ではないはずであると。これはやはりネットとグロスを分けて、ネットでどのぐらいかということを議論しなければいけない。結果を言うと、ネットで見るとそんなに大きくはならないはずであると、負担増がですね。これが第一のポイント。
   〔理事円より子君退席、委員長着席〕
 もう一つは、今回の議論の中で中心になるのは、先ほど申し上げましたように、ある程度、財政健全化の中ではある程度財政が後ろへ下がるということは、これはもう甘受せざるを得ないのであるから、その分、民間、民需がこれを補うようなシステムを、政策を取っていくということが重要なポイントなわけです。したがって、同時に民需がどのようになっていくかと。それは公需であろうと民需であろうと、それは国民の懐に入るという意味では全く同じなわけでありますから、そこの効果もやはり同時に議論していかないと、ともすれば一方的な議論になる懸念があると。
 この二点を是非申し上げた上で、先ほど申し上げましたように、御指摘のような点も踏まえて予算の全体像を議論して、「改革と展望」の年末の見直しの中でマクロのバランスをしっかりと議論していきたいというふうに思います。

○大門実紀史君 九七年の評価について、私は、経済企画庁が出されました当時の「回顧と展望」そのままの御意見を申し上げておりますし、当時の橋本元総理大臣自身が、やっぱり自分のあのときのことをということで、総裁選なんかでも、やっぱり今の消費の落ち込みの大きな、もちろんネットの問題とか直接GDPに幾らというのはありますけれども、後で申し上げますが、将来不安の問題も含めてかなり影響があったということをお認めになっている上で、今日御質問させてもらっているわけです。
 それと、あのときの九兆円と今の、まあ数兆円になるかどうかですけれども、でいくと、そんなに大きな数字にならないとおっしゃいますけれども、私は、もう経済状況がここまで、先ほど家計消費の問題、家計の消費の状況からいけば相当の大きなインパクトになるというふうに思っております。
 それを全体の民間の需要の回復で補うという議論は、竹中大臣とは何度もしてまいりましたけれども、私は、今の政府の施策では、資料3に付けておりましたけれども、企業利益が上がっても、失業率、給与はずっと下がりっぱなしと。竹中大臣が言われておりました、企業利益が上がればいずれは所得が伸びるんだというふうにはなってきておりませんので、今日はこの議論、また予算委員会でもやりたいと思いますが、ずっと竹中大臣とやっておりますので、そういうところで安心できるとは私は思っていないということだけ申し上げたいと思います。
 それでもう一つの、先ほどもお話が出ました期待所得、つまり将来不安の話でお聞きをしたいと思うんですが、この間、各シンクタンクが大変ショッキングなレポートを出しております。
 第一生命の研究所のレポート、四月に出ましたけれども、九五年当時の国民の将来不安水準を一とすると、直近における不安水準は九・八、実に十倍になっていると。九五年から二〇〇一年までの累積のGDPの押し下げ寄与は二・六%、金額で七・四兆円も将来不安が消費を押し下げている、景気を押し下げているというのが出ております。
 六月の末にはみずほがまた同じようなレポートを出しておりまして、これは直近の、今年の一―三月期で調査、推計したものですけれども、将来不安が個人消費を四・二兆円下押ししているというふうなレポートを出しています。この点では、先ほど私申し上げました可処分所得の問題と、大臣冒頭言われました期待所得といいますか、将来不安を改善しない限り何とも消費は持ち上がらないというふうに思うんですけれども、大臣は将来不安を取り除くためには何が必要とお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君) ちょっと御紹介をいただきました各機関の数字は、通告もいただいておりませんでしたので、ちょっと私自身把握をしておりませんのですが、一般的に考えまして、将来不安のその不安を構成する要因は何かと。これまた実は心理的な問題も含めて非常に難しいものがあろうかと思います。しかし、あえて様々な不安に関するアンケート調査等々、うろ覚えに基づいて申し上げるならば、やっぱり人々は今後雇用機会が十分に確保されていくかどうかということに関してかなり関心を抱いているというのはそのとおりであろうかと思います。
 実は、活性化のための減税というふうに申し上げる中で、結局のところ、企業の税負担を下げて企業の活動を活発にせしめることによって、雇用機会がより十分確保されるようになるということを私は大変期待をしているわけであります。
 さらには、将来の年金に対する不安、将来の財政破綻に基づく増税に対する不安等々も常に三位とか四位とかの上位を占めていたというふうに思います。その意味では、やはり財政を着実に健全化していくこと。しかし、そのときブレーキを強く踏み過ぎるといけないというのは、これは大門委員御指摘のような認識は私たちも十分持っておりますので、先ほど申し上げましたように、GDP比平均で〇・五とか、そのぐらいの基準に考えていくというような経済運営のシナリオになっていくわけでございます。
 いずれにしても、やはり将来の所得稼得能力、これは企業の稼得能力を高めて、併せて人間力を高めることによって個人の稼得能力を高めると。結果的にそれは正しく経済の供給力を強化する、サプライサイドを強化するということに、いつものお話になるわけでありますが、そうすることこそが不安を解消する最大の要因である。同時に、その中で財政・金融等々の制度を持続可能なものにしていくということが併せて求められているということだと思っております。

○大門実紀史君 私は、将来不安の問題もずっといろいろいろんなレポート、アンケートを調べてみたんです。ちょっとリアルな話で、リアルなことで申し上げますと、厚生省が、例えば社会保障に対する不安というのは結構大きい比重があるんですけれども、調査されているんですけれども、これは複数回答なんですけれども、一番多いのは、将来確実に給付を受けられるかどうか分からない。二番目が、税、社会保険料が引き上げられて負担が重くなるから。三つ目が、給付水準も下げられて自己負担も重くなってくるからと。これが上位を占めているんです。
 つまり、将来の将来像が見えないから不安じゃなくて、改悪されることに対する不安というのが実は上位を占めていまして、よく政府の方で言われる、将来像が見えないから、将来像さえ見えたら、貯蓄に幾ら回して消費に幾ら回してというふうに消費も出てくるんだというふうな、つまり、将来像が見えないというところは実は六番目に確かにあるんですけれども、今申し上げましたとおり、社会保障制度でいえば改悪されることが不安だというのが厚生労働省の調査で出ています。
 もう一つは、先ほど言いました第一生命経済研究所のレポートで、大臣言われたとおり、将来不安というのは期待所得の低下だと。期待所得の低下というのは、具体的に更に言いますと、実収入が減少する、あるいは具体的には可処分所得が減少する、このことへの不安ですよね。期待所得の低下というのは、今で言いましたら、あるいは会社が倒産する、リストラに遭う、賃金が下げられるというふうな不安、あるいは年金が思いどおり入ってこないんじゃないかという不安ですよね、期待所得の不安。さらに可処分所得でいえば、増税とか負担が増えることによって差引き可処分所得が減るわけですから、そういうものが来るとやっぱり期待所得が減ると。具体的にリアルに言えばそういうことじゃないかというふうに思うんですね。
 そういう点でいきますと、この間の、今厚生労働委員会で出されている案もそうですけれども、社会保障が、とにかくもう先も見えないで、とにかく負担増だけみたいなところが、与党の皆さんもあそこで指摘していますが、そういうものが出てくるし、増税だけがメニューで上がってくる。だから、何といいますか、不安だけ、むしろこの厚生省と第一生命経済研究所のレポートで言わせてもらえれば、改悪の不安だけあおっている。更に将来不安が増す方向での今の政府の提案になっているんではないかと私は思うんです。
 大事なことは、将来不安を解消するのは、こういう政府のレポートとかシンクタンクの方で見ますと、少なくとも今より改悪されない、今より改悪されないんだと、これがはっきりしない限り不安というのは募るばかりではないかというふうに私はいろいろ読んで思うんですが、いかがですか。

○国務大臣(竹中平蔵君) これは心理的なものも含んでおりますから、大変難しい問題ではあると思いますが、基本的に恐らく、そういう複数回答のアンケート調査を読むときには、やはり幾つかの留意点が私は必要なのかなというふうに思います。
 常識的に考えて、現実問題として保険の財政等々極めて悪いわけですね。極めて悪いということが問題なんだと思います。極めて悪いという事実を非常に漠然とした形で人々は十分に認識しているから、だからこれが将来負担が重くなるのではないだろうかというようなことになるわけで、基本的に悪いという状況を全部きっちりと立て直せるという体系を明示する、その上でしかるべき負担の形を明示していくということが重要なわけで、正に構造改革というのはそういうことを時間は掛かるけれどもやっていこうということなのだと認識をしております。
 これで、今回の改革だけですべてが明示されるかどうかという点についてはいろいろ御議論があるかもしれませんが、これはやはり改革に向けての一歩であるという認識の下で制度設計がなされていると、これは厚生労働省の方でそのようになされているというふうに私自身は認識をしておりますので、その意味では、事実はこれはもう厳しいわけでありますから、これを踏まえて、解決の方向に向かっているという形を明示的に示していくことこそが今の時点では極めて重要ではないかなと思っております。

○大門実紀史君 私はそうは思わないんですね。
 ですから、先ほどから申し上げているのは、消費がなぜ落ち込んで、消費が回復しない限り日本経済がどうしても上向かないという状況で、違うメッセージがどんどん出ていると。つまり、今日は詳しく触れませんけれども、我が党もいろんなもの、財源論、対案を示しておりますけれども、要するに、とりあえずの負担増をお願いすると、これで更に景気が悪くなって、税収も落ち込んで、各保険財政も悪くなるという悪循環になっていると。ですから、負担増ではなくて、厚生労働委員会では自民党の皆さんも、今回の三割負担はやめて国庫負担でやればいいじゃないか、それぐらいの財政やりくりできるじゃないかと与党の方もおっしゃっているぐらいですから、そういうことを今やらないとこの消費の状況で大変なことになると、来年。それは元も子もないことになってしまうということを御指摘しているわけです。
 今もお話出ましたけれども、どうしても竹中大臣と議論するとこの資料3の話になるんですけれども、要するに民需、企業全体が頑張って利益を上げればすべて良くなっていくんだということをいつも議論になるんですが、この資料3で、これは二〇〇〇年まででそうはなっていないというグラフです。これはまた機会があれば議論したいと思いますが、どういうふうに説明されますか。企業利益は上がっているけれども失業率は高まって所得は増えていないと。いわゆる竹中大臣のセーの法則だとこうならないはずだと思うんですが。

○国務大臣(竹中平蔵君) 一言で申し上げれば、それはどのぐらいのタイムスパンで調整を考えているかということに尽きるのだと思います。企業の利潤が増えればすべてうまくいくというようなことは言った覚えはないのでありますが、やはり、より長期の資本と労働のバランスというのを我々は念頭に置かなければいけないのだと思います。
 八〇年代を通しておおむね日本の労働分配率は六〇%ぐらいであったと思います。しかし、バブルが崩壊して経済が疲弊する中で、実は当初、九〇年代の前半特に何が起こったかというと、給与水準を下げないで企業の利潤がどんどんどんどん減っていきました。その結果、九〇年代の初頭から半ば、後半に掛けて労働分配率は六〇%から七〇%に一気に高まった。こんな短期間で労働分配率が一〇%も高まった国などというのは世界じゅう探してもありません。その結果、しかし正に企業のサプライサイドが疲弊して、今日のような非常に停滞感の重い経済になってしまっているということなのだと思います。
 今、企業が収益が短期的に落ち込んでこれが短期的に回復しておりますけれども、労働分配率の修正と資本分配率の見直し、修正というのは、私はやっぱり中期的に少し時間を掛けて進んでいかざるを得ない問題なのだというふうに思うわけであります。
 委員の表は、これは九六年からの表でありますけれども、八〇年等々からの労働分配率、労働分配率の裏返しは資本分配率でありますけれども、そういった観点から、分配率の修正という非常に中期のトレンドの中で今御指摘のような問題も議論をしていただく必要があるのではないかなというふうに思います。

○大門実紀史君 じゃ、御意見だけ申し上げて終わります。
 八〇年代の高度成長のときと九〇年代の低成長のときと、それは労働分配率の在り方が変わるのは当然です。私は、低成長下で労働分配率が上がるのは、利益の上がりが落ちていけば自然に賃金同じでも分配率は高まってしまうわけですから、問題は、総需要が低迷しているから、それで売上げが落ちて利益が落ちて分配率が高まるということはあるわけですから。この間、また下がっていますよね、分配率ね。
 ですから、いろんな話をされますけれども、根本的にはちょっと今の構造改革では景気は良くならないんではないかと度々指摘させてもらっていますが、そのことを指摘して私の質問を終わります。
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