国会質問

● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2002年03月19日 予算委員会公聴会
○大門実紀史君 日本共産党の大門実紀史です。最初に正村先生にお伺いしたいと思います。
 先生、先ほど経済学者もしばしば人を忘れるというお話をされまして、私も最近それを強く感じております。本当に人を忘れた経済学者というのは、何といいますか、本当に歌を忘れたカナリヤみたいなものでして、そういう学者が学界にも、あるいは内閣府辺りにも増えているのではないかというふうに危惧を抱いているところで、そういう中、先生のお話、御意見を伺って、まだまだ捨てたものじゃないなと、気骨の学者がおられるなということで安心をしているところでありますけれども。
 小泉構造改革の話が先ほどからありました。その基本的な問題についてお伺いしたいと思いますが、私こう思うんですけれども、小泉構造改革のスローガンというのは、不良債権をなくしましょう、あるいは競争力を高めましょうと、これはもうほとんど反対する人はいないと思うんですね。問題はそのやり方でして、この不況下、需要が低迷している下で不良債権を一遍に、猪突猛進ですね、幾ら失業、倒産が増えてもやり抜くと。あるいは競争力の問題も、これだけ失業が増えているのに、更に雇用、賃金調整をやってリストラを促進する、それでもいいんだと。ですから、小泉構造改革というのは、要するにスローガンじゃなくてやり方のところが非常に問題になっているわけですが、それで今大変なことに私なっているというふうに思います。
 問題は、こういうやり方を進めますと、先ほど正村先生の御意見の中にもちらっとうかがえたと思うんですが、要するに、ミクロでそれぞれの企業がリストラをやるとか銀行が不良債権を処理すると、これはそれぞれのミクロの段階では合理的であっても、それをこの不況のときにみんながやり出せばマクロでは間違うというか、悪循環に陥るといいますか、いわゆる合成の誤謬ということが私既に起きているのではないかというふうに思いますし、デフレスパイラルもそれと表裏一体の問題ですから、そういうふうになっているのではないかと。つまり、小泉構造改革論の矛盾がもう現れているんじゃないかというふうに私見ているんですが、まず正村先生の御意見をお伺いしたいと思います。

○公述人(正村公宏君) 私は、小泉総理が総理になられて、ああいう形で率直に財政の在り方、特殊法人の在り方等について、このままでは維持可能でないということを提起なさった功績は大きいと思います。むしろ遅きに失したぐらいであって、中央、地方を含めて、そして様々な形で、特別会計とか特殊法人とか、そういうところでいろんな形で債務が返済不能だと思われる、疑われる債務が増えている、あるいは債務を増やすことにつながると考えざるを得ない、つまり返済不能な債務を増やすことにつながらざるを得ないような、そういうふうに考えざるを得ないような事業をいろいろな道路を含めましておやりになっているという事実に注意を喚起なさった功績は極めて大きいと思います。
 逆に言うと、なぜ今までそれが伏せられてきたのか。どうしてもそのときそのときの状況の中で痛いところをつかないようにする、あるいは非常に具合の悪いところは公にしないという、官僚機構の中にこれは極めて顕著にありますが、それは官僚機構に限りませんね、学者だって同じことでありますけれども、人間の弱点であります。同じように政治家の皆さん方もそういうものを公にして議論をしようということをなさってこなかった。ここへ来てそれはすごい問題を抱えているんだということですね。本当にこの道路が要るのかどうかということを検討してくださいよということを問題として投げ掛けたことは大変貴重だと思いますね。
 実際に、車の量がそれほど多くない地方で、古い一般道路があって、それをバイパスのような立派な道路を通すために工事をやって、道路がきれいになったなと思っていたらそこにまた高速道路ができた、やっておられるわけですよね。これはどう考えても資源のミスアロケーションですよね、資源配分を誤っていると思います。
 それだけじゃありません。独立採算の建前でやっておられる公団が、将来長期にわたって採算が取れるはずのない事業をいろいろおやりになっている。本四架橋、三つも橋を作っちゃったとか、東京湾のアクアラインもどうも怪しいということを聞いていますけれども、お金の掛け過ぎをして後は何とかなるということをやってしまわれたと。
 私は、これは、小泉さんが総理になられたおかげでやっと世論の注目を浴びるようになって問題になったと思います。
 ここで重視されなきゃならないのは、私は情報の十分な公開だろうと思います。どこにどういう債務があるのか、どういう事業をやっているのかということについて徹底的に明らかにすると。そこから判断が始まるのであって、そんなことやっていられないからとにかくまず突破口を開こうという、そういう御姿勢のように拝察できますけれども、そこから、それは出発点であって、議論の出発点であって、そこから先は、私は、痛みは伴うんです、痛みは伴うんだけれども、不良債権の処理をいい加減にしてはいけないと。手順を決めてタイミングをしっかり見極めるということをやらないといけないと。原則ははっきりさせておいて、状況判断をすると。多分医療と同じだと思いますけれども、強い薬を病んでいる病人に一遍に飲ませたら死んでしまいます。日本の経済は今そういう状況にあると思うんですよ。
 ですから、もし不良債権処理の問題とか、あるいはペイオフの問題とかでおやりになっているような状況判断に私は問題があると思いますけれども、そのことについて慎重に考えないで、原則、方向は正しいけれども、短期間におやりになれば景気は底割れをします。底割れすれば不良債権は増えてしまいます。手順が違っていると。そのことは御指摘のようなことでありますけれども、あらゆる問題について、私は冷静で合理的な判断をするという努力を求められていると思います。
 そして、痛みを伴うという言葉をお使いになっていますけれども、これは大変正直な御発言で、私は正しいと思います。なぜならば、今までの誤った政策の結果として日本経済がトラップに陥ってしまっているわけですから、わなにはまっているわけですから、抜け出すのに痛みを伴わないはずはないんです。痛みを伴うのは避け難いけれども、日本経済を殺し日本社会を殺してしまうような激痛を走らせるようなことはやってはいけないのであって、それにはこういう手順が要る、そして痛みはこういう人たちがこういう形で分けるんだ、負担するんだと。一般国民は痛みを伴わなくて、だれかにかぶせればいいということではない、ないんですね。大企業にかぶせればいいとかそういう話というのは絶対ないわけです、これは。
 だから、率直に、どういう手順でどういう形で、この処理をすることで、だれがどういうふうな負担をせざるを得ないのかということを冷静に議論する空気を作らないと日本は立ち直れないというふうに思っております。


○大門実紀史君 時間がなくなりましたので、浪川公述人に一つだけお伺いします。
 今、金融検査マニュアルの問題が、特に中小企業に当てはめていいのかどうかと。御存じかと思いますが、いろいろ批判、怨嗟の声が上がっているんですが、あの金融検査マニュアル、中小金融機関に当てはめて、中小業者のあるいは中小企業の債務者区分に当てはめるということについていかがお考えでしょうか。



○公述人(浪川攻君) 先生おっしゃるように、その議論、出ているわけですよね。
 私は、それじゃ中小企業版の金融マニュアルを作ればそれで済むのかという問題なのかということであると、そんなことはないだろうと思います。中小企業にはこの程度、零細企業にはこの程度、中堅企業はこの程度というようなものが果たして作れるかといったら、現実的にはそれは不可能だと思います。むしろ、中小企業が金融マニュアルというものの中で非常につらいということがあるんであれば、それは金融マニュアルをどう変えるかではなくて、ほかの政策で支えていくという問題じゃないかなと思います。


○大門実紀史君 もう終わります。ありがとうございました。
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